中二病少女、異世界で最強の魔導師になる

楠富 つかさ

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第六話 リセイラの街

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 カラウに言われ行軍速度を上げたおかげか、完全に日が沈む前にリセイラに到着することができた。
 もともとはアヴァン王が治める国と隣国との国境にあたる町で活気があったのだというが、隣国が魔王に滅ぼされて以来、対魔王軍への前線基地となっているようだ。

「けっこう武装している人がいるけど、カラウの話じゃ冒険者はいないんじゃなかったの?」
『彼らは傭兵ですよ。滅んだ隣国の貴族たちが金で雇った者たちでしょう』

 他に一般人がいるということもあってか、再び脳内に語り掛け始めたカラウの説明を聞きながら、宿を探して細い路地を歩いていると――。

「お、なんだ嬢ちゃんたち、花を売りに来てくれたのか? ちっと幼いが二人いれば楽しめそうだぜ。金はあるんだが使い道がなくてよう、いくら欲しいんだ?」
 声をかけてきたのは世紀末感のあるハゲ頭の大男。下卑た視線を私とユフィに向ける。汚らわしい。
「え、花? 花なんて持ってないけど……?」

 ユフィは花売りの意味が分かっていない。そういう純粋なところをこれからも私が守らないと。

「お生憎様だけど、私たちは花売りじゃないわ。それとも……力ずくでないと分からないかしら?」

 そう言って杖を構える私に、男は眉を吊り上げた。だが私は引かない。ユフィを視姦した落とし前はきっちり落とさないと。

「ガキがいっちょ前に武器構えやがって。分からせてやるよ、大人の怖さってやつをな!」

 男は腰に提げた湾曲刀を抜くと振りかぶって襲い掛かってきた。

「凍てつく礫よ――って、ユフィ!?」

 素早く詠唱を始めた私だったが、最後まで口にすることはできなかった。ユフィがブライトスターを男の腹に突き立てていたからだ。ユフィが人を傷つけたこともだが、その刺突があまりに早すぎて言葉にならなかった。

「と、取り敢えず逃げる!!」

 ユフィの手を取って路地から逃げ出す。そこそこの大通りに出た私たちは、周囲に視線を送り追われていないことを確かめる。

「ごめん、舞衣が傷つくことを思ったら身体が勝手に動いてた」
「いや、私も軽率だった……。ユフィに、人を……ごめん、そんなつもりじゃなかったのに……」
『あの男、死んでませんよ』

 カラウが脳内に語り掛けてくる。どうやら命に別状はないらしい。親友を人殺しにせずに済んだのはホッとしたが……けれど、やはり人に危害を加えるような性格じゃないユフィに、あんなことをさせてしまったことへの悔いが残る。

「舞衣、私はね、舞衣のためなら何でもできるよ。舞衣が悪党だって思った人は、私がばっちり成敗してあげるから」
「もう……唯燈ったら。ありがとう。じゃあ、取り敢えず宿を探すところからだね。ちゃんと安心して眠れる場所を見付けないと」

 ここは異世界なんだ。地球と同じ感覚でいつまでも過ごせるわけじゃない。ちゃんと、そこは受け入れて物事を考えないといけない、改めてそう感じた出来事だった。
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