中二病少女、異世界で最強の魔導師になる

楠富 つかさ

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第四話 初陣

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 さて明くる朝、特に豪華なお見送りとかはないまま、私たちは旅だった。
 アヴァン王から渡された袋に入っていた地図を頼りに魔王城に最も近いミュイスという村へ向かう。そこまでに一つ関所となる町があるため、まずはそこへ向かう。町の名前はリセイラというらしい。

「ちょっと~クライト? あとどれくらい歩くの?」

 まだ歩き始めて二時間もしないのにユフィは文句を言い出した……。まったく、体力はあるくせに我慢強さが足りないのだ。しかし、魔物の徘徊する見知らぬ土地というのは確かにしんどい。それに……。

「まさかお前が付いてくるとはな」

 私が肩に担いだ杖の先端にちょこんと居座る一羽の鴉。この世界へ来るときの案内役になったカラウだ。

「見張り役といったところか?」
「めっそうもございません。私は単なる……そうですね、見届け人といったところでしょうか」
「人ではないのに見届け人、ねぇ。世界を渡る時みたいに大きくなって乗せてくれたらいいのに」

 ユフィがぼそっと呟くが、確かにそれはいい案だな。世界を渡る時に巨大化したカラウは確実に人二人くらいなら乗れる大きさだった。

「あの姿は世界を渡るゲートを開くための姿ですから、人を乗せられるわけではないのです」

 そうそう楽はさせてくれないか。なお、地球では脳内に直接語り掛けてきていたが、こちらの世界では普通に話せるらしい。まぁ、あの脳内に直接響く感覚はそんなにいいものではなかったから、普通に話してくれるならその方がいい。

「お二人とも、前方から敵影でございますよ」

 カラウが羽ばたいて杖から離れる。私は杖を構え、ユフィは抜剣する。だが敵の姿はまだ見えない。カラウの索敵能力があまりに高いのか、それとも見間違いか……いや、敵影だ。数は……三体。獣のような姿をしている。

「マイティ、援護任せた!」
「あぁ、ユフィ! あの技を使うんだ!」
「合点!!」

 そう言ってユフィは敵に突入する……。さすが最強の女剣士だ。その上、今の得物は王家の聖剣、そこに力を流し込めば次第にオレンジ色の炎が揺らめく。

「燃えろぉ紅牙斬!!」

 よしよし、剣に炎を纏わせた一撃、きっちり発動できたみたいだ。さぁて、私も詠唱を始めようか!

「暗闇より来る刃よ、その身を抉れ! シャドーエッジ!」

 何処ともなく出現した闇色の刃が敵の喉元を抉る……。魔物の血液は赤くないのが不気味だ。

「ラストだっ。もう一発! 燃えろぉぉ!!」

 ユフィがブライトスターを振るう。その軌跡は紅蓮を辿り、炎の衝撃波が魔物を捉える。吹き飛ばされた魔物は灰塵と化し瞬く間に消失あるいは焼失した。ユフィの技には炎がよく似合う。

「イェーイ! ビクトリー!! 今のすごくない♪ 燃えたね♪」

 技の発露にハイテンションを振り撒くユフィ。ただ歩いている時はあまり元気がなかったというのに、こうして剣を振るって元気が出るなら、初陣としては悪くなかっただろう。

「魔術を発動する時の力の流れというものも分かってきたし、実りある初陣だったな」
「お二人ともお見事でした。さぁ、進みましょうか」

 ……カラウに仕切られるのはなんか違う気がするんだがなぁ。
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