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独り言
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「お母さんーー」
お母さんがテレビを観ている。
今流行りのバラエティ番組。
お母さんは大声で笑っていて、すごく機嫌が良さそうに見えた。
私は意を決して母親の横顔に声を掛けた。
今なら大丈夫。怒られない。
「これ学校の手紙、お母さんのサインとはんこが必要なの。あと…これは集金。金曜日までに持っていかないとなの」
お母さんの横顔はテレビを観たまま全く動かない。
何分経っただろう。
コマーシャルが終わりバラエティ番組の続きが画面に映し出され、お母さんがまた笑い出すまで。
私にはこの数分が途方もなく長い時間に感じられた。
そして無視されたと気づいた時、胸がぐっと重くなって窒息してしまいそうなくらいに息が詰まった。
ーーどうしたらいいの
私は小学4年生なりに考えた。
お金のかかる集金の話や手間のかかるサインの話をすると機嫌が悪くなって文句を言われる、でも提出期限までに学校に持っていかなければ先生に注意をされるし、クラスメイトに忘れ物をしたと思われる。真面目な性格の小学生にとって忘れ物とは悪だ。そんなことは絶対にできない。でもお母さんに無視された。無視された。無視された。無視されたのだ。
「よろしくね」
私は独り言を続けると風呂場に向かった。
自分の鳴き声をシャワーの音でかき消すため。泣くのを我慢できる程大人ではなかった私は、こんな風に胸が張り裂けそうな気持ちになった時は、よく風呂場や押し入れの中に隠れて、誰にもに気づかれないように人知れず涙を流した。
シャワーは温かくて柔らかくて。優しく私を慰めてくれているみたいだった。
無視されるようになる前は、学校であった楽しいこと、面白かったこと色々な出来事をお母さんに聞いてほしくて、たくさん話したりもした。でもお母さんは「うるさい」「黙って」と私が喋るとすごく嫌そうに言った。私の話しには一切興味がなさそうだった。自分が話したいことは一方的に話すのに。弟の話はちゃんと聞くのに。
ーー何で私だけ聞いてくれないの?私の話も聞いてよ。
そんな経験から、後に私は声が出せなくなっていく。人に声をかけるのが怖い。無視されたら怖い。人と関わるのが怖い。なにもかもが怖かった。
お母さんがテレビを観ている。
今流行りのバラエティ番組。
お母さんは大声で笑っていて、すごく機嫌が良さそうに見えた。
私は意を決して母親の横顔に声を掛けた。
今なら大丈夫。怒られない。
「これ学校の手紙、お母さんのサインとはんこが必要なの。あと…これは集金。金曜日までに持っていかないとなの」
お母さんの横顔はテレビを観たまま全く動かない。
何分経っただろう。
コマーシャルが終わりバラエティ番組の続きが画面に映し出され、お母さんがまた笑い出すまで。
私にはこの数分が途方もなく長い時間に感じられた。
そして無視されたと気づいた時、胸がぐっと重くなって窒息してしまいそうなくらいに息が詰まった。
ーーどうしたらいいの
私は小学4年生なりに考えた。
お金のかかる集金の話や手間のかかるサインの話をすると機嫌が悪くなって文句を言われる、でも提出期限までに学校に持っていかなければ先生に注意をされるし、クラスメイトに忘れ物をしたと思われる。真面目な性格の小学生にとって忘れ物とは悪だ。そんなことは絶対にできない。でもお母さんに無視された。無視された。無視された。無視されたのだ。
「よろしくね」
私は独り言を続けると風呂場に向かった。
自分の鳴き声をシャワーの音でかき消すため。泣くのを我慢できる程大人ではなかった私は、こんな風に胸が張り裂けそうな気持ちになった時は、よく風呂場や押し入れの中に隠れて、誰にもに気づかれないように人知れず涙を流した。
シャワーは温かくて柔らかくて。優しく私を慰めてくれているみたいだった。
無視されるようになる前は、学校であった楽しいこと、面白かったこと色々な出来事をお母さんに聞いてほしくて、たくさん話したりもした。でもお母さんは「うるさい」「黙って」と私が喋るとすごく嫌そうに言った。私の話しには一切興味がなさそうだった。自分が話したいことは一方的に話すのに。弟の話はちゃんと聞くのに。
ーー何で私だけ聞いてくれないの?私の話も聞いてよ。
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