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第一話 憧れた風景
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「――ちゃん、柚花里ちゃん、起きて」
ん? あ、今日から高校生なんだ。起きなきゃ…。あれ? 私……ベッドで寝たっけ? というか、ここ私の部屋かな? なんか……違うような……。
「起きたかな? まったく、私の妹はこんなにお寝坊さんだったかなぁ」
女の人の声……聞き覚えのある……ん? 妹って言ってた。兄はいるけど……姉?
「朝御飯できてるよ。もぅ、急がなきゃ遅刻するよ?」
とうとう部屋の扉が開けられて、一人の女性が顔を覗かせる。その人の顔は、あまりに見覚えがありすぎた。
「汐里ちゃん! な、なんでここに?」
彼女の名前は茜屋汐里といって、私が昨日まで徹夜でやっていたゲーム【恋愛モーメント ~君を幸せにすると何度でも誓う~】に登場する主人公の四歳年上の姉である人物だ。実は終盤で血のつながりがないことが判明するんだけど……。
ちなみに、ゲームでの主人公の名前は縁。由来は私の名前、柚花里の漢字違いの縁から。
結構気に入って毎回使っていたんだけどなぁ。ていうか、今はそんなこと考えてる場合じゃなくて…。
「なんでって? 大学ならまだ休みだし……ま、いいわ。寝ぼけていたのよ。さ、朝御飯にしましょ」
そう言って部屋を出ていく汐里ちゃん。あぁ、振り向く時に揺れるあの胸……たしか…Fだっけかな。別に、羨ましくないし。まぁ、さすが一部のメインヒロインより人気のあるサブキャラって感じ。リメイクしたら絶対に攻略キャラになるんだろうな……。って、そんなこと考えてる場合でもなくて……。ここが現実? 夢じゃない? これ……18禁のゲームだからな……私の貞操は大丈夫なのかな…。まあ、相手も乙女だ。気楽にいこう。夢かもしれないし。
「お腹が空いてちゃ話にならん。取り敢えず朝御飯だ!!」
あぁ、ゲーム画面で憧れた朝食の風景だ……。上げ膳据え膳だよ。今まで朝から晩まで家事をしてきた私には嬉しすぎる。ほっかほっかのご飯に、豆腐とお揚げの味噌汁。卵焼きとかまぼこ……。いい朝だ。
「いただきます!!」
まずは味噌汁、あぁ……美味しい。染みるわぁ。次は卵焼きとご飯を同時に。こっちも美味しい! ほんのり甘い卵焼きが、ちょうどいい! ご飯もちょっぴり柔らかめで、美味しく炊き上がってる。さすが汐里ちゃんだぁ。
「私に義兄ができたら、その人は世界一のラッキーボーイだろうね」
不意に口をついた一言に、汐里ちゃんが頬を染める。もう、初々しいんだから! 理性が揺らぐね。
「柚花里ちゃんだって、美味しい洋食作ってくれるでしょう? お菓子も。私は……朝御飯くらいしかね?」
あれ? こんな会話はゲームにはない。そもそも、縁は料理ができない。つまり、この世界は私と縁が入れ替わった世界? それが少しずつ変化をもたらしているのね。まあ、もとから汐里ちゃんの料理は和食ばかりだったけど。
「こんな朝御飯なら、一日中幸せだもん。ご馳走さま」
「ありがとうね柚花里ちゃん。お粗末様です」
なんとも甘酸っぱい空間から逃げるように、私は制服に着替えるためにリビングを出た。部屋に吊るされていた制服の内ポケットには、茜屋柚花里の名前が可愛らしい字で書かれていた。きっと、汐里ちゃんの字だろう。
コスプレで着ようと何度も思った、私立しりつ清柏学園高校の制服が……今、目の前にある。白を基調としたセーラー服で、スカートは青のチェックだ。所々に緑のラインが入っているのもお洒落だ。似合うか少しだけ疑問を持ちながらも、姿見の前に立つ。
「よし、いいじゃん!」
カバンを持って部屋を出る。そのまま階段を駆け降りて玄関に向かう。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
ある意味いい高校生活を送れそうな気がする! 現実の地味な公立高校より、ゲーム内の私立の方が楽しそうじゃん!
ん? あ、今日から高校生なんだ。起きなきゃ…。あれ? 私……ベッドで寝たっけ? というか、ここ私の部屋かな? なんか……違うような……。
「起きたかな? まったく、私の妹はこんなにお寝坊さんだったかなぁ」
女の人の声……聞き覚えのある……ん? 妹って言ってた。兄はいるけど……姉?
「朝御飯できてるよ。もぅ、急がなきゃ遅刻するよ?」
とうとう部屋の扉が開けられて、一人の女性が顔を覗かせる。その人の顔は、あまりに見覚えがありすぎた。
「汐里ちゃん! な、なんでここに?」
彼女の名前は茜屋汐里といって、私が昨日まで徹夜でやっていたゲーム【恋愛モーメント ~君を幸せにすると何度でも誓う~】に登場する主人公の四歳年上の姉である人物だ。実は終盤で血のつながりがないことが判明するんだけど……。
ちなみに、ゲームでの主人公の名前は縁。由来は私の名前、柚花里の漢字違いの縁から。
結構気に入って毎回使っていたんだけどなぁ。ていうか、今はそんなこと考えてる場合じゃなくて…。
「なんでって? 大学ならまだ休みだし……ま、いいわ。寝ぼけていたのよ。さ、朝御飯にしましょ」
そう言って部屋を出ていく汐里ちゃん。あぁ、振り向く時に揺れるあの胸……たしか…Fだっけかな。別に、羨ましくないし。まぁ、さすが一部のメインヒロインより人気のあるサブキャラって感じ。リメイクしたら絶対に攻略キャラになるんだろうな……。って、そんなこと考えてる場合でもなくて……。ここが現実? 夢じゃない? これ……18禁のゲームだからな……私の貞操は大丈夫なのかな…。まあ、相手も乙女だ。気楽にいこう。夢かもしれないし。
「お腹が空いてちゃ話にならん。取り敢えず朝御飯だ!!」
あぁ、ゲーム画面で憧れた朝食の風景だ……。上げ膳据え膳だよ。今まで朝から晩まで家事をしてきた私には嬉しすぎる。ほっかほっかのご飯に、豆腐とお揚げの味噌汁。卵焼きとかまぼこ……。いい朝だ。
「いただきます!!」
まずは味噌汁、あぁ……美味しい。染みるわぁ。次は卵焼きとご飯を同時に。こっちも美味しい! ほんのり甘い卵焼きが、ちょうどいい! ご飯もちょっぴり柔らかめで、美味しく炊き上がってる。さすが汐里ちゃんだぁ。
「私に義兄ができたら、その人は世界一のラッキーボーイだろうね」
不意に口をついた一言に、汐里ちゃんが頬を染める。もう、初々しいんだから! 理性が揺らぐね。
「柚花里ちゃんだって、美味しい洋食作ってくれるでしょう? お菓子も。私は……朝御飯くらいしかね?」
あれ? こんな会話はゲームにはない。そもそも、縁は料理ができない。つまり、この世界は私と縁が入れ替わった世界? それが少しずつ変化をもたらしているのね。まあ、もとから汐里ちゃんの料理は和食ばかりだったけど。
「こんな朝御飯なら、一日中幸せだもん。ご馳走さま」
「ありがとうね柚花里ちゃん。お粗末様です」
なんとも甘酸っぱい空間から逃げるように、私は制服に着替えるためにリビングを出た。部屋に吊るされていた制服の内ポケットには、茜屋柚花里の名前が可愛らしい字で書かれていた。きっと、汐里ちゃんの字だろう。
コスプレで着ようと何度も思った、私立しりつ清柏学園高校の制服が……今、目の前にある。白を基調としたセーラー服で、スカートは青のチェックだ。所々に緑のラインが入っているのもお洒落だ。似合うか少しだけ疑問を持ちながらも、姿見の前に立つ。
「よし、いいじゃん!」
カバンを持って部屋を出る。そのまま階段を駆け降りて玄関に向かう。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
ある意味いい高校生活を送れそうな気がする! 現実の地味な公立高校より、ゲーム内の私立の方が楽しそうじゃん!
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