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エピソード02 その少女、JKでリライター
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――エピソード02 その少女、JKでリライター――
初陣から一夜明け、自室のベッドで目を覚ます。
「おはよう、イデア」
イデアは私が所持しているイデアルカードの能力を限定的にだけど行使できるらしく、メタモルフォーゼの力を使って衣服を自由に変化させられるらしい。私と色違いのパジャマ姿で空中を漂う女神様、食事はいらないが睡眠は必要らしい彼女と挨拶を交しながら学校の制服に着替える。光ノ森学園の制服はクリーム色を基調としたブレザーで、10月の今は普通に冬服。10月といえば私が思い浮かべるヒーローたちの放送開始時期にも近い。やはりこのタイミングでライ……リライターに選ばれたのは運命なのかもしれない。
「ナルミ、けっこうスタイルいいのね」
女神様に見られながら着替えるのは地味に緊張するからあまり見ないで欲しいのだけれど。朝食をこぼしたら大変だけど、一度居間に行って朝食を摂った後にまた自室に戻って着替えたら二度手間だから起きたら着替えるようにしている。
リビングへ向かいながらだから念話の方でイデアに返事をする。
(こういうことに備えて、小さい頃から武道とかやってたんだよ)
少林寺拳法と剣道をかれこれ五年以上はやっている。徒手空拳でも武器を持っても、一応は戦えるように努力は積み重ねてきたのだ。まぁ、日常的に戦闘に巻き込まれるような世界じゃなくても、女の子たるもの護身術の一つや二つ、やっておいて損は無いだろう。
(ナルミのそういうストイックな面もリライターとしての資質ね)
(それはありがとう)
洗面所で顔を洗い髪を整える。それから手早く朝食を済ませ、居間の隅に置いておいたカバンを持って学校へ向かう。
道中でアキコとナゴミと合流。そのまま正門をくぐって教室へ。昨日の出来事が嘘のようなありふれた普通の日常が始まる……って思っていたんだけど、何やらクラスがざわついている。
「ねぇ聞いた? 昨日の通り魔事件」
「犯人が消えちゃったんだよね。こわーい」
通り魔が消えた……? なんだかただ事じゃ無い。ていうか、この高度なネットワーク時代に面と向かって噂話かぁ。なんてちょっと思っちゃった。
「平さんたちも下校路が葛公園方向だよね」
私に声をかけてきたのは木戸マコちゃん。新聞部に所属していて、学校内はおろか校外の事件についても調べたがるジャーナリスト系女子だ。
なお、葛公園は私が昨日カマキリ怪人を撃破した場所。フリーで使える野外ステージみたな場所があるのが特徴だ。
「う、うん。なんか人だかりが凄くてさ……。遠回りしてタピりに行っちゃった」
(二人とも、昨日のことはナイショだからね)
(もちろん。魔法少女と秘密は切っても切り離せないから)
(……そういうことじゃないけど、まぁ分かってるわよ。それくらい。大事になったら面倒だもの)
いい理解者に恵まれて私幸せだよ。
「そっかぁ。何か知っていることがあったら、漏らさず教えてね。情報は随時募集中だから」
それからクラス担任の蟹江先生がやってきて、昨日の通り魔事件に触れて、単独での行動を避けるように注意して朝のホームルームを始めた。それからは普通に授業が始まって、三時間目に突入した時、事件は起きた。
(ナルミ、怪人が現われたわ。空壁町方向よ)
(嘘、授業中だけど!)
(怪人が女子高生のスケジュールを把握しているわけないでしょ)
(ここはこのナゴミさんに任せなさい)
「先生、あの、ナル……平さんが調子悪そうなので保健室へ連れて行ってもいいですか?」
三時間目はクラス担任でもある蟹江先生の世界史、それなりにゆるい先生だから行かせてくれるはず。それにしてもナゴミが真後ろの席で良かった。
「えぇ、分かりました。連れて行ってあげてください」
(助かる!)
ナゴミに連れられ教室を後にする。あとはいかに他の先生や生徒に見付からずに空壁町へ向かうかだ。ドラマとかだとバイクで移動したり、移動を考慮することなく画面切り替えで移動していたりするのだけれど。
(ナルミ!)
(うわ、イデア!! え、どうしてここに!?)
思わず声が出そうになったのを押しとどめた自分を褒めてあげたい。するとイデアは私に一枚のイデアルカードを手渡した。それはワープのカード。これをバックルに読み込ませて発動すれば、行きたい場所へ行くことが可能になるという。イデアが死守した二十枚のうちの一枚だ。
――ワープ サーティフィケーション――
ナゴミに見送られながら、空壁町にやってきた。周囲を見渡すと立方体をつなぎ合わせたかのような怪人が電柱をへし折ったり道路をボコボコにしたりしながら、とにかく大暴れしていた。
「あれはキューブのログレスですね」
あれら怪人をログレスと呼ぶらしい。欲望を解放され、撃破されると存在の記憶つまりログが消滅してしまうらしい。あのログレスも元は人間だったことをカマキリログレス討伐後に気付き、胃液を吐きそうになったけれど……目の前で誰かが傷つくよりはいい。
「さぁ、始めるよ」
バックルを腰にあて、ベルトを展開する。メタモルフォーゼのイデアルカードを読みこませ、セットする。
「変身!!」
「スラッシュのカードを使うのよ!」
イデアに言われ私はマジシャンのように手首をスナップさせると、どこからともなくスラッシュのカードを取り出した。どこから出したって? 知る必要はないさ。
――スラッシュ サーティフィケーション――
バックルにカードを挿入すると、どこからともなく白銀の長剣が現われた。堅そうな敵だが、本当にこれでいいのだろうか。多少の不安はありつつも、ドラマで言うところの販促だろうと割り切り、果敢に切り込む。キューブログレスの攻撃はパンチばかりの単調なそれで、きちんと見切りながらキューブとキューブの隙間を切り込む。
「そろそろ仕上げだよ!」
ポロポロと剥がれていく装甲に長剣を突き刺し、ベルトからスラッシュのカードを引き抜く。そして鍔に露骨に用意されたスリットにスラッシュのカードを読み込ませる。カードは後ろに放り投げるが、きちんとイデアが回収してくれるだろう。電子的なメロディの待機音が響き渡る。
「ひぃっさーつ!! 双襲斬!!」
ペールブルーのライトエフェクトが迸る長剣でXを描くように振るう。振り向きながら納刀するようなモーションでホルスター状のベルトパーツに納める。四散爆散。キューブのカードもきちんとイデアが回収してくれた。
「ふぅ、大勝利だね」
「ええ。ナルミったら、思った以上の逸材かもしれないわね」
「もっと褒めてよ。ほとんどノーダメとはいえ、精神的にはすごく疲れるんだから」
……じゃなきゃ、間接的な人殺しなんて続けられないよ。集めなければならないカードは残り86枚。
初陣から一夜明け、自室のベッドで目を覚ます。
「おはよう、イデア」
イデアは私が所持しているイデアルカードの能力を限定的にだけど行使できるらしく、メタモルフォーゼの力を使って衣服を自由に変化させられるらしい。私と色違いのパジャマ姿で空中を漂う女神様、食事はいらないが睡眠は必要らしい彼女と挨拶を交しながら学校の制服に着替える。光ノ森学園の制服はクリーム色を基調としたブレザーで、10月の今は普通に冬服。10月といえば私が思い浮かべるヒーローたちの放送開始時期にも近い。やはりこのタイミングでライ……リライターに選ばれたのは運命なのかもしれない。
「ナルミ、けっこうスタイルいいのね」
女神様に見られながら着替えるのは地味に緊張するからあまり見ないで欲しいのだけれど。朝食をこぼしたら大変だけど、一度居間に行って朝食を摂った後にまた自室に戻って着替えたら二度手間だから起きたら着替えるようにしている。
リビングへ向かいながらだから念話の方でイデアに返事をする。
(こういうことに備えて、小さい頃から武道とかやってたんだよ)
少林寺拳法と剣道をかれこれ五年以上はやっている。徒手空拳でも武器を持っても、一応は戦えるように努力は積み重ねてきたのだ。まぁ、日常的に戦闘に巻き込まれるような世界じゃなくても、女の子たるもの護身術の一つや二つ、やっておいて損は無いだろう。
(ナルミのそういうストイックな面もリライターとしての資質ね)
(それはありがとう)
洗面所で顔を洗い髪を整える。それから手早く朝食を済ませ、居間の隅に置いておいたカバンを持って学校へ向かう。
道中でアキコとナゴミと合流。そのまま正門をくぐって教室へ。昨日の出来事が嘘のようなありふれた普通の日常が始まる……って思っていたんだけど、何やらクラスがざわついている。
「ねぇ聞いた? 昨日の通り魔事件」
「犯人が消えちゃったんだよね。こわーい」
通り魔が消えた……? なんだかただ事じゃ無い。ていうか、この高度なネットワーク時代に面と向かって噂話かぁ。なんてちょっと思っちゃった。
「平さんたちも下校路が葛公園方向だよね」
私に声をかけてきたのは木戸マコちゃん。新聞部に所属していて、学校内はおろか校外の事件についても調べたがるジャーナリスト系女子だ。
なお、葛公園は私が昨日カマキリ怪人を撃破した場所。フリーで使える野外ステージみたな場所があるのが特徴だ。
「う、うん。なんか人だかりが凄くてさ……。遠回りしてタピりに行っちゃった」
(二人とも、昨日のことはナイショだからね)
(もちろん。魔法少女と秘密は切っても切り離せないから)
(……そういうことじゃないけど、まぁ分かってるわよ。それくらい。大事になったら面倒だもの)
いい理解者に恵まれて私幸せだよ。
「そっかぁ。何か知っていることがあったら、漏らさず教えてね。情報は随時募集中だから」
それからクラス担任の蟹江先生がやってきて、昨日の通り魔事件に触れて、単独での行動を避けるように注意して朝のホームルームを始めた。それからは普通に授業が始まって、三時間目に突入した時、事件は起きた。
(ナルミ、怪人が現われたわ。空壁町方向よ)
(嘘、授業中だけど!)
(怪人が女子高生のスケジュールを把握しているわけないでしょ)
(ここはこのナゴミさんに任せなさい)
「先生、あの、ナル……平さんが調子悪そうなので保健室へ連れて行ってもいいですか?」
三時間目はクラス担任でもある蟹江先生の世界史、それなりにゆるい先生だから行かせてくれるはず。それにしてもナゴミが真後ろの席で良かった。
「えぇ、分かりました。連れて行ってあげてください」
(助かる!)
ナゴミに連れられ教室を後にする。あとはいかに他の先生や生徒に見付からずに空壁町へ向かうかだ。ドラマとかだとバイクで移動したり、移動を考慮することなく画面切り替えで移動していたりするのだけれど。
(ナルミ!)
(うわ、イデア!! え、どうしてここに!?)
思わず声が出そうになったのを押しとどめた自分を褒めてあげたい。するとイデアは私に一枚のイデアルカードを手渡した。それはワープのカード。これをバックルに読み込ませて発動すれば、行きたい場所へ行くことが可能になるという。イデアが死守した二十枚のうちの一枚だ。
――ワープ サーティフィケーション――
ナゴミに見送られながら、空壁町にやってきた。周囲を見渡すと立方体をつなぎ合わせたかのような怪人が電柱をへし折ったり道路をボコボコにしたりしながら、とにかく大暴れしていた。
「あれはキューブのログレスですね」
あれら怪人をログレスと呼ぶらしい。欲望を解放され、撃破されると存在の記憶つまりログが消滅してしまうらしい。あのログレスも元は人間だったことをカマキリログレス討伐後に気付き、胃液を吐きそうになったけれど……目の前で誰かが傷つくよりはいい。
「さぁ、始めるよ」
バックルを腰にあて、ベルトを展開する。メタモルフォーゼのイデアルカードを読みこませ、セットする。
「変身!!」
「スラッシュのカードを使うのよ!」
イデアに言われ私はマジシャンのように手首をスナップさせると、どこからともなくスラッシュのカードを取り出した。どこから出したって? 知る必要はないさ。
――スラッシュ サーティフィケーション――
バックルにカードを挿入すると、どこからともなく白銀の長剣が現われた。堅そうな敵だが、本当にこれでいいのだろうか。多少の不安はありつつも、ドラマで言うところの販促だろうと割り切り、果敢に切り込む。キューブログレスの攻撃はパンチばかりの単調なそれで、きちんと見切りながらキューブとキューブの隙間を切り込む。
「そろそろ仕上げだよ!」
ポロポロと剥がれていく装甲に長剣を突き刺し、ベルトからスラッシュのカードを引き抜く。そして鍔に露骨に用意されたスリットにスラッシュのカードを読み込ませる。カードは後ろに放り投げるが、きちんとイデアが回収してくれるだろう。電子的なメロディの待機音が響き渡る。
「ひぃっさーつ!! 双襲斬!!」
ペールブルーのライトエフェクトが迸る長剣でXを描くように振るう。振り向きながら納刀するようなモーションでホルスター状のベルトパーツに納める。四散爆散。キューブのカードもきちんとイデアが回収してくれた。
「ふぅ、大勝利だね」
「ええ。ナルミったら、思った以上の逸材かもしれないわね」
「もっと褒めてよ。ほとんどノーダメとはいえ、精神的にはすごく疲れるんだから」
……じゃなきゃ、間接的な人殺しなんて続けられないよ。集めなければならないカードは残り86枚。
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