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巡り巡って俺は妹に愛されている
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二階に戻りテラスにあるカフェテリアでお茶をすることになった。
お礼を兼ねてと汐波がご馳走してくれた。
妹の優しさに感謝しつつブラックコーヒーを啜る。
目の前でカフェオレを飲んでいた汐波がおもむろに口を開いた。
「さてと、本題に入りましょうか……お兄ちゃんの最終的評価は80点でした。教えてあげますよ、何故あなたを避けてきたか…その前に先週話した母からの手紙を持って来ました」
汐波から渡されたのは母が汐波に宛てた手紙だった。そこには、母の達筆で俺の知らなかった事実が書かれていた。
『汐波へ
これを読む頃私はあなたのところに居ないでしょう。あなたにこれだけは伝えておきたかたのです。春次は、あなたの兄は私達の実子ではないのです。
私の一生涯の親友の子だったの……親友は春次を生むと同時に他界してしまい、その旦那はショックで自殺……。もともとはその旦那が頑張って口説き落としたからショックは大きかったんだろうね……それで、巡り巡って春次を引き取ったの。
で、この話を汐波にする理由はね、あなたの昔の口癖が気になったからなの。何を伝えたいかというと、汐波は春次と結婚できるということ。
私は一人の女として応援するから。頑張ってね。
母より』
いつも明るくて家族想いだった母を思い出す―いや、実母ではなかったのか。だとしても、俺の両親はあの二人だ―それでも、まだ腑に落ちない。
「それが、どうして俺を避けることに繋がる?」
むしろ積極的に何か仕掛けてきそうなタイプだったのに……。当時ならな。
手紙を仕舞った汐波は、伏し目がちに話し始めた。
「あたし、怖かったの……お兄ちゃんと結婚はしたい……。だってお兄ちゃんカッコいいもん。でも、あたしを妹としか見ていないお兄ちゃんがいつか彼女を見付けてあたしから離れるのが……。だから、あたしから離れようと思って……。嫌われようとして……でも、もう限界だよ……。お兄ちゃんが好きだっていう気持ちを抑えきれないよ……」
目にうっすらと涙を溜める汐波……。その姿に俺は兄としてではなく一人の男としてある決心をした。
「俺は、汐波以上の女の子はいないと思っている……だから! 汐波が望めば何にだってなってやる。だから泣くなよ……俺の前では笑顔でいてくれよ」
必死に涙を堪えて、汐波はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「ありがとう、お兄ちゃん。大好きだよ。だから、この指環はお兄ちゃんがあたしの薬指に嵌めてくれるまで預けるよ。さぁ、帰ろ?」
指環を丁寧に箱に戻し俺に渡した汐波は満面の笑みを浮かべた。
あぁ……俺はきっと何年も前からこの笑顔に恋してたんだな。
………ふっ、いまさらか。
帰り道ではかなり話が弾んだ。
「俺は、汐波に嫌われてなかったのか。やっと安心できるよ」
腕を組む汐波から伝わる体温が俺をホッとさせる。
「当たり前だよ、お兄ちゃん。じゃなきゃ白坂を受験することもなかったよ。ホントは峰村だって受けれたんだよ?」
峰村高校は市内トップの進学率を誇る進学校だ。白坂はその一つ下……。まぁ、汐波は成績よかったからな。
入学式で壇上に立つ妹を思い出す…汐波は白坂に主席で入学したのだ。
「これからのお兄ちゃんとの日々はあたしの宝だよ」
口調も砕け、すっかり昔みたいに戻った汐波の笑顔を見ることのできる毎日か、あぁ最高の宝だ。
「俺も同じことを考えていた。汐波の笑顔は俺の宝だ」
そう言うと汐波は俺の前に回り込んでイタズラっぽく笑うのだった。
「不思議だよね、ずっと兄だと思っていた人と結婚するなんて……。それでも、それが運命だと思うんだ。あたしは、巡り巡ってあなたが好き!」
その後、白坂高校の生徒会長になった汐波が、俺の大学入学を機に籍を入れたのはまた別のお話。
Fin
お礼を兼ねてと汐波がご馳走してくれた。
妹の優しさに感謝しつつブラックコーヒーを啜る。
目の前でカフェオレを飲んでいた汐波がおもむろに口を開いた。
「さてと、本題に入りましょうか……お兄ちゃんの最終的評価は80点でした。教えてあげますよ、何故あなたを避けてきたか…その前に先週話した母からの手紙を持って来ました」
汐波から渡されたのは母が汐波に宛てた手紙だった。そこには、母の達筆で俺の知らなかった事実が書かれていた。
『汐波へ
これを読む頃私はあなたのところに居ないでしょう。あなたにこれだけは伝えておきたかたのです。春次は、あなたの兄は私達の実子ではないのです。
私の一生涯の親友の子だったの……親友は春次を生むと同時に他界してしまい、その旦那はショックで自殺……。もともとはその旦那が頑張って口説き落としたからショックは大きかったんだろうね……それで、巡り巡って春次を引き取ったの。
で、この話を汐波にする理由はね、あなたの昔の口癖が気になったからなの。何を伝えたいかというと、汐波は春次と結婚できるということ。
私は一人の女として応援するから。頑張ってね。
母より』
いつも明るくて家族想いだった母を思い出す―いや、実母ではなかったのか。だとしても、俺の両親はあの二人だ―それでも、まだ腑に落ちない。
「それが、どうして俺を避けることに繋がる?」
むしろ積極的に何か仕掛けてきそうなタイプだったのに……。当時ならな。
手紙を仕舞った汐波は、伏し目がちに話し始めた。
「あたし、怖かったの……お兄ちゃんと結婚はしたい……。だってお兄ちゃんカッコいいもん。でも、あたしを妹としか見ていないお兄ちゃんがいつか彼女を見付けてあたしから離れるのが……。だから、あたしから離れようと思って……。嫌われようとして……でも、もう限界だよ……。お兄ちゃんが好きだっていう気持ちを抑えきれないよ……」
目にうっすらと涙を溜める汐波……。その姿に俺は兄としてではなく一人の男としてある決心をした。
「俺は、汐波以上の女の子はいないと思っている……だから! 汐波が望めば何にだってなってやる。だから泣くなよ……俺の前では笑顔でいてくれよ」
必死に涙を堪えて、汐波はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「ありがとう、お兄ちゃん。大好きだよ。だから、この指環はお兄ちゃんがあたしの薬指に嵌めてくれるまで預けるよ。さぁ、帰ろ?」
指環を丁寧に箱に戻し俺に渡した汐波は満面の笑みを浮かべた。
あぁ……俺はきっと何年も前からこの笑顔に恋してたんだな。
………ふっ、いまさらか。
帰り道ではかなり話が弾んだ。
「俺は、汐波に嫌われてなかったのか。やっと安心できるよ」
腕を組む汐波から伝わる体温が俺をホッとさせる。
「当たり前だよ、お兄ちゃん。じゃなきゃ白坂を受験することもなかったよ。ホントは峰村だって受けれたんだよ?」
峰村高校は市内トップの進学率を誇る進学校だ。白坂はその一つ下……。まぁ、汐波は成績よかったからな。
入学式で壇上に立つ妹を思い出す…汐波は白坂に主席で入学したのだ。
「これからのお兄ちゃんとの日々はあたしの宝だよ」
口調も砕け、すっかり昔みたいに戻った汐波の笑顔を見ることのできる毎日か、あぁ最高の宝だ。
「俺も同じことを考えていた。汐波の笑顔は俺の宝だ」
そう言うと汐波は俺の前に回り込んでイタズラっぽく笑うのだった。
「不思議だよね、ずっと兄だと思っていた人と結婚するなんて……。それでも、それが運命だと思うんだ。あたしは、巡り巡ってあなたが好き!」
その後、白坂高校の生徒会長になった汐波が、俺の大学入学を機に籍を入れたのはまた別のお話。
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