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#4 揺らぐ心と春の風
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そんなこんなで、二年生にあって初めての一日は滞りなく過ぎていった。実力テストもまあ、俺の実力ならこのくらいかなっていう程度には解けた。春休みの課題なんて春休みの中盤から終盤にかけてやるものなんだから、ある程度覚えていて当然っていう気はするのだが。
「ほら、初野寿杜。昇降口まで一緒に帰りますわよ」
夜空に連れられるように昇降口まで階段を下っていく。夜空と仲が良いことで周囲の男子からやっかみを受ける……なんていうことは無いんだよな。多分だけど、夜空が俺への好意をダダ漏れにしてしまっていることと、他の男子じゃ手をつけられない雰囲気を醸し出しているからなのだろうが。
「むむ! お兄ちゃんから離れなさいよ乳デカ女!!」
昇降口には暁海と寿理が既にいた。俺たちを見るなり威嚇し始める寿理をなだめつつ、正門までは四人で向かうことにした。そうして黒塗りで長いあの高級車に乗り込む夜空を見送ってから俺たちも帰路に就く。いやぁ、あの車は一回くらい乗ってみたいな。ラノベ的展開で言うなら家にお呼ばれなんだろうけど……まぁ、なかなか無いよな。
夜空を見送ったら俺たちも家路につく。ひとまず俺のクラスの雰囲気を話して、次の話題は敢えて暁海のクラスに入った転入生のこと。
「なぁ、暁海のクラスに来た転入生ってどんなヤツなんだ? 男子だって聞いたけど」
「あぁ、うん。なんか、家の都合でミカガクやめて快晴館に来たらしいよ。そうそう、私その人に校内を案内するから明日は一緒に帰れない」
衝撃は二つ。あのミカガクからの転校生だということと、明日は一緒に帰れないということ。いやそもそも、どうして暁海がそいつの案内をするんだ?
「学級委員になったんだあ。何年ぶりだっけ?」
「中一以来か。まぁ、暁海はしっかりして見えるからな。ていうか、男子の案内くらい男子がやればいいじゃんな」
「まぁ、ほら男子の学級委員は去年同じクラスだった上遠野君なんだけどさ」
上遠野とは確かに俺も去年同じクラスで、そこそこよく話す仲だ。所属している部活は……あぁ、陸上部は忙しいからな。仕方ない、のか?
「それってさ、俺と寿理が一緒にいたっていいだろう?」
直感でしかないが、どうしても暁海とその転校生を二人きりにすることに抵抗がある。どうにかしてそれを阻止したい。けれど暁海に俺の思いは通じない。
「いいよそこまでしなくても。だって寿杜、夕ご飯の準備だってあるでしょう? それとも……」
それとも私のことが好きなの? そう言ってくれたら俺はすぐに頷くというのに。
「スーパーでお一人様いくつまで、みたいな売り出しでもあるの?」
「そうじゃ、ないんだけど……」
寿理に助けを求めるが、姉のように慕っている暁海を実際に義姉にしたいわけではない寿理は、知らん顔を決め込んでいる。
「はあ、せっかく明日の夕飯はお前の好物のオムライスを作るつもりだったんだがな」
「え、そうだったの? じゃあ、極力急ぐよ。ねぇ、今日は何作るの?」
「唐揚げだよ。昨日、鶏肉が安かったからな」
意図せず二人きりの時間を削減することは出来た。それもそうか、学校を案内する程度で夕飯の時間がずれるほどの時間はかからない。適当にやってくれればそれでいいが、根が真面目な暁海のことだから……ちゃんと説明しながら紹介するんだろうな。モヤモヤする……。
「ていうかさ、転校生の人、どんな感じなの?」
そうだ、問題はそこだ。学校案内のことはさておき、どういったやつなのかは俺も気になる。もし暁海とそういう感じになりそうなヤツなら……なんとしてでも阻止しないと。
「どんな感じ、かあ。寿杜とはけっこう違う感じだよ。ぶっきらぼう気味だし、口数も少ない。背が高くて、がっしりしている。俳優さんとかそんな感じ」
そいつのことをにこやかに語る暁海に、心がざわつく。なんで、楽しそうな表情をするんだろう。それに俺……なんで顔すら見たことないやつに嫉妬しているんだろう。惨めすぎるだろう。別に俺、まだ暁海の何でも無いじゃないか。
「寿杜?」
「あ? どうかしたか?」
「いや、なんか早足だなって思ってさ」
落ち着かない心が足にも影響していたらしい。考えてみれば、暁海がどういった男が好きかすら知らない。それがますます心をざわつかせる。その程度で揺らぐ自分が情けなくて、惨めで、そんな自分を見られたくないって思ってしまった。
「ちょ、ちょっとドラマの録画したか気になってさ。それに唐揚げの仕込みもあるし先、急ぐから寿理と二人でゆっくり帰って来い。風呂の仕度もちゃんとしておくから」
「お、お兄ちゃん! 今日の当番私なんだけどー!」
寿理の困惑する声をよそに俺は半ば走るように家路を急いだ。そうそう走ることなんてないから、直ぐに息が苦しくなるけれど……かえって心理的な苦しさがなくなるから俺は懸命に家まで走った。学校から近いのは、幸か不幸か……。
「ふぅ……シャワー浴びながら風呂洗っちまうか」
揚げ物をして汗をかくだろうが、暁海の前では汗臭いままじゃ嫌なんだ。
「ほら、初野寿杜。昇降口まで一緒に帰りますわよ」
夜空に連れられるように昇降口まで階段を下っていく。夜空と仲が良いことで周囲の男子からやっかみを受ける……なんていうことは無いんだよな。多分だけど、夜空が俺への好意をダダ漏れにしてしまっていることと、他の男子じゃ手をつけられない雰囲気を醸し出しているからなのだろうが。
「むむ! お兄ちゃんから離れなさいよ乳デカ女!!」
昇降口には暁海と寿理が既にいた。俺たちを見るなり威嚇し始める寿理をなだめつつ、正門までは四人で向かうことにした。そうして黒塗りで長いあの高級車に乗り込む夜空を見送ってから俺たちも帰路に就く。いやぁ、あの車は一回くらい乗ってみたいな。ラノベ的展開で言うなら家にお呼ばれなんだろうけど……まぁ、なかなか無いよな。
夜空を見送ったら俺たちも家路につく。ひとまず俺のクラスの雰囲気を話して、次の話題は敢えて暁海のクラスに入った転入生のこと。
「なぁ、暁海のクラスに来た転入生ってどんなヤツなんだ? 男子だって聞いたけど」
「あぁ、うん。なんか、家の都合でミカガクやめて快晴館に来たらしいよ。そうそう、私その人に校内を案内するから明日は一緒に帰れない」
衝撃は二つ。あのミカガクからの転校生だということと、明日は一緒に帰れないということ。いやそもそも、どうして暁海がそいつの案内をするんだ?
「学級委員になったんだあ。何年ぶりだっけ?」
「中一以来か。まぁ、暁海はしっかりして見えるからな。ていうか、男子の案内くらい男子がやればいいじゃんな」
「まぁ、ほら男子の学級委員は去年同じクラスだった上遠野君なんだけどさ」
上遠野とは確かに俺も去年同じクラスで、そこそこよく話す仲だ。所属している部活は……あぁ、陸上部は忙しいからな。仕方ない、のか?
「それってさ、俺と寿理が一緒にいたっていいだろう?」
直感でしかないが、どうしても暁海とその転校生を二人きりにすることに抵抗がある。どうにかしてそれを阻止したい。けれど暁海に俺の思いは通じない。
「いいよそこまでしなくても。だって寿杜、夕ご飯の準備だってあるでしょう? それとも……」
それとも私のことが好きなの? そう言ってくれたら俺はすぐに頷くというのに。
「スーパーでお一人様いくつまで、みたいな売り出しでもあるの?」
「そうじゃ、ないんだけど……」
寿理に助けを求めるが、姉のように慕っている暁海を実際に義姉にしたいわけではない寿理は、知らん顔を決め込んでいる。
「はあ、せっかく明日の夕飯はお前の好物のオムライスを作るつもりだったんだがな」
「え、そうだったの? じゃあ、極力急ぐよ。ねぇ、今日は何作るの?」
「唐揚げだよ。昨日、鶏肉が安かったからな」
意図せず二人きりの時間を削減することは出来た。それもそうか、学校を案内する程度で夕飯の時間がずれるほどの時間はかからない。適当にやってくれればそれでいいが、根が真面目な暁海のことだから……ちゃんと説明しながら紹介するんだろうな。モヤモヤする……。
「ていうかさ、転校生の人、どんな感じなの?」
そうだ、問題はそこだ。学校案内のことはさておき、どういったやつなのかは俺も気になる。もし暁海とそういう感じになりそうなヤツなら……なんとしてでも阻止しないと。
「どんな感じ、かあ。寿杜とはけっこう違う感じだよ。ぶっきらぼう気味だし、口数も少ない。背が高くて、がっしりしている。俳優さんとかそんな感じ」
そいつのことをにこやかに語る暁海に、心がざわつく。なんで、楽しそうな表情をするんだろう。それに俺……なんで顔すら見たことないやつに嫉妬しているんだろう。惨めすぎるだろう。別に俺、まだ暁海の何でも無いじゃないか。
「寿杜?」
「あ? どうかしたか?」
「いや、なんか早足だなって思ってさ」
落ち着かない心が足にも影響していたらしい。考えてみれば、暁海がどういった男が好きかすら知らない。それがますます心をざわつかせる。その程度で揺らぐ自分が情けなくて、惨めで、そんな自分を見られたくないって思ってしまった。
「ちょ、ちょっとドラマの録画したか気になってさ。それに唐揚げの仕込みもあるし先、急ぐから寿理と二人でゆっくり帰って来い。風呂の仕度もちゃんとしておくから」
「お、お兄ちゃん! 今日の当番私なんだけどー!」
寿理の困惑する声をよそに俺は半ば走るように家路を急いだ。そうそう走ることなんてないから、直ぐに息が苦しくなるけれど……かえって心理的な苦しさがなくなるから俺は懸命に家まで走った。学校から近いのは、幸か不幸か……。
「ふぅ……シャワー浴びながら風呂洗っちまうか」
揚げ物をして汗をかくだろうが、暁海の前では汗臭いままじゃ嫌なんだ。
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