恋の泉の温もりよ

楠富 つかさ

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 宿では勉強して過ごし、のんびりとお風呂に過ごして受験に備える。
 そして翌朝……。

「おはよう! 心、朝ごはん食べられる? 緊張してない?」 

 朝早くにゆもりちゃんはやって来て、てきぱきと朝食の準備をする。

「大丈夫。昨日はよく眠れたし、集中力も十分にあると思う。緊張はちょっとだけ、ね」

 そのちょっとだけある緊張も、ゆもりちゃんの笑顔で半分くらい吹き飛んじゃったかもしれない。 

「そっか、良かった。えへへ~実はあたしもちょっと緊張しててさぁ。若女将も今日くらいはちゃんと食べて力出すんだよってお客様と一緒の献立だし」

 ゆもりちゃんと二人で並んで座って食事をする。焼き魚に卵料理、お味噌汁と純和風の献立だ。確かに昨日と違って今日はゆもりちゃんも同じメニューを食べている。どれも美味しくて、食べ終わる頃には残った緊張もほぐれていた。

「そうだ、今日一緒に高校行こうね」
「うん!」

 昨日、下見をしておくつもりが彩織ちゃんとの出会いですっかり忘れてしまっていたのだ。一応、受験するって決めた時に一回は下見しているから迷わないとは思うけど、一人で行くよりゆもりちゃんと一緒に行った方が心強い。

「ごちそうさまでした」
「うん、ごちそうさま」

 ゆもりちゃんが立ち上がって下膳の準備を始める。私も着替えたり筆記用具の最終確認などをしていると、ほどなくしてセーラー服姿のゆもりちゃんが部屋に入ってきた。私の黒と臙脂の重いセーラー服と違って、紺に白のラインが入ったゆもりちゃんのセーラー服はなんだか軽やかに見えた。スカーフも明るめのブルーで爽やかな雰囲気がゆもりちゃんに似合っていた。

「ゆもりちゃんのセーラー服、可愛いね」
「そっかなぁ? 湯乃宮はブレザーじゃん? ずっとブレザーに憧れてたんだよねぇ」

 確かに、もう今のセーラー服も数か月後には着なくなるんだよね。三年間着てきたからちょっと寂しいかもしれない。でも、新しい制服との出会いだってもうすぐなんだよね。

「セーラー服で言えば、心のはなんだか大人っぽいね。お嬢さんって感じ。ふふ、宿の客室にいるからかな?」
「そうかも、えへへ」

 リュックを背負うと、ゆもりちゃんが最後の確認を始めた。お部屋の戸締りと、私たちの持ち物の。

「忘れ物はないか確認した? ハンカチ持った?ティッシュは?」
「もう、ゆもりちゃんってばお母さんみたいだね。ゆもりちゃんこそ、忘れ物は大丈夫?」
「ばっちりだよ。まぁ、ほとんどお母さんが準備してくれるからだけど」

 作務衣の時には若女将って言ってたけど、きっとお母さんのことだよね。服装でちゃんとオンオフがしてて、ちょっと大人っぽいかも。まぁ、荷物の準備をしてもらっているあたり、大人っぽくはないんだけど。

「じゃ、行こうか」
「うん!!」
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