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「ごめんくださーい」
引き戸を開けるとガランガランと鈴が鳴る。中はけっこう広くて、棚にはいろいろな商品が並べられていた。お土産屋さんなのかと思ったけど、わりと日用品もあって、何でも屋さんって感じだ。駄菓子も置いてある。
「いらっしゃいませ~」
奥の方にいた女の子が声をかけてくれる。彼女がゆもりちゃんの言っていた幼馴染さんかな。
「あの、鶴城旅館のゆもりちゃんに紹介されて来たんですけど」
「ゆもりんからメッセで聞いてるよ。私、川岸彩織。よろしくね」
にっこりと笑う彼女はどこか大人びていて、綺麗なお姉さんみたいだ。ゆもりちゃんから同級生だって聞いてなかったら高校生だと思っていただろう。そして何より驚いたのは彼女の身長の高さ。百六十センチ台の半ばくらいはあると思う。
私よりも二十センチ近く高いのではないだろうか。それに、背筋がピンと伸びていて、胸を気にして猫背になりがちな私とは大違いだ。
そしてやっぱり胸が大きい。ゆもりちゃんが、私と同じ悩みがあるんじゃないかって言っていたけど、お店のエプロンを押し上げるふくらみは私より大きいのかもしれない。……背筋がしゃんとしているからそう見えるのかな。
「えっと、心ちゃんでいいかな? 明日が受験だと思うと緊張しちゃうよね~」
そう言って私の肩に手を乗せてくる彼女。その手は大きくて温かい。初めて会う人と話すのは少し緊張するけど、彩織ちゃんの少し間延びした話し方が、その緊張を緩めてくれる。
「そうですね。でも、もうやれることはやったんで、あとは自分の実力を信じて頑張ります」
「おお、強いんだね。何か欲しいものとかあったら遠慮なく言ってね。サービスするよ」
「ありがとうございます」
「そうだ、心ちゃん。ここのお店ってお土産も売ってるけど、個人的におすすめなのは雑貨類なんだ。アクセとかキーホルダー、あとはストラップもあるよ」
「へぇ……」
お店の端の方に案内されて、色とりどりの可愛らしい小物たちが並んでいるのが見える。ストラップはスマホに着けるのが多めで、中には動物のマスコットが付いているものもある。
「わぁ……可愛い」
「でしょ。どれがいい?」
「うーん、この白いウサギのついたやつが良いかも」
「了解。ちょっと待っててね」
彩織ちゃんはそう言って、白いウサギをモチーフにしちゃチャームを私の手に握らせる。
「はい、どうぞ。お代はいいよ。お近づきの印に」
「え、でも……」
たじろぐ私に彩織ちゃんは、常連さんになってくれればいいからその先行投資と言って、お代を受け取ってはくれなかった。
「うん、ありがと。また来るね」
「また来てね~」
お店を出ようとした時、ふと思い出したことがあった。それは私が気になっていたこと。
「ねぇ、彩織ちゃん。ゆもりちゃんってどんな子なの?」
「ゆもりん? そうだなぁ、元気な妹みたいな感じだよ。私も小さい頃から一緒にいるからね」
「そっかぁ……」
「心ちゃんはゆもりんのこと好きなの? 一目ぼれしちゃった系?」
「えっ!?」
あたふたとする私に、彩織ちゃんは小悪魔みたいな笑みを浮かべる。
「あ、ごめんね。なんかそんな感じがしちゃったからさ。違うなら良いんだけど」
「あ、えっと……好きっていうか、仲良くなりたいなって思って……」
「なぁるほどねぇ。まぁこれからよろしくね」
「う、うん。よろしくね、彩織ちゃん」
彩織ちゃんに見送られながら私は川岸商店を後にして、旅館へと戻った。道中、頭の中はゆもりちゃんのことばかりだった。
引き戸を開けるとガランガランと鈴が鳴る。中はけっこう広くて、棚にはいろいろな商品が並べられていた。お土産屋さんなのかと思ったけど、わりと日用品もあって、何でも屋さんって感じだ。駄菓子も置いてある。
「いらっしゃいませ~」
奥の方にいた女の子が声をかけてくれる。彼女がゆもりちゃんの言っていた幼馴染さんかな。
「あの、鶴城旅館のゆもりちゃんに紹介されて来たんですけど」
「ゆもりんからメッセで聞いてるよ。私、川岸彩織。よろしくね」
にっこりと笑う彼女はどこか大人びていて、綺麗なお姉さんみたいだ。ゆもりちゃんから同級生だって聞いてなかったら高校生だと思っていただろう。そして何より驚いたのは彼女の身長の高さ。百六十センチ台の半ばくらいはあると思う。
私よりも二十センチ近く高いのではないだろうか。それに、背筋がピンと伸びていて、胸を気にして猫背になりがちな私とは大違いだ。
そしてやっぱり胸が大きい。ゆもりちゃんが、私と同じ悩みがあるんじゃないかって言っていたけど、お店のエプロンを押し上げるふくらみは私より大きいのかもしれない。……背筋がしゃんとしているからそう見えるのかな。
「えっと、心ちゃんでいいかな? 明日が受験だと思うと緊張しちゃうよね~」
そう言って私の肩に手を乗せてくる彼女。その手は大きくて温かい。初めて会う人と話すのは少し緊張するけど、彩織ちゃんの少し間延びした話し方が、その緊張を緩めてくれる。
「そうですね。でも、もうやれることはやったんで、あとは自分の実力を信じて頑張ります」
「おお、強いんだね。何か欲しいものとかあったら遠慮なく言ってね。サービスするよ」
「ありがとうございます」
「そうだ、心ちゃん。ここのお店ってお土産も売ってるけど、個人的におすすめなのは雑貨類なんだ。アクセとかキーホルダー、あとはストラップもあるよ」
「へぇ……」
お店の端の方に案内されて、色とりどりの可愛らしい小物たちが並んでいるのが見える。ストラップはスマホに着けるのが多めで、中には動物のマスコットが付いているものもある。
「わぁ……可愛い」
「でしょ。どれがいい?」
「うーん、この白いウサギのついたやつが良いかも」
「了解。ちょっと待っててね」
彩織ちゃんはそう言って、白いウサギをモチーフにしちゃチャームを私の手に握らせる。
「はい、どうぞ。お代はいいよ。お近づきの印に」
「え、でも……」
たじろぐ私に彩織ちゃんは、常連さんになってくれればいいからその先行投資と言って、お代を受け取ってはくれなかった。
「うん、ありがと。また来るね」
「また来てね~」
お店を出ようとした時、ふと思い出したことがあった。それは私が気になっていたこと。
「ねぇ、彩織ちゃん。ゆもりちゃんってどんな子なの?」
「ゆもりん? そうだなぁ、元気な妹みたいな感じだよ。私も小さい頃から一緒にいるからね」
「そっかぁ……」
「心ちゃんはゆもりんのこと好きなの? 一目ぼれしちゃった系?」
「えっ!?」
あたふたとする私に、彩織ちゃんは小悪魔みたいな笑みを浮かべる。
「あ、ごめんね。なんかそんな感じがしちゃったからさ。違うなら良いんだけど」
「あ、えっと……好きっていうか、仲良くなりたいなって思って……」
「なぁるほどねぇ。まぁこれからよろしくね」
「う、うん。よろしくね、彩織ちゃん」
彩織ちゃんに見送られながら私は川岸商店を後にして、旅館へと戻った。道中、頭の中はゆもりちゃんのことばかりだった。
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