春色フォーチュンリリィ

楠富 つかさ

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#3

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「じゃあ、自己紹介も済んだことだし、部屋を見て回ろうか」

 間取りは知っているけれど、中をきちんと見たことはない。そんな訳で、夕くんを先頭に部屋を見て回る。リビングを出て右手には洗面所とかトイレ、そしてお風呂があって、反対側―リビングを出て左。つまり玄関右手―に寝室二部屋が並んでいる。

「こっちが寝室というか、二人一部屋の私室だね。内装なあまり変わらないだろう……って、おや?」

 扉を同時に開けた夕くんが驚いたような表情を浮かべた。身体を右に傾けてみると、洋室に二段ベッドが見える。左へ傾けると、そこにはダブルベッドが。……え、ダブル!?

「わたし二段ベッドの上がいいわ。って、え?」

 さくちゃんがダブルベッドを見て驚いた。どっちも二段ベッドだと思うよね。にしても、二段の上がいいて、さくちゃん、ちょっとだけ子供っぽい部分があるんだ。

「じゃあ、私と姫ちゃんの小柄コンビでダブル使おう。いい、夕くん? 姫ちゃん?」
「あぁ。もとから桜と同じ部屋にするつもりだったし」
「もちろんなの!」

 なんで二部屋ともダブルじゃないかなぁ。もしそうだったら……おっと、自重しよう。とはいえ、姫ちゃんと同じベッドで寝るなんて、本当に眠れるか心配。おっと、だから自重しろって。

「じゃあ、荷物の移動にしようか。学習机とか本棚は個別についているから、自由に使って平気だね」

 こうしててきぱきと指示を出してくれる人がいると、何をすればいいのか分かりやすくて助かる。私たちはリビングにおいていた荷物を持って、部屋に戻った。

「はるにゃんの荷物、リビングに残ってるけど、大丈夫なの?」

 八畳くらいの部屋はベッドを境にしていて、背中側から姫ちゃんの声が聞えてきた。

「あれなら大丈夫、お土産みたいなものだから。お茶とかお菓子とか……あと、焼きそばの麺!」
「おぉ! 地元食材なの! 小梅、そういうの持ってきてないの……。申し訳ないの」
「まぁまぁ、千葉なら近いし大丈夫だら」
「はるにゃん、訛ってるの?」
「……え? あ! そうか。大丈夫でしょ? ってこと」

 おっとっと、そうか、方言を気にしたことがないからついつい。気をつけよう。

「えっと、まぁ。片付け終了。服を最小限にしたのが吉だったかな」

 クローゼットは共有なので、服はお気に入りの数点だけにした。制服での生活が基本になるので、そこまで必要ないのも助かる。取り敢えず部屋着を数点と春物、初夏物が多い。あとは実家に帰って取り替えるしかないかな。姫ちゃんは衣装持ちのようなので、ちょっと忙しそう。可愛い服が多いなぁ。そんなことを思いつつ、学習机とセットの椅子に座る。机の上には持って来たカレンダーもおいた。今日が3月26日。ということは、さくちゃんの誕生日が29日、入学式は二週間後の4月9日。高校生は午後に行われるらしい。そうこうしているうちに時刻は正午を過ぎた。一度私室から出て、隣に顔を覗かせる。

「お昼にしない? 焼きそばをご馳走したいなぁって思って持ってきたんだ」
「おぉ、もうそんな時間かぁ。そうしよう。桜は?」
「もう少し待って……いえ、先に作り始めてください。少々時間がかかるので」
「じゃあ小梅ははるにゃんのお手伝いするの!」

 三者三様の返事を受け取った私は荷物からエプロンを取り出し、キッチンへと向かった。さて、地元の美味しいものを食べてもらうんだから、気合入れていかないと。
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