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第二話 王との謁見
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「ここが私たちの住むエレス=センティアにございます」
例の鴉――カラウという名らしい――の展開した魔方陣で送られた先は城の謁見の間のようだった……否、実際にそうなのだろう。
後方には巨大な女神像が鎮座しており、本来の道である階段を昇ると、あの女神像が正面に出迎えてくれる配置になっているのだろう。微かに放つ神聖さ……信仰対象なのだろうか。
どんな動物の毛かは不明だが、赤い絨毯はローファー越しでも分かるフカフカ感。高い天井は豪奢ながらも繊細な装飾がなされており、巨大な女神像の手前にある荘厳な玉座に腰掛ける若い男、豪奢な衣装を身に纏い黄金の冠を戴くその男こそ、エレス=センティアの王であるアヴァンである。眉目秀麗に手足を付けたような人間で、端正な顔立ちに気品に満ちた仕草、まさに王者たる姿だった。
「お待ちしておりました、救世の魔導師様。まさか本当にお会いできるなんて……」
「ふむ、マイティ・オブシダイトだ。お会いできて光栄です、アヴァン王」
「うむ、こちらこそ光栄だ。さぁ爺や、アレを持ってきてくれ」
爺やと呼ばれた初老の老人――おそらく大臣だろう――は玉座の側からこれまた豪奢な縦長の箱を持ってきた。それを我が目の前に置くとアヴァンが何やら詠唱を始めた。
「これは、王家に伝わりし漆黒の宝玉を嵌め込んだ杖にございます。貴女様の魔力をより純度の高いものにするでしょう。長きに渡り正当なる継承者を待ちながら封印の眠りについていたのですが、今しがた封印を解きました。……おや、もう一人のお方は?」
アヴァンはユフィに気付き声をかけた。ユフィは一瞬だけ驚いてから姿勢を正し挨拶をした。
「え、えぇと……やな……じゃなくて、ユフィ・ソルディバリーです。剣士として彼女の旅に同行します」
ユフィがそう言うと、アヴァンは驚愕の表情を浮かべた。
「伝説の通りだ……。異界の魔導師と共に現れる剣士……爺やアレもすぐに用意してくれ」
大臣は謁見の間から外へ出ていった。
「アヴァン王、この箱を開けてよろしいのかな?」
私のために用意されたものであるようだが、念のため断りを入れておくか。アヴァンはすぐに許可をした。箱に手をかけ、ゆっくりと開ける。そこにあったのは、ちょうど私の身長と同じくらいの長さの杖、先端は豪奢な西洋剣の鍔のようにアーチを描いている。
全身に不思議な力が巡る感覚に満足していると、さっきの大臣が一振りの剣を持って戻ってきた。それをアヴァンに渡すと、ユフィに柄を向けた。
「ユフィ殿、この剣を抜いてみてくれまいか?」
ユフィが剣の柄に手を掛けると、一瞬だけ閃光が迸った。閃光が収まる頃にはユフィは鞘から剣を抜ききっていた。この場にいる全員が唖然としている中、おもむろにアヴァンが口を開いた。
「それは王家に伝わりし聖剣、銘をブライトスターという。抜くことができるということは、やはり……いや、何でもない。旅の資金や諸々の道具はこちらで揃えてある。それと、この指輪をお二人に。魔力強化の指輪で王家の紋が刻まれているから関所の兵に見せれば通してくれるだろう。では、まずは食事としよう」
アヴァンが片手を挙げると複数のメイドがどこからともなく現れ、私とユフィは謁見の間を後にした。
例の鴉――カラウという名らしい――の展開した魔方陣で送られた先は城の謁見の間のようだった……否、実際にそうなのだろう。
後方には巨大な女神像が鎮座しており、本来の道である階段を昇ると、あの女神像が正面に出迎えてくれる配置になっているのだろう。微かに放つ神聖さ……信仰対象なのだろうか。
どんな動物の毛かは不明だが、赤い絨毯はローファー越しでも分かるフカフカ感。高い天井は豪奢ながらも繊細な装飾がなされており、巨大な女神像の手前にある荘厳な玉座に腰掛ける若い男、豪奢な衣装を身に纏い黄金の冠を戴くその男こそ、エレス=センティアの王であるアヴァンである。眉目秀麗に手足を付けたような人間で、端正な顔立ちに気品に満ちた仕草、まさに王者たる姿だった。
「お待ちしておりました、救世の魔導師様。まさか本当にお会いできるなんて……」
「ふむ、マイティ・オブシダイトだ。お会いできて光栄です、アヴァン王」
「うむ、こちらこそ光栄だ。さぁ爺や、アレを持ってきてくれ」
爺やと呼ばれた初老の老人――おそらく大臣だろう――は玉座の側からこれまた豪奢な縦長の箱を持ってきた。それを我が目の前に置くとアヴァンが何やら詠唱を始めた。
「これは、王家に伝わりし漆黒の宝玉を嵌め込んだ杖にございます。貴女様の魔力をより純度の高いものにするでしょう。長きに渡り正当なる継承者を待ちながら封印の眠りについていたのですが、今しがた封印を解きました。……おや、もう一人のお方は?」
アヴァンはユフィに気付き声をかけた。ユフィは一瞬だけ驚いてから姿勢を正し挨拶をした。
「え、えぇと……やな……じゃなくて、ユフィ・ソルディバリーです。剣士として彼女の旅に同行します」
ユフィがそう言うと、アヴァンは驚愕の表情を浮かべた。
「伝説の通りだ……。異界の魔導師と共に現れる剣士……爺やアレもすぐに用意してくれ」
大臣は謁見の間から外へ出ていった。
「アヴァン王、この箱を開けてよろしいのかな?」
私のために用意されたものであるようだが、念のため断りを入れておくか。アヴァンはすぐに許可をした。箱に手をかけ、ゆっくりと開ける。そこにあったのは、ちょうど私の身長と同じくらいの長さの杖、先端は豪奢な西洋剣の鍔のようにアーチを描いている。
全身に不思議な力が巡る感覚に満足していると、さっきの大臣が一振りの剣を持って戻ってきた。それをアヴァンに渡すと、ユフィに柄を向けた。
「ユフィ殿、この剣を抜いてみてくれまいか?」
ユフィが剣の柄に手を掛けると、一瞬だけ閃光が迸った。閃光が収まる頃にはユフィは鞘から剣を抜ききっていた。この場にいる全員が唖然としている中、おもむろにアヴァンが口を開いた。
「それは王家に伝わりし聖剣、銘をブライトスターという。抜くことができるということは、やはり……いや、何でもない。旅の資金や諸々の道具はこちらで揃えてある。それと、この指輪をお二人に。魔力強化の指輪で王家の紋が刻まれているから関所の兵に見せれば通してくれるだろう。では、まずは食事としよう」
アヴァンが片手を挙げると複数のメイドがどこからともなく現れ、私とユフィは謁見の間を後にした。
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