中二病少女、異世界で最強の魔導師になる

楠富 つかさ

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第五話 夜営

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 リセイラまでの道のりはまだ長い。

「今夜はここで夜営だな」

 夜の闇が濃くなるにつれ魔物は凶暴化する。つまり、夜の行動は危険を伴う。

「夜営って野宿?」

 私が頷くと、ユフィは何故か慌て始めた。

「え、ガチ野宿? 枕が変わると寝られない私に、枕すらない状況で寝ろと?」
「いや、ユフィはわりと普通に寝るじゃん」

 何を自分は繊細ですが? みたいなことを言うのか。そもそも寝相の悪いユフィのせいで私がどれだけ苦労してきたことか……。流石に中学生になる頃からはもう一緒に寝ることもなかったが。

「舞衣と一緒に寝るの久々で嬉しい」
「ん? なんか言った? それより魔物避けに火の用意をしたいのだが?」

 それなら、と私の肩にとまっていたカラウがユフィのブライトスターを嘴で指す。ユフィはカラウに言われるままにブライトスターを地面に刺した。すると、辺りにうっすらと光の膜が生まれた。

「かの剣には使用者を守護するのみならず、こうして結界を張る力があるのです」

 ふむ、さすが王家の聖剣だ。ご都合主義な感が否めない。だがこれで安心して眠れる。まぁ、これがなくても交代で寝ずの番をするなりカラウにやらせるなりすればよかったのだろうが。

「カラウ、お前は眠るのか?」
「えぇ、当然」

 ……やはりブライトスターの結界があってよかった。月明りくらいの淡い光を放つ結界だが、不思議とぐっすり眠ることができた。
 そして、夜は明けた。

「なんだか、雲行きが怪しいね……」

 ユフィの言う通り今日の空は朝からどんよりとしている……そんな空の下、やはり魔物が闊歩している。

「さて、やるよ」

 ユフィがブライトスターを抜剣して戦闘態勢を取る。私もすかさず杖を構えて呪文を唱える。

「凍てつく刃よ敵を切り裂け――アイシクルエッジ!」

 氷の刃を生み出し直線ではなくブーメランのように湾曲した起動で強襲する。敵は狼のような四足歩行の獣、視線がそちらへ誘導されるが、それは完全に隙だ。

「炎迅襲牙!!」

 炎を纏ったユフィの剣が猛獣の牙のように鋭く襲い掛かる。首にぶっすりと刺さったブライトスターと横っ腹を切り裂く氷刃に魔物はあっさり絶命した。どうにもこの世界の魔物は魔王が魔力を込めて作った存在のようで、討伐すると魔力の粒子になって消えてしまう。その分、この世界の人間は魔物を倒してそれこそ素材を剥いで生計を立てるなんていうことが出来ず、魔物の跋扈を許してしまっているようだ。
 確かにこんな剣と魔法の世界観なら冒険者みたいな存在がいてもおかしくないが、そういうのがいないのはそういった理由によるものらしい。とはいえ、魔物素材に関係なく給料が支払われる騎士や傭兵が厄介な魔物を討伐してくれているようだが。

「今の魔物はさっきの一匹だけか? こういう手合いは群れていそうだが」
「どうやらはぐれ者のようですね。さぁ、きびきび行かないとリセイラまでにもう一度野営をすることになりますよ」
「カラウってリーダーシップとりたがるタイプだよね。鳥だけに」

 無駄にギャグを織り交ぜたが私も一応ユフィに同感だ。

「まぁ、あなた達より年長者ですから」

 ……普通の存在ではないのだろうから、年齢なんて概念を気にするだけ無駄か。
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