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#3 咲いた花はいずれ
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昨日の時点でクラス割りが発表されている一年生と違い、二年生は今日がクラス割りの発表となる。大きめの掲示板に張り出された紙を見ながら、自分の名前を探す。
「……あった、三組だ。夜空も三組だな」
「そ! そうですわね!!」
声を上擦らせながら反応する夜空。にしても暁海の名前は……見当たらないな。
「暁海は何組になったんだ?」
「私は一組みたい。すごく久しぶりに違うクラスだね。五年ぶりくらい?」
「六年ぶりじゃないか? 小学校の修学旅行は一緒の班だったじゃないか」
「そっか。別々だったのはみどりの学校だね」
中学三年間はずっと同じクラスだったから、本当に久々な感じがする。少し寂しい。
「ほら、昔話に花なんて咲かせてないで教室に行くわよ。ここにとどまっては邪魔だもの」
夜空に引きずられるように掲示板から離れる。……暁海とも離された形だ。
昇降口で靴を脱いで、持ってきた上履きに履き替える。四階建て校舎の三階が二年生のフロアだ。
教室は既に半分くらい席が埋まっている状況だった。さっき掲示板で見た出席番号の席に座る。うちの学校は一クラスが六×六の三十六人で、それが六クラス。一応、定員は二百二十人なんだが、ここ数年は少子化の波もあってかちょっとだけ割っている。受験の時の倍率は一を超えていたはずなんだがなぁ。やはり近場に魅力的な私学があると、そっちに流れがちなんだなあ。
「また隣同士だな」
新郷と初野、微妙に遠い出席番号ということで俺たちの席は隣同士だ。十八番と二十四番で列の一番後ろ、他に離す相手もいないから夜空と話すことにした。
「まったく、困ったものね。わたくしに迷惑をかけるんじゃありませんよ? ……まぁ、教科書を忘れたとかそういう困ったことがあれば、頼りなさい。見せてあげてもいいわ」
ほんのり迷惑そうで、こころなしか頬が紅潮している。夜空が照れている。
ベタなラブコメ主人公じゃ風邪とか体調不良を疑いそうだが、俺は違う。別に鋭いなんて思っちゃいないが、夜空の好意はわかりやすすぎる。きっと本人しか隠せているなんて思っていないだろう。生まれ育った環境によるのかは分からないけれど、夜空は真っ直ぐすぎる。まぁ、ツンデレ気質ではあるんだけど。
俺は夜空の好意を分かっているものの、宙ぶらりんな状況に甘えている。だって、明確に告白されたわけじゃないのだから。ただ、俺の暁海への好意もきっと自分じゃ分からないくらい明け透けだろうから……それでも俺に好意を寄せてくれているなんて、と思う時もある。まぁ、なかよくなるだけに留まらないくらい去年は色々あったからな。いや、今は思い返す時じゃない。追憶は趣味じゃないし、なにより読み返すより読み進める方が俺の主義にあう。
「そういやさ、どうして夜空は快晴館に来たんだ? ぶっちゃけ普通の学校だろう?」
「そうね……わたくしはそれこそ星花女子も候補にしておりましたわ。ただ、ライバル企業の娘がそこの中等部からいると聞いてね、それでやめたのよ。初野寿杜みたいな庶民でも聞いたことくらいあるんじゃない、御所園コンツェルンって」
「あぁ……。でかい不動産系の会社だってことは分かる。そっか、夜空の家は新郷開発っていうそれこそ不動産とか輸入家具系の商社だったな」
「橋立女子商業高校がここに併合されて、商業科も廃止になってしまったけれど……まぁ、ここにして良かったと今は思っているわ。で、初野寿杜や双葉暁海はどうしてこの学校に?」
「まぁ、俺とか暁海は単純に家が近かったから、だな。橋立二中の校区つったらこの辺だし。暁海と別々のクラスなんて小中高通じて三度目かなあ。なんだかなぁ」
「ふぅん」
夜空は興味なさそうな返事をよこしてきた。暁海とクラスが違うのは少し残念だが、夜空がいてくれて良かった。他にも多少は見知った顔もいることだしな。
それに暁海に関しては、家が隣だという絶対的なアドバンテージがある。幼馴染であることも揺るぎないし、胃袋だって掴んでいる。一時期、幼馴染ヒロインは負けフラグなんて言われていた。だが今は違う。幼馴染同士が結ばれるエンディングが認められているのだから、俺はかすかな可能性にかけ続ける。
とはいえ……一つ不安になることがある。夜空ほど分かりやすくなくてもいいが、暁海が俺に好意的な態度を見せたことがあるだろうか? いや、ない。……どうして反語なんだろうか。好意的と言っても家族に見せるような親愛の情じゃなくて男女の関係を望むような……ずっとお味噌汁を作って欲しいとか、旦那さんになって欲しいとか、ちょっとした冗談だとしても暁海はそんなことを口にしたことがない。……なんか、ほんのり悲しくなってきたし、夜空から向けられる奇っ怪なモノを見るような視線がちょっと辛い。
「本当に変な男ね。初野寿杜」
「……変で悪かったな」
ちょっと考えていることが表情に出やすい程度で、あとはそこまで変じゃないと思いたいのだがなぁ。
「そういえば、双葉暁海のクラスに転校生が来るそうね」
「はぁ? え、なんで分かったんだ?」
正門で会ってからはずっと一緒にいるはずだが。
「一組のクラス名簿の一番下に見知らぬ名前があったのよ。地紋泰斗、だったかしら」
「……お、おう。でも、それをどうして俺に?」
「なんとなく、よ。知らなさそうな情報を庶民に教えてあげようという、言わばノブレス・オブリージュよ」
いや、それをノブレス・オブリージュと呼ぶのはいささかに傲慢がすぎるだろうに……。
「……あった、三組だ。夜空も三組だな」
「そ! そうですわね!!」
声を上擦らせながら反応する夜空。にしても暁海の名前は……見当たらないな。
「暁海は何組になったんだ?」
「私は一組みたい。すごく久しぶりに違うクラスだね。五年ぶりくらい?」
「六年ぶりじゃないか? 小学校の修学旅行は一緒の班だったじゃないか」
「そっか。別々だったのはみどりの学校だね」
中学三年間はずっと同じクラスだったから、本当に久々な感じがする。少し寂しい。
「ほら、昔話に花なんて咲かせてないで教室に行くわよ。ここにとどまっては邪魔だもの」
夜空に引きずられるように掲示板から離れる。……暁海とも離された形だ。
昇降口で靴を脱いで、持ってきた上履きに履き替える。四階建て校舎の三階が二年生のフロアだ。
教室は既に半分くらい席が埋まっている状況だった。さっき掲示板で見た出席番号の席に座る。うちの学校は一クラスが六×六の三十六人で、それが六クラス。一応、定員は二百二十人なんだが、ここ数年は少子化の波もあってかちょっとだけ割っている。受験の時の倍率は一を超えていたはずなんだがなぁ。やはり近場に魅力的な私学があると、そっちに流れがちなんだなあ。
「また隣同士だな」
新郷と初野、微妙に遠い出席番号ということで俺たちの席は隣同士だ。十八番と二十四番で列の一番後ろ、他に離す相手もいないから夜空と話すことにした。
「まったく、困ったものね。わたくしに迷惑をかけるんじゃありませんよ? ……まぁ、教科書を忘れたとかそういう困ったことがあれば、頼りなさい。見せてあげてもいいわ」
ほんのり迷惑そうで、こころなしか頬が紅潮している。夜空が照れている。
ベタなラブコメ主人公じゃ風邪とか体調不良を疑いそうだが、俺は違う。別に鋭いなんて思っちゃいないが、夜空の好意はわかりやすすぎる。きっと本人しか隠せているなんて思っていないだろう。生まれ育った環境によるのかは分からないけれど、夜空は真っ直ぐすぎる。まぁ、ツンデレ気質ではあるんだけど。
俺は夜空の好意を分かっているものの、宙ぶらりんな状況に甘えている。だって、明確に告白されたわけじゃないのだから。ただ、俺の暁海への好意もきっと自分じゃ分からないくらい明け透けだろうから……それでも俺に好意を寄せてくれているなんて、と思う時もある。まぁ、なかよくなるだけに留まらないくらい去年は色々あったからな。いや、今は思い返す時じゃない。追憶は趣味じゃないし、なにより読み返すより読み進める方が俺の主義にあう。
「そういやさ、どうして夜空は快晴館に来たんだ? ぶっちゃけ普通の学校だろう?」
「そうね……わたくしはそれこそ星花女子も候補にしておりましたわ。ただ、ライバル企業の娘がそこの中等部からいると聞いてね、それでやめたのよ。初野寿杜みたいな庶民でも聞いたことくらいあるんじゃない、御所園コンツェルンって」
「あぁ……。でかい不動産系の会社だってことは分かる。そっか、夜空の家は新郷開発っていうそれこそ不動産とか輸入家具系の商社だったな」
「橋立女子商業高校がここに併合されて、商業科も廃止になってしまったけれど……まぁ、ここにして良かったと今は思っているわ。で、初野寿杜や双葉暁海はどうしてこの学校に?」
「まぁ、俺とか暁海は単純に家が近かったから、だな。橋立二中の校区つったらこの辺だし。暁海と別々のクラスなんて小中高通じて三度目かなあ。なんだかなぁ」
「ふぅん」
夜空は興味なさそうな返事をよこしてきた。暁海とクラスが違うのは少し残念だが、夜空がいてくれて良かった。他にも多少は見知った顔もいることだしな。
それに暁海に関しては、家が隣だという絶対的なアドバンテージがある。幼馴染であることも揺るぎないし、胃袋だって掴んでいる。一時期、幼馴染ヒロインは負けフラグなんて言われていた。だが今は違う。幼馴染同士が結ばれるエンディングが認められているのだから、俺はかすかな可能性にかけ続ける。
とはいえ……一つ不安になることがある。夜空ほど分かりやすくなくてもいいが、暁海が俺に好意的な態度を見せたことがあるだろうか? いや、ない。……どうして反語なんだろうか。好意的と言っても家族に見せるような親愛の情じゃなくて男女の関係を望むような……ずっとお味噌汁を作って欲しいとか、旦那さんになって欲しいとか、ちょっとした冗談だとしても暁海はそんなことを口にしたことがない。……なんか、ほんのり悲しくなってきたし、夜空から向けられる奇っ怪なモノを見るような視線がちょっと辛い。
「本当に変な男ね。初野寿杜」
「……変で悪かったな」
ちょっと考えていることが表情に出やすい程度で、あとはそこまで変じゃないと思いたいのだがなぁ。
「そういえば、双葉暁海のクラスに転校生が来るそうね」
「はぁ? え、なんで分かったんだ?」
正門で会ってからはずっと一緒にいるはずだが。
「一組のクラス名簿の一番下に見知らぬ名前があったのよ。地紋泰斗、だったかしら」
「……お、おう。でも、それをどうして俺に?」
「なんとなく、よ。知らなさそうな情報を庶民に教えてあげようという、言わばノブレス・オブリージュよ」
いや、それをノブレス・オブリージュと呼ぶのはいささかに傲慢がすぎるだろうに……。
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