3 / 5
#3
しおりを挟む
「じゃあ、自己紹介も済んだことだし、部屋を見て回ろうか」
間取りは知っているけれど、中をきちんと見たことはない。そんな訳で、夕くんを先頭に部屋を見て回る。リビングを出て右手には洗面所とかトイレ、そしてお風呂があって、反対側―リビングを出て左。つまり玄関右手―に寝室二部屋が並んでいる。
「こっちが寝室というか、二人一部屋の私室だね。内装なあまり変わらないだろう……って、おや?」
扉を同時に開けた夕くんが驚いたような表情を浮かべた。身体を右に傾けてみると、洋室に二段ベッドが見える。左へ傾けると、そこにはダブルベッドが。……え、ダブル!?
「わたし二段ベッドの上がいいわ。って、え?」
さくちゃんがダブルベッドを見て驚いた。どっちも二段ベッドだと思うよね。にしても、二段の上がいいて、さくちゃん、ちょっとだけ子供っぽい部分があるんだ。
「じゃあ、私と姫ちゃんの小柄コンビでダブル使おう。いい、夕くん? 姫ちゃん?」
「あぁ。もとから桜と同じ部屋にするつもりだったし」
「もちろんなの!」
なんで二部屋ともダブルじゃないかなぁ。もしそうだったら……おっと、自重しよう。とはいえ、姫ちゃんと同じベッドで寝るなんて、本当に眠れるか心配。おっと、だから自重しろって。
「じゃあ、荷物の移動にしようか。学習机とか本棚は個別についているから、自由に使って平気だね」
こうしててきぱきと指示を出してくれる人がいると、何をすればいいのか分かりやすくて助かる。私たちはリビングにおいていた荷物を持って、部屋に戻った。
「はるにゃんの荷物、リビングに残ってるけど、大丈夫なの?」
八畳くらいの部屋はベッドを境にしていて、背中側から姫ちゃんの声が聞えてきた。
「あれなら大丈夫、お土産みたいなものだから。お茶とかお菓子とか……あと、焼きそばの麺!」
「おぉ! 地元食材なの! 小梅、そういうの持ってきてないの……。申し訳ないの」
「まぁまぁ、千葉なら近いし大丈夫だら」
「はるにゃん、訛ってるの?」
「……え? あ! そうか。大丈夫でしょ? ってこと」
おっとっと、そうか、方言を気にしたことがないからついつい。気をつけよう。
「えっと、まぁ。片付け終了。服を最小限にしたのが吉だったかな」
クローゼットは共有なので、服はお気に入りの数点だけにした。制服での生活が基本になるので、そこまで必要ないのも助かる。取り敢えず部屋着を数点と春物、初夏物が多い。あとは実家に帰って取り替えるしかないかな。姫ちゃんは衣装持ちのようなので、ちょっと忙しそう。可愛い服が多いなぁ。そんなことを思いつつ、学習机とセットの椅子に座る。机の上には持って来たカレンダーもおいた。今日が3月26日。ということは、さくちゃんの誕生日が29日、入学式は二週間後の4月9日。高校生は午後に行われるらしい。そうこうしているうちに時刻は正午を過ぎた。一度私室から出て、隣に顔を覗かせる。
「お昼にしない? 焼きそばをご馳走したいなぁって思って持ってきたんだ」
「おぉ、もうそんな時間かぁ。そうしよう。桜は?」
「もう少し待って……いえ、先に作り始めてください。少々時間がかかるので」
「じゃあ小梅ははるにゃんのお手伝いするの!」
三者三様の返事を受け取った私は荷物からエプロンを取り出し、キッチンへと向かった。さて、地元の美味しいものを食べてもらうんだから、気合入れていかないと。
間取りは知っているけれど、中をきちんと見たことはない。そんな訳で、夕くんを先頭に部屋を見て回る。リビングを出て右手には洗面所とかトイレ、そしてお風呂があって、反対側―リビングを出て左。つまり玄関右手―に寝室二部屋が並んでいる。
「こっちが寝室というか、二人一部屋の私室だね。内装なあまり変わらないだろう……って、おや?」
扉を同時に開けた夕くんが驚いたような表情を浮かべた。身体を右に傾けてみると、洋室に二段ベッドが見える。左へ傾けると、そこにはダブルベッドが。……え、ダブル!?
「わたし二段ベッドの上がいいわ。って、え?」
さくちゃんがダブルベッドを見て驚いた。どっちも二段ベッドだと思うよね。にしても、二段の上がいいて、さくちゃん、ちょっとだけ子供っぽい部分があるんだ。
「じゃあ、私と姫ちゃんの小柄コンビでダブル使おう。いい、夕くん? 姫ちゃん?」
「あぁ。もとから桜と同じ部屋にするつもりだったし」
「もちろんなの!」
なんで二部屋ともダブルじゃないかなぁ。もしそうだったら……おっと、自重しよう。とはいえ、姫ちゃんと同じベッドで寝るなんて、本当に眠れるか心配。おっと、だから自重しろって。
「じゃあ、荷物の移動にしようか。学習机とか本棚は個別についているから、自由に使って平気だね」
こうしててきぱきと指示を出してくれる人がいると、何をすればいいのか分かりやすくて助かる。私たちはリビングにおいていた荷物を持って、部屋に戻った。
「はるにゃんの荷物、リビングに残ってるけど、大丈夫なの?」
八畳くらいの部屋はベッドを境にしていて、背中側から姫ちゃんの声が聞えてきた。
「あれなら大丈夫、お土産みたいなものだから。お茶とかお菓子とか……あと、焼きそばの麺!」
「おぉ! 地元食材なの! 小梅、そういうの持ってきてないの……。申し訳ないの」
「まぁまぁ、千葉なら近いし大丈夫だら」
「はるにゃん、訛ってるの?」
「……え? あ! そうか。大丈夫でしょ? ってこと」
おっとっと、そうか、方言を気にしたことがないからついつい。気をつけよう。
「えっと、まぁ。片付け終了。服を最小限にしたのが吉だったかな」
クローゼットは共有なので、服はお気に入りの数点だけにした。制服での生活が基本になるので、そこまで必要ないのも助かる。取り敢えず部屋着を数点と春物、初夏物が多い。あとは実家に帰って取り替えるしかないかな。姫ちゃんは衣装持ちのようなので、ちょっと忙しそう。可愛い服が多いなぁ。そんなことを思いつつ、学習机とセットの椅子に座る。机の上には持って来たカレンダーもおいた。今日が3月26日。ということは、さくちゃんの誕生日が29日、入学式は二週間後の4月9日。高校生は午後に行われるらしい。そうこうしているうちに時刻は正午を過ぎた。一度私室から出て、隣に顔を覗かせる。
「お昼にしない? 焼きそばをご馳走したいなぁって思って持ってきたんだ」
「おぉ、もうそんな時間かぁ。そうしよう。桜は?」
「もう少し待って……いえ、先に作り始めてください。少々時間がかかるので」
「じゃあ小梅ははるにゃんのお手伝いするの!」
三者三様の返事を受け取った私は荷物からエプロンを取り出し、キッチンへと向かった。さて、地元の美味しいものを食べてもらうんだから、気合入れていかないと。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる