中二病少女、異世界で最強の魔導師になる

楠富 つかさ

文字の大きさ
1 / 10

第一話 いざ異世界へ

しおりを挟む
「ねぇ、舞衣ってば~折角だから道場に行こうよ~」

 夕暮れが照らす帰り道に私の喧しい幼なじみの声が響く。

 私が名は石黒舞衣、またの名を『黒曜の魔導師―マイティ・オブシダイト』と言って異世界、ルキテリアでその名を轟かせた魔導師で数多の精霊を従えその力を顕現させる術を持つ唯一の存在。

「剣道強いのにもったいない!」

 そう、私は剣を振るっても強いが、剣は嫌いだ……野蛮だからな。だが、魔術は崇高で甘美……そして美しい。だから……。

「私は剣を学ぶつもりはない……魔術こそ全てだ」

 そんな会話が日常化してしまったことを残念に思う。
 何故に我が幼なじみは魔術を理解しようとしないのだろうか……。

「ときにユフィよ、次の試験への備えは万全か?」

 ユフィ……幼なじみの真名だ。現世では谷中唯燈と名乗っている。しかし、その本来の名は『日輪の聖騎士―ユフィ・ソルディバリー』で高貴なる血族ノーブリーブラッドに生まれし騎士の一族だ。しかし、如何せん知恵に欠ける……。

「ちょ、何で異世界の魔導師様が学校のテストを気にするのよ?」

 まったく、つまらぬことを気にする……。

「魔術に関わる以上、複雑な式を覚える必要がある。つまり、これしきの勉強をこなせんようじゃ現世にいる意味がない」

 唇を尖らせて不満げな顔をする幼なじみに歩幅を合わせ帰るのはいつものことだ。するとユフィは茜色の空を見上げて何かを指差した……。どうやら、大きな鴉を見付けたようだ。

「ねぇ、舞衣……いや、マイティ? あの鴉……こっちを……」

 私の表情を見て呼び方を改めるくらいには気を使えるのだが……。先程の鴉は優雅に旋回し我々の前に着地した。
ユフィの言う鴉……。ふむ、私の目の前に居座るとは……鳥にしては大物だな。漆黒の羽と瞳……。黒は元来、魔導師にとって好ましい色だ……。しかし、眼前にいる鴉からはそれ以上の感覚を覚える……。
すると、神秘的な女性の声が私の脳内に響いた……。

(お待ちしておりました。救世の魔導師様。その魔力で直ぐに分かりました……。貴女様こそ、私どもの世界を救う方であると)

「ほぉ、人語を解するとは……何者だ?」

 私は眼前の鴉に問う。そんな我にユフィが口をはさむ。

「ねぇマイティ、この声ってまさか……あの鴉から?」

 どうやら、ユフィにも聞こえているようだ。それを承知かどうかは分からんが、鴉は話を続ける。

(私は、こことは異なる世界から参りました。我らが王―アヴァン様の遣いにございます。私たちの世界、エレス=センティアは現在、数多の魔物に侵食され、危機を迎えています。私の使命はこの世界にいる尽きることの無い魔力を持つ魔導師をエレス=センティアに招くことです)

 どうやら、その魔導師こそ私のようだ。ふん、当然といったとこか。

「ふむ、つまり貴様は異世界からの使者で異世界、エレス=センティアを私に救えと言うのだな」
脳内に響く鴉の声を整理する。何だ、この高揚感は……。思わず笑みがこぼれる。

(その表情……エレス=センティアに来ていただけるとお見受けして宜しいですな?)

 最終確認を迫る鴉……案外と気の短いヤツだ。

「構わん、このまま行くぞ」

 隣を見ると未だに状況を理解できていないユフィが呆気にとられた顔をしている。

「ユフィ? なにをぼさっとしている。お前も行くんだぞ? おい鴉、こいつもエレス=センティアに連れていけるな? 優秀な騎士だぞ?」

(御意、少し眩しいので目を閉じていただけますか?)

 私がユフィに目を閉じろと言い、自分も目を閉じた直後……閃光が迸った。
 光が収まり目を開けると先程までの漆黒の鴉の姿はなく、銀色の羽を持つ巨大かつ神秘的な鳥が貫禄を漂わせながらそこにいた。

(この姿はこの世界では目立ちますから変化の魔術をかけておりました)

 求めてもいない説明を受けた後、我等の足元に魔方陣が展開される……。
 光に包まれ私たちの姿は帰路から消えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

処理中です...