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私を忘れないで
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リュートはとても嫉妬深い悪魔だった。
そう気づいたのは、拘束されて身動きができなくなってから。
「天童さん。良かったら今日、飲みに行かない?」
リュートと暮らし始めてから6回目の金曜日。
帰り支度を終えてロッカールームから出てきたところに声をかけられて振り返る。
「松本さん、お疲れ様です。今日……ですか?」
「そう。今日これから営業の奴らで飲みに行くんだけど、天童さんも一緒にどうかな。って思って」
え。今、飲みって言った?
天童さんも一緒に。って言った?
(嬉しい!! 会社の人に送別会や忘年会以外で飲みに誘われるなんて、初めて!!)
じわーんと喜びと感動が胸の辺りから広がって、涙まで滲みそうになるのを誤魔化すように何度もまばたたきする。
「皆さんの飲み会に、私も……行って良いんですか?!」
「うん。もちろん。是非来てよ──て言うか、最近の天童さん凄く話しやすいし、こんなこと言うとセクハラとか思われちゃうかもしれないけど、綺麗になったじゃん? でも彼氏とかいないって聞いたから──」
「ら?」
パキン。
そんなプラスチックが割れるみたいな音がして、松本さんの動きが止まる。
ううん。松本さんだけじゃなく、このフロアの、この建物の私以外の全ての存在が、時を止めてしまったかのように何の音も聞こえなくなった。
「松本、さん……?」
頬を掻く姿勢で固まった松本さんの目の前でヒラヒラと手を振っても、彼は反応どころか瞬きすらしない。
「──ケイナ。天童京奈。俺が家でいい子で待ってるのに。こんな人間の男なんかに誘惑されるなんて。なんてイケナイご主人さま」
やんわりと。慣れた体温と体臭が私の身体を背後から包む。
お腹と肩にまわされた腕は優しいはずなのに。
耳に直接囁かれる声はいつも通り甘いはずなのに。
なのに。
なのに、なんで。獰猛な獣に牙を剥かれている気分になるの。
「りゅぅ、と。どういうこと……? これ、夢? どうやってここまで入ってきたの……? 警備員さんに止められなかった?」
抱き込まれた体勢のまま目だけを動かすと、予想通りのくせ毛が視界に入る。
今までリュートが会社に来るなんてことなかったのにどうしたのだろう。
(いや、そんなことよりもっと、突っ込まなきゃいけないことがあるし……っ)
「何か有ったの? 緊急事態? それでこんな不思議なことになってるの? ──っ?!」
リュートにこの異常な空間の理由を尋ねたとたんチリリとした痛みが首筋を走る。その痛みをなだめるような湿った感触に、歯を立てた後に舐められているのだと気づいた。
「……緊急事態。そうだね。ご主人さまが、俺に待てをして自分は浮気しようとしてたんだもの。緊急事態だよね」
「う、浮気っ?! 誰が?!」
「俺のご主人さまは一人しかいないでしょうケイナ? まさか、そのことも忘れてしまうつもりなの?」
「私?! 浮気なんてしてな──っ」
「めっ。悪い子。嘘までつくなんて。この男と『飲み』に行こうとしてたじゃない」
「会社の飲み会で、二人きりじゃないよ?! ちゃんと、リュートにも連絡するつもりだったし……っ」
ギチリ。肩を抱く腕に力が入って苦しくはないけど動けない。
左手で私をホールドして。それなのに右手がスルスルと太ももへ降りていく。タイトスカートを辿る指に、明確な意思が宿る。
「悪魔すら魅力する格好で、複数の男と飲酒? その報告を俺に黙って聞いてろって? ──無理だよケイナ。お前の悪魔は早くお前を食べたくて、今か今かと家で待てをしてるのに。そんな酷いことをしたら男たち全員を殺してしまうじゃない。俺を飼うって決めたのはケイナなんだから。ちゃんと最後まで面倒を見てよ」
重い! 重いよリュート! 生き物を飼う責任って、今さらだけどすごく重いね?!
「ひゃあっ?!」
「タイトスカートって便利だねケイナ? こうやってお腹まで捲っちゃえばもうただの布だ。立ったままでもこんなに簡単にお前の大事なところを触れる」
「リュート、ここ、会社……っ、松本さんが、見て──ぁあっん!」
「見てないよ。俺が時間を止めたんだから。他の男なんかにケイナのこんな美味しそうな顔見せない。ケイナ。俺の指を感じるより、会社やこの男の方が大事なの?」
「や、そんな、激し、くっ、ん、ん──!」
「下着越しでもわかるくらい『芯』が固くなってきた。薄い布を押し上げて存在を主張してる。見たい? 見たいよね。……見せてあげるよ。ほら 」
見たいなんて言っていないのにリュートの言葉に合わせて目の前に巨大な鏡が浮かび上がる。お伽話に出てきそうな、周りに凝った装飾のされた楕円形の鏡。
そこには会社の廊下で絡み合う私たちの全身がハッキリと映っていた。
後ろからリュートに抱えられ愛撫を受ける私。
ブラウスも、ガーターベルトをつけたストッキングも、ヒールも。他は何一つ乱れていないのに、タイトスカートだけをお腹のところまで捲し上げられて下着の上から執拗にクリトリスを撫でられている。
「ふ、ぁあっ!!」
駄目なのに。こんなところで。松本さんだってすぐそこにいるのに。
そう思うのに。
そう思えば思うほど。意識はリュートの指に捏ねられる『ソコ』へ集中していく。
「ぁああ────!」
真っ白に染まった視界に崩れ落ちそうになる私を支えて悪魔が囁く。
「ケイナ。お仕置きを始めるよ?」
そう気づいたのは、拘束されて身動きができなくなってから。
「天童さん。良かったら今日、飲みに行かない?」
リュートと暮らし始めてから6回目の金曜日。
帰り支度を終えてロッカールームから出てきたところに声をかけられて振り返る。
「松本さん、お疲れ様です。今日……ですか?」
「そう。今日これから営業の奴らで飲みに行くんだけど、天童さんも一緒にどうかな。って思って」
え。今、飲みって言った?
天童さんも一緒に。って言った?
(嬉しい!! 会社の人に送別会や忘年会以外で飲みに誘われるなんて、初めて!!)
じわーんと喜びと感動が胸の辺りから広がって、涙まで滲みそうになるのを誤魔化すように何度もまばたたきする。
「皆さんの飲み会に、私も……行って良いんですか?!」
「うん。もちろん。是非来てよ──て言うか、最近の天童さん凄く話しやすいし、こんなこと言うとセクハラとか思われちゃうかもしれないけど、綺麗になったじゃん? でも彼氏とかいないって聞いたから──」
「ら?」
パキン。
そんなプラスチックが割れるみたいな音がして、松本さんの動きが止まる。
ううん。松本さんだけじゃなく、このフロアの、この建物の私以外の全ての存在が、時を止めてしまったかのように何の音も聞こえなくなった。
「松本、さん……?」
頬を掻く姿勢で固まった松本さんの目の前でヒラヒラと手を振っても、彼は反応どころか瞬きすらしない。
「──ケイナ。天童京奈。俺が家でいい子で待ってるのに。こんな人間の男なんかに誘惑されるなんて。なんてイケナイご主人さま」
やんわりと。慣れた体温と体臭が私の身体を背後から包む。
お腹と肩にまわされた腕は優しいはずなのに。
耳に直接囁かれる声はいつも通り甘いはずなのに。
なのに。
なのに、なんで。獰猛な獣に牙を剥かれている気分になるの。
「りゅぅ、と。どういうこと……? これ、夢? どうやってここまで入ってきたの……? 警備員さんに止められなかった?」
抱き込まれた体勢のまま目だけを動かすと、予想通りのくせ毛が視界に入る。
今までリュートが会社に来るなんてことなかったのにどうしたのだろう。
(いや、そんなことよりもっと、突っ込まなきゃいけないことがあるし……っ)
「何か有ったの? 緊急事態? それでこんな不思議なことになってるの? ──っ?!」
リュートにこの異常な空間の理由を尋ねたとたんチリリとした痛みが首筋を走る。その痛みをなだめるような湿った感触に、歯を立てた後に舐められているのだと気づいた。
「……緊急事態。そうだね。ご主人さまが、俺に待てをして自分は浮気しようとしてたんだもの。緊急事態だよね」
「う、浮気っ?! 誰が?!」
「俺のご主人さまは一人しかいないでしょうケイナ? まさか、そのことも忘れてしまうつもりなの?」
「私?! 浮気なんてしてな──っ」
「めっ。悪い子。嘘までつくなんて。この男と『飲み』に行こうとしてたじゃない」
「会社の飲み会で、二人きりじゃないよ?! ちゃんと、リュートにも連絡するつもりだったし……っ」
ギチリ。肩を抱く腕に力が入って苦しくはないけど動けない。
左手で私をホールドして。それなのに右手がスルスルと太ももへ降りていく。タイトスカートを辿る指に、明確な意思が宿る。
「悪魔すら魅力する格好で、複数の男と飲酒? その報告を俺に黙って聞いてろって? ──無理だよケイナ。お前の悪魔は早くお前を食べたくて、今か今かと家で待てをしてるのに。そんな酷いことをしたら男たち全員を殺してしまうじゃない。俺を飼うって決めたのはケイナなんだから。ちゃんと最後まで面倒を見てよ」
重い! 重いよリュート! 生き物を飼う責任って、今さらだけどすごく重いね?!
「ひゃあっ?!」
「タイトスカートって便利だねケイナ? こうやってお腹まで捲っちゃえばもうただの布だ。立ったままでもこんなに簡単にお前の大事なところを触れる」
「リュート、ここ、会社……っ、松本さんが、見て──ぁあっん!」
「見てないよ。俺が時間を止めたんだから。他の男なんかにケイナのこんな美味しそうな顔見せない。ケイナ。俺の指を感じるより、会社やこの男の方が大事なの?」
「や、そんな、激し、くっ、ん、ん──!」
「下着越しでもわかるくらい『芯』が固くなってきた。薄い布を押し上げて存在を主張してる。見たい? 見たいよね。……見せてあげるよ。ほら 」
見たいなんて言っていないのにリュートの言葉に合わせて目の前に巨大な鏡が浮かび上がる。お伽話に出てきそうな、周りに凝った装飾のされた楕円形の鏡。
そこには会社の廊下で絡み合う私たちの全身がハッキリと映っていた。
後ろからリュートに抱えられ愛撫を受ける私。
ブラウスも、ガーターベルトをつけたストッキングも、ヒールも。他は何一つ乱れていないのに、タイトスカートだけをお腹のところまで捲し上げられて下着の上から執拗にクリトリスを撫でられている。
「ふ、ぁあっ!!」
駄目なのに。こんなところで。松本さんだってすぐそこにいるのに。
そう思うのに。
そう思えば思うほど。意識はリュートの指に捏ねられる『ソコ』へ集中していく。
「ぁああ────!」
真っ白に染まった視界に崩れ落ちそうになる私を支えて悪魔が囁く。
「ケイナ。お仕置きを始めるよ?」
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