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序章
#03
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征華女子の寮は本館と別館があって、本館は二つの棟でできている。一年生と三年生が住む棟と、二年生と四年生が住む棟だ。これは一年生と三年生が戦姉妹の契りを交わす風習によるもので、歓迎会も三年生が一年生を迎えつつ妹候補を選定するための集まりなのだ。
「なかなか緊張するよね。一年生同士でもまだ打ち解けていないってのに、上級生とお話ししなきゃいけないんだものね」
歓迎会は寮の食堂で行われるが、前方にはちょっとしたステージが設営されていて三年生の代表者が挨拶をしている。戦姉妹の重要性とか、寮の規則とか、なんかそういうこと。
「では、好きに歓談してくれたまえ」
きれいな銀髪をなびかせてステージを降りる。なんていうか、強者のふるまいっていう感じだ。どこかで見たような気がするのだけれど……あ。
「あの人、私の記憶違いじゃなければ片桐ハイネ先輩のはず。序列十五位くらいの大剣使い」
「恵鈴ちゃん詳しいね」
「新聞に載るくらいの女傑よ。あの人の妹になったら生き残りやすいでしょうね」
自分にも他人にも厳しい方だから、きっとある程度の実力がなければ妹にはしないんだろうなぁ。
「そういえば、伊澄って武器は何を使うんだっけ?」
「え? 槍だよ。恵鈴ちゃんは?」
「私は剣。お姉さまにするなら、同じ武器種の人がいいと思うよ。まぁ、魔法が主軸なら話は別だけど」
お姉さまとはツーマンセルで動くことも多い。短所を補い合うのも大事だけれど、長所を伸ばしあえる戦姉妹が望ましいと、個人的には思っている。
「そういえば、伊澄のルームメイトどんな人たち?」
「うーん。みんな強そうな人、かな。あそこにいる赤毛の子が石橋千奈ちゃん。魔法は苦手らしいけど刀が得意らしいよ。千奈ちゃんと一緒にいる青っぽい髪の子が市来澪ちゃん。水属性と薙刀が得意で、千奈ちゃんとは幼馴染らしいよ」
市来家といえば大きな商家のはず。なるほどね、お嬢様と護衛って感じ。にしても……。
「なんか、らしいが多くない? あまり打ち解けてないの?」
「そ、そんなことはないよ? ほら、まだ実戦とかないし。よく分からない部分もあるでしょう? あ、あっちにいる小柄な子が魔導器使いの森カノンちゃん。で、あそこで人に囲まれているのがうちの部屋長、清都聖來ちゃん」
部屋長ってことだから、きっと清都さんが一番の実力者。あの主従もかなり武術を訓練していそう。魔導器使いの実力は測りがたいけれど、なんていうか伊澄が一番弱そう。
「今、失礼なこと考えてるでしょ? わたしが一番弱そうとか、そんなこと」
「あはは。思ってないよ。どっちかっていうと……そう、みんな巨乳だなぁと思って」
「え、えぇ……」
素直に白状してもよかったけど、なんとなく話を逸らすことにした。実際、みんなスタイルがいい。とりわけ森さんはロリ巨乳だ。なかなか興味がある。
「もう、どういう着眼点してるのよ。……ふぅ。聖來ちゃんとこ行ってくる。ちょっとは三年生とも話さなきゃ」
「ごめんごめん。じゃ、行ってらっしゃい。こっちも適当にぶらつくからさ」
そういって伊澄を送り出し、私もとっつきやすそうな三年生を探すことにした。
まあ結論から言えば、そんなあっさりお姉さまになってくれる人は見つからなかったのだけれど。
「なかなか緊張するよね。一年生同士でもまだ打ち解けていないってのに、上級生とお話ししなきゃいけないんだものね」
歓迎会は寮の食堂で行われるが、前方にはちょっとしたステージが設営されていて三年生の代表者が挨拶をしている。戦姉妹の重要性とか、寮の規則とか、なんかそういうこと。
「では、好きに歓談してくれたまえ」
きれいな銀髪をなびかせてステージを降りる。なんていうか、強者のふるまいっていう感じだ。どこかで見たような気がするのだけれど……あ。
「あの人、私の記憶違いじゃなければ片桐ハイネ先輩のはず。序列十五位くらいの大剣使い」
「恵鈴ちゃん詳しいね」
「新聞に載るくらいの女傑よ。あの人の妹になったら生き残りやすいでしょうね」
自分にも他人にも厳しい方だから、きっとある程度の実力がなければ妹にはしないんだろうなぁ。
「そういえば、伊澄って武器は何を使うんだっけ?」
「え? 槍だよ。恵鈴ちゃんは?」
「私は剣。お姉さまにするなら、同じ武器種の人がいいと思うよ。まぁ、魔法が主軸なら話は別だけど」
お姉さまとはツーマンセルで動くことも多い。短所を補い合うのも大事だけれど、長所を伸ばしあえる戦姉妹が望ましいと、個人的には思っている。
「そういえば、伊澄のルームメイトどんな人たち?」
「うーん。みんな強そうな人、かな。あそこにいる赤毛の子が石橋千奈ちゃん。魔法は苦手らしいけど刀が得意らしいよ。千奈ちゃんと一緒にいる青っぽい髪の子が市来澪ちゃん。水属性と薙刀が得意で、千奈ちゃんとは幼馴染らしいよ」
市来家といえば大きな商家のはず。なるほどね、お嬢様と護衛って感じ。にしても……。
「なんか、らしいが多くない? あまり打ち解けてないの?」
「そ、そんなことはないよ? ほら、まだ実戦とかないし。よく分からない部分もあるでしょう? あ、あっちにいる小柄な子が魔導器使いの森カノンちゃん。で、あそこで人に囲まれているのがうちの部屋長、清都聖來ちゃん」
部屋長ってことだから、きっと清都さんが一番の実力者。あの主従もかなり武術を訓練していそう。魔導器使いの実力は測りがたいけれど、なんていうか伊澄が一番弱そう。
「今、失礼なこと考えてるでしょ? わたしが一番弱そうとか、そんなこと」
「あはは。思ってないよ。どっちかっていうと……そう、みんな巨乳だなぁと思って」
「え、えぇ……」
素直に白状してもよかったけど、なんとなく話を逸らすことにした。実際、みんなスタイルがいい。とりわけ森さんはロリ巨乳だ。なかなか興味がある。
「もう、どういう着眼点してるのよ。……ふぅ。聖來ちゃんとこ行ってくる。ちょっとは三年生とも話さなきゃ」
「ごめんごめん。じゃ、行ってらっしゃい。こっちも適当にぶらつくからさ」
そういって伊澄を送り出し、私もとっつきやすそうな三年生を探すことにした。
まあ結論から言えば、そんなあっさりお姉さまになってくれる人は見つからなかったのだけれど。
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