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エピソード03 跳躍! 空飛ぶ敵を追え!
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エピソード03 跳躍! 空飛ぶ敵を追え!
その日はリライターになってから初めての週末で、遊びに行きたい気持ちを押し込めてログレス出没を警戒していた。と言っても、見付けるのはイデアなのだが。
「郷戸地区にログレス反応! ナルミ、行くわよ!」
郷戸地区はやや遠いが、ワープのカードさえあればどこだってひとっ飛びだ! ひとまず家族に怪しまれないように、玄関から出て角を曲がる。周囲に人が居ないことを確認してから、変身し更にワープのカードを発動する。
――ワープ サーティフィケーション――
郷戸地区はお寺や墓地が多く、正直お彼岸の時期以外あまり来ないのだが……。ログレスが暴れたのか、道路のアスファルトにがっつりえぐれている部分が有る上、電柱の一本がへし折れてしまっている。人的被害も気になるが物的被害も大きい。こうしたログレスのしわざが社会的には怪異現象として観測される。一応、リライターの存在も秘密にするようイデアも言っていた。姿を消せるイデアルカードがあれば便利なのに。
『インヴィジボゥのカードは手元にないのよ。にしても妙ね、ログレスの姿が見当たらない……』
こういう時の定番は地中か上空、アスファルトの舗装が破壊されているが穴が空いているわけではない。地中をやられたら断水とかガス管の破壊とか、ライフラインへの影響がひどそうだ。
……ならば空、かな? 残念ながら飛翔するユニットはリライターの標準装備にはない。取り敢えず上を向いてログレスを探す。リライターのゴーグルパーツには双眼鏡のような効果があるから、念じれば倍率を変えて探すことだって出来る。
「見付けた! 鳥みたいな怪人がいる!」
『おそらく翼のログレスカードね。飛翔高度はざっと500メートル……』
「うーん、リライターのジャンプ力はざっと40メートルだから届かないわ」
『キューブのカードを使って。足場になるはずよ』
なるほど。手首をスナップさせて前回の敵から入手したキューブのカードを取り出す。そしてバックルにセット!
――キューブ サーティフィケーション――
発動するといわゆるレンガブロックみたいな立方体がいくつか生み出される。それを足場に、ぴょんぴょんとジャンプしながら、鳥形ログレスが向かう方向へ移動する。
「射撃武器とかあれば手っ取り早いのに」
使ったことないから命中するかは知らないけど。
――スラッシュ サーティフィケーション――
一先ず、唯一の武装である長剣を構えながら迫る。
「せい!! やぁ!!」
振り下ろしと水平斬りを繰り出すが、足場の限られたこちらと違って向こうは縦横無尽だ。流石に分が悪い。
「キェェェ!!」
くちばしから放たれる奇声に思わず仰け反る。すると羽みたいな形をした小刀が私を襲う。たまらず墜落しかけるのを、なんとか足場で体勢を整える。
「アイツ、強くない!?」
「頑張って!!」
イデアは応援するより他ないらしい。三体目だからまだフォームチェンジとかもないようなタイミングだろう。初期フォームだけで何とか攻略するより他ない。
……ものは試しかな。私はバックルから取り出したスラッシュのカードを、剣の鍔に備え付けられたスリットに三度通す。
――スラッシュ!スラッシュ!!スラッシュ!!! オーバーフロー!!!――
来たぁ!! 長剣が湛えるオーラはキューブログレスを粉砕した時のペールブルーとは段違いのディープブルー、紺青のオーラだ。足場のキューブ九つを一箇所に集め、右前に足を捌く。そして剣を大上段に構え呼吸を整える。
「リライター超ファイナルスラーーッシュ!!!!!」
渾身の斬撃波を放つが、鳥人ログレスは急降下でそれを躱す。いや、こういう時ヒーローの必殺技は回避されないでしょうが!!
「ぐぎゃあ!!」
硬質の翼がクリティカルヒットし、私は足場から落とされ民家の屋根に叩きつけられる。……瓦が何枚か割れてしまっている。弁償は出来ないが取り敢えずあのログレスを即座に倒すことで償おう!!
「キェェェ!!」
道幅の広めの道路に降り立ったかと思いきや、急に叫び出すログレス。すると……。
「うそ……増えた?」
『アレは一段階進化したログレスが操る自分の兵です。さほど戦闘力はありませんが、数の暴力というやつです』
なるほど、戦闘員か。だったら!
――スラッシュ! スラッシュ!! フィーバー!!――
スラッシュのカードを二回スキャン、真っ青なオーラを湛える長剣がその刀身を伸ばす。なるほど、リーチに補正がかかるわけか。大剣ともとれるその長い刃で、迫り来る戦闘員を一刀両断。
「覇者・一閃!!」
振り下ろした手首を返し、ログレスめがけて肉薄する。この人はどんな欲望を解放されてログレスになったんだろう。空を飛びたかっただけなのだろうか。
「せいはぁあ!!!!!!!」
瞬間、ふってわいた迷いを断つように裂帛の気合いを挙げ水平斬りを放つ。その一撃はログレスの翼をばっさりと切り落とした。それでもなお逃げようと羽ばたくログレス。十メートルも浮上できないでいる。そんなログレスにトドメをさすべく、メタモルフォーゼのカードを足首のスリットに読み込ませる。
――メタモル! キックストライク!!――
「そいやぁ!!」
40メートルのジャンプから、ガラ空きの背中に叩きつけるようなリライターキック。ログレスは四散爆散。
「翼のカードを回収しました。お疲れ様、ナルミ」
「……うん」
変身を解除する前に、家にほど近い場所へとワープする。変身を解除し、帰宅する。
そそくさと自分の部屋に戻る。イデアは基本的にイデアルカードを持っている人にしか視認できないらしい。けれど、初めて会った時はイデアルカードを手渡される前にイデアは姿を現した。どういうギミックかは教えてくれないでいる。それも気になるが、やはり私には気になることがある。
「ログレスになった人を元に戻す術はないの?」
「無いわ。ごめんなさい、そればっかりはどうにもならないのよ」
そう、なんだ……。誰かを救うために、誰かを犠牲にしなければならないなんて……。現実ってやつは、ドラマより救いがないものなんだなぁ。集めなければならないカードはあと86枚。もし全てのログレスカードが、一体ずつログレスを生み出すのだとしたら……私はあと86人の尊い命を奪わなければならないの……?
私の憧れたヒーローって、何なんだろう?
その日はリライターになってから初めての週末で、遊びに行きたい気持ちを押し込めてログレス出没を警戒していた。と言っても、見付けるのはイデアなのだが。
「郷戸地区にログレス反応! ナルミ、行くわよ!」
郷戸地区はやや遠いが、ワープのカードさえあればどこだってひとっ飛びだ! ひとまず家族に怪しまれないように、玄関から出て角を曲がる。周囲に人が居ないことを確認してから、変身し更にワープのカードを発動する。
――ワープ サーティフィケーション――
郷戸地区はお寺や墓地が多く、正直お彼岸の時期以外あまり来ないのだが……。ログレスが暴れたのか、道路のアスファルトにがっつりえぐれている部分が有る上、電柱の一本がへし折れてしまっている。人的被害も気になるが物的被害も大きい。こうしたログレスのしわざが社会的には怪異現象として観測される。一応、リライターの存在も秘密にするようイデアも言っていた。姿を消せるイデアルカードがあれば便利なのに。
『インヴィジボゥのカードは手元にないのよ。にしても妙ね、ログレスの姿が見当たらない……』
こういう時の定番は地中か上空、アスファルトの舗装が破壊されているが穴が空いているわけではない。地中をやられたら断水とかガス管の破壊とか、ライフラインへの影響がひどそうだ。
……ならば空、かな? 残念ながら飛翔するユニットはリライターの標準装備にはない。取り敢えず上を向いてログレスを探す。リライターのゴーグルパーツには双眼鏡のような効果があるから、念じれば倍率を変えて探すことだって出来る。
「見付けた! 鳥みたいな怪人がいる!」
『おそらく翼のログレスカードね。飛翔高度はざっと500メートル……』
「うーん、リライターのジャンプ力はざっと40メートルだから届かないわ」
『キューブのカードを使って。足場になるはずよ』
なるほど。手首をスナップさせて前回の敵から入手したキューブのカードを取り出す。そしてバックルにセット!
――キューブ サーティフィケーション――
発動するといわゆるレンガブロックみたいな立方体がいくつか生み出される。それを足場に、ぴょんぴょんとジャンプしながら、鳥形ログレスが向かう方向へ移動する。
「射撃武器とかあれば手っ取り早いのに」
使ったことないから命中するかは知らないけど。
――スラッシュ サーティフィケーション――
一先ず、唯一の武装である長剣を構えながら迫る。
「せい!! やぁ!!」
振り下ろしと水平斬りを繰り出すが、足場の限られたこちらと違って向こうは縦横無尽だ。流石に分が悪い。
「キェェェ!!」
くちばしから放たれる奇声に思わず仰け反る。すると羽みたいな形をした小刀が私を襲う。たまらず墜落しかけるのを、なんとか足場で体勢を整える。
「アイツ、強くない!?」
「頑張って!!」
イデアは応援するより他ないらしい。三体目だからまだフォームチェンジとかもないようなタイミングだろう。初期フォームだけで何とか攻略するより他ない。
……ものは試しかな。私はバックルから取り出したスラッシュのカードを、剣の鍔に備え付けられたスリットに三度通す。
――スラッシュ!スラッシュ!!スラッシュ!!! オーバーフロー!!!――
来たぁ!! 長剣が湛えるオーラはキューブログレスを粉砕した時のペールブルーとは段違いのディープブルー、紺青のオーラだ。足場のキューブ九つを一箇所に集め、右前に足を捌く。そして剣を大上段に構え呼吸を整える。
「リライター超ファイナルスラーーッシュ!!!!!」
渾身の斬撃波を放つが、鳥人ログレスは急降下でそれを躱す。いや、こういう時ヒーローの必殺技は回避されないでしょうが!!
「ぐぎゃあ!!」
硬質の翼がクリティカルヒットし、私は足場から落とされ民家の屋根に叩きつけられる。……瓦が何枚か割れてしまっている。弁償は出来ないが取り敢えずあのログレスを即座に倒すことで償おう!!
「キェェェ!!」
道幅の広めの道路に降り立ったかと思いきや、急に叫び出すログレス。すると……。
「うそ……増えた?」
『アレは一段階進化したログレスが操る自分の兵です。さほど戦闘力はありませんが、数の暴力というやつです』
なるほど、戦闘員か。だったら!
――スラッシュ! スラッシュ!! フィーバー!!――
スラッシュのカードを二回スキャン、真っ青なオーラを湛える長剣がその刀身を伸ばす。なるほど、リーチに補正がかかるわけか。大剣ともとれるその長い刃で、迫り来る戦闘員を一刀両断。
「覇者・一閃!!」
振り下ろした手首を返し、ログレスめがけて肉薄する。この人はどんな欲望を解放されてログレスになったんだろう。空を飛びたかっただけなのだろうか。
「せいはぁあ!!!!!!!」
瞬間、ふってわいた迷いを断つように裂帛の気合いを挙げ水平斬りを放つ。その一撃はログレスの翼をばっさりと切り落とした。それでもなお逃げようと羽ばたくログレス。十メートルも浮上できないでいる。そんなログレスにトドメをさすべく、メタモルフォーゼのカードを足首のスリットに読み込ませる。
――メタモル! キックストライク!!――
「そいやぁ!!」
40メートルのジャンプから、ガラ空きの背中に叩きつけるようなリライターキック。ログレスは四散爆散。
「翼のカードを回収しました。お疲れ様、ナルミ」
「……うん」
変身を解除する前に、家にほど近い場所へとワープする。変身を解除し、帰宅する。
そそくさと自分の部屋に戻る。イデアは基本的にイデアルカードを持っている人にしか視認できないらしい。けれど、初めて会った時はイデアルカードを手渡される前にイデアは姿を現した。どういうギミックかは教えてくれないでいる。それも気になるが、やはり私には気になることがある。
「ログレスになった人を元に戻す術はないの?」
「無いわ。ごめんなさい、そればっかりはどうにもならないのよ」
そう、なんだ……。誰かを救うために、誰かを犠牲にしなければならないなんて……。現実ってやつは、ドラマより救いがないものなんだなぁ。集めなければならないカードはあと86枚。もし全てのログレスカードが、一体ずつログレスを生み出すのだとしたら……私はあと86人の尊い命を奪わなければならないの……?
私の憧れたヒーローって、何なんだろう?
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