異世界でも水分補給は大事です! ~液体生成スキルでのんびりサバイバル~

楠富 つかさ

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第9話

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 翌日、リーシアさんに連れられて、私は冒険者ギルドへとやってきた。宿から歩いて数分の距離にあるその建物は、街の他の建物と比べてどっしりとした石造りで、入口の上には剣と盾を模した看板が掲げられている。

「ここが冒険者ギルドだよ。まずは登録を済ませよう」

 中に入ると、ざわめきとともに熱気が押し寄せてきた。ギルドの中は広々としていて、いくつかのカウンターと掲示板、それに数席のテーブルと椅子が並んでいる。掲示板にはびっしりと紙が貼られていて、恐らく依頼書なのだろう。テーブルでは武具を身に着けた冒険者たちが談笑していた。

「なんだか、すごい活気ですね……」
「ここはこの町を拠点にする冒険者たちの集合場所だからね。まあ、あまり緊張しないで。登録自体は簡単だ」

 そう言うとリーシアさんは私を受付カウンターへと導いた。カウンターの向こう側には、小柄な女性が立っていた。見た目は人間だけど、耳が尖っているところを見るとエルフだろうか。金色の髪をきれいにまとめた彼女は、にこやかな笑顔で出迎えてくれた。

「いらっしゃいませ。冒険者ギルドへようこそ。本日はどのようなご用件でしょうか?」

 リーシアさんが私を促すように前に出た。

「彼女を冒険者として登録してもらいたいんだ。初めてだから、手続きの説明をお願いできるかい?」
「承知しました。それでは冒険者登録についてご説明いたしますね」

 受付の女性は手際よく説明を始めた。冒険者登録には大銅貨1枚の登録料が必要なこと、登録したばかりの冒険者は七級からスタートすること、一ヵ月間依頼を受けない場合は登録が抹消されることなど、基本的なルールを丁寧に教えてくれる。

「以上が登録に関する基本的な内容となります。何かご不明点はございますか?」
「あ、いえ、大丈夫です。ありがとうございます」

 説明を聞き終えたところで、リーシアさんがカウンターに大銅貨を1枚置いた。

「私が立て替えるよ。シズク、このお金はあとで返してくれればいいから気にしないで」
「す、すみません……ありがとうございます」

 恐縮しながらお礼を言うと、受付の女性が紙とペンを差し出してきた。

「それでは、こちらの用紙にお名前と基本情報をご記入ください。魔法が使える方はその種類や得意な魔法も記載していただけると、今後の依頼に役立つかと思います」

 私はペンを取り、用紙に名前と基本情報を書き込む。名前の欄には「シズク」と記入し、得意な魔法の欄には「水魔法」と書いた。いまさらだけど、こっちの世界の文字なのに普通に読み書きできることに驚いてしまう。

「ありがとうございます。それでは、登録証を作成いたしますので、少々お待ちください」

 受付の女性が用紙を持って奥へと消えていった。その間、私はリーシアさんと並んでカウンターの前で待つ。

「冒険者登録って、思ったより簡単なんですね」
「そうだろう? 中には読み書きができないけど冒険者になる者もいるからね。まあ、登録してからが本番さ。依頼をこなして評価を上げていくのが重要なんだ。そうすれば級も上がるし、報酬の良い依頼も受けられるようになる」

 少しすると、受付の女性が戻ってきた。手には小さな金属のプレートがある。

「お待たせいたしました。こちらがシズク様の冒険者登録証です。七級冒険者として登録されましたので、今後はこちらをお持ちいただき、依頼を受けてください」

 手渡されたプレートは手のひらに収まるくらいのサイズで、銀色に輝いている。よく見ると、名前と級が刻まれていた。

「わぁ……これが登録証なんですね」
「ええ、それがあなたの冒険者としての証明になります。大事にしてくださいね」

 私は登録証をしっかりと握りしめてお礼を言った。

「ありがとうございます!」

 こうして私は正式に冒険者としての一歩を踏み出したのだった。

 カウンターを離れ、いよいよ依頼が貼られた掲示板の前に立つ。

「さて、次は早速依頼を受ける準備だな。シズク、何か得意分野はあるか?」
「うーん、まだわからないですけど……水魔法が使えるので、それを活かせる依頼があればいいなって」
「なるほど。それなら、水源の確保や清掃系の依頼が向いているかもしれないな。初心者向けの依頼は意外とそういう日常的なものも多いんだ」
「そうなんですね! 少し安心しました」

 冒険者としての生活は不安もあるけれど、リーシアさんがついていてくれるおかげで心強い。これからどんな冒険が待っているのだろう。私は新しい登録証を握りしめ、貼られた依頼に目を向けるのだった。
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