中二病少女、異世界で最強の魔導師になる

楠富 つかさ

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第三話 出立前夜

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「うおぉ……極楽ぅ……」
「ふぅ、異世界なのにこんないいお風呂に入れるなんて」

 アヴァンに用意してもらった旅の道具などを一通り検分した後、メイドたちがお風呂の用意ができていると言ってくれたので、入浴することにした。着替えの類も用意してくれているようだが、文明の違いもあってか元から着ていたものの方がよっぽど品質がいい。メイドさんに今のうちに洗ってもらって、明日はそっちを着ていくとしよう。

「舞衣、また胸が大きくなった?」
「言わなくていい。ユフィこそ、さっきは食べ過ぎだったんじゃないか」

 まぁ、魔導師は戦闘中に駆け回らないから多少重りがあったところでどうということはない。だが、ユフィはそうではないだろう。

「いやだって、異世界なのに食事のレベルめっちゃ高かったというか、どれもこれも美味しかったじゃん。舞衣だって珍しくよく食べてたし」

 メイドたちに軽く化粧を施された私とユフィが案内されたのは大広間で、そこでは異世界から招かれた私たちを主賓にパーティが催された。出された食事は魔物に侵略されている危機的状況だというのに豪勢で、私たちは流石に飲まなかったが酒もふるまわれていた。

「いやぁ、舞衣が大勢の前でスピーチなんてして……私感動しちゃったよぅ」
「ふん、あれくらい造作もない。私は大魔導師、マイティ・オブシダイトだぞ」
「ねぇ舞衣……ほんとに魔法使えるの?」
「問題ない。まぁ……論より証拠か」

 そう言って指先に火を灯す。

「うわ、え、な、なにそれ……」

 人差し指の先端に灯した炎を丸めて火球にする。さらに中指、薬指、小指にそれぞれ小さな水の弾、渦巻く風、氷の礫を生み出す。

「ユフィだって、自分の内側にこれまでと違う力が巡っていることに気付いているんじゃないの?」
「どう、かなぁ。身体が軽いっていうか、元気だぁって感じはするけど、そんなマジカルなことはできないよ?」

 ユフィは剣士なのだから魔法は使えなくて当然だろう。だが剣に力を込めて武技として放つことができるだろう。異世界に来る前に傘や竹刀、木刀で培ってきた剣技について、ユフィに再び伝える。

「あぁ、そっかぁ。あれが出来るようになるのかなぁ。剣に力を込めるあの感覚かぁ……」
「それは明日改めて練習すればいい。練習なのか、いきなり実戦になるかはわからんが」

 ひとしきり身体が温まったこともあり、湯船を出る。着替えから洗体までメイドたちが手伝おうとしていたのを無理に断ったからか、脱衣所には誰もいない。タオルと着替えだけが用意されているが、タオルは正直ゴワゴワだ。縫製技術や柔軟剤の存在しないことなどもろもろの都合があるのだろうが、取り敢えず肌の水気を拭ってゴワゴワとしたバスローブを身に着ける。

「寝室へご案内します」
「わぉ!」

 脱衣所を出てすぐのところでメイドが控えていた。ユフィは驚いていたが、私には想定内だった。

「では、なにかありましたら何なりとお申し付けください」

 異世界の高級ベッドは日本の庶民向けベッドと同じくらいの品質で、思ったよりスムーズに私たちは眠りに落ちた。
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