恋の泉の温もりよ

楠富 つかさ

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「お疲れさま~!!」

 入試後、私とゆもりちゃんと彩織ちゃんの三人で、ちょっとしたお疲れ様会をすることにした。場所は鶴屋旅館のゆもりちゃんの部屋。ゆもりちゃんがお茶を淹れてくれて、彩織ちゃんがお菓子を持ってきてくれた。

「二人ともおつかれ! あたしも結構できそうな気がしてきた!」
「ゆもりちゃんは本当に頑張ったもんね。おめでとう」
「ありがと! あ~、これで安心して卒業できる!」
「まだ卒業式まで日があるのに。ていうか、中学を安心して卒業するって……なに?」
「そりゃまあ、高校で新しい友達が~とかいろいろあるじゃん。でも、心がいればそれはまったく問題ないし、受かってるって自信も湧いてきたし。大丈夫っしょ!!」

 ゆもりちゃんと彩織ちゃんのやり取りをのほほんとした気持ちで眺める。この二人となら、高校生活もきっと楽しそう。

「そうだ、心は受かったらこっちに引っ越してくるの?」
「そうだよ。ちょっと古いアパートに一人暮らしすることになってる。アパートの契約とかはお母さんがやってくれてるから、私は場所とかしか知らないけど」
「え!? 心って一人暮らしするの? 大丈夫? 危なくない?」
「一応、大家のお婆さんも住んでるし、お風呂とトイレもあるから平気だよ」

 アパートは私も一緒に見に行っているし、確かに古いなぁとは思ったけど、そもそも私とお母さんが今住んでいる家だってそんなに新しくも綺麗でもないから、環境はそこまで大きく変わらない気がする。学校からもけっこう近かったし、通学にもきっと困らないはず。強いて言えば、お婆さん以外の入居者さんに会えていないことくらいだろうか。ご近所付き合いってちょっと難しそうだから、そこが心配。私が借りるお部屋は二階だから、真下の人に迷惑かけないようにしないと。

「なにかあったら頼るんだよ。あたしでも彩織でも、どっちでもいいからさ」
「うんうん。そうだ、心ちゃん、うちでアルバイトしない? 人手が足りなくて困ってるの。従業員割引とかもあるよぉ?」
「ちょっと彩織ってば。心、うちでもいいんだよ? まかないだって出すし、お土産屋さんより大変だろうけど、バイト代だって弾むし」
「あ、あはは。考えておくよ。もともとアルバイトはするつもりだったから」
「うんうん。考えておくだけでも良いからね」

 彩織ちゃんの圧がすごくて思わず驚いてしまった。悪気はないんだろうし、誘ってくれて嬉しかったけど、せっかくなら……ゆもりちゃんと働けたら楽しそうだなぁ。もちろん、大変そうでもあるけれど。

「ねーゆもり、今日このまま泊まっていっていい?」
「え? もう、仕方ないなあ。この部屋なら、だぞ?」
「じゃ、じゃあ……私も! 三人で一緒に寝たい」
「心もか? うーん、心からは先に宿代もらってるのに……。女将に相談しとくね」

 返金がぁとか料理がぁとかゆもりちゃんはそういうところ真面目だなぁと思いつつ、パジャマパーティーみたいなことが出来るのがすごく楽しみになってきている。彩織ちゃんは一旦、着替えとかを取りに戻るらしい。ゆもりちゃんも出て行っちゃったし、一人でどうしようかな。
 ゆもりちゃんの部屋は結構広々としていて、たぶんベッドじゃなくてお布団で寝ていて、ちゃんと出し入れしているからなんだと思う。静かにしていると宿の活気がここまで届いてくる。

「お待たせ~」
「おかえりなさい」

 ほどなくしてゆもりちゃんが戻ってきた。

「あれ、一人?」
「彩織ちゃんは荷物取りに行ってます」
「そっか。彩織らしいな。まだOKって言ってないのに。まぁ、OKなんだけど」

 そう言った言葉から、どれだけ彩織ちゃんとの付き合いが長いかを感じさせられる。もし、ここで一緒に働いたら……もっと、ゆもりちゃんと仲良くなれるかなあ。

「ん、心? どうかした?」
「違うの。アルバイトどうしようかなって思って。でも、まだ合格発表ももらってないのに、気が早いなぁって」
「それもそうだけど、きっと大丈夫だよ。あたしには分かる」

 ゆもりちゃんのその笑顔に、私も笑顔で頷いた。三人で過ごす高校生活……今からすごく楽しみだ。
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