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異世界
しおりを挟む「――――え?」
石で造られた白い床、白い壁、高い天井。
まるで外国のような。まるで映画のセットのような。まるでロールプレイングゲームの中のような――神殿みたいな場所。
先ほどまで居た学校の校庭とまったく違う光景が絵麻の目の前に広がる。
「……ちょ、え、ナニ。もしかして在校生たちからの卒業式のサプライズ? フラッシュモブとかやっちゃう感じ?」
しかし絵麻を囲む人々は後輩でも教師でもない。
RPGなら確実に神官という立場であろう、ズルズルとした長いローブに長い髭の老人。芋虫みたいな太い指全てにギラギラとした指輪を嵌めた脂ぎった男。こちらを警戒しているのか、油断なく剣を構えた甲冑姿の兵士たち。
サプライズの演出だとしても、見たことのない顔ぶれが絵麻を指差し、興奮した様子で捲し立てる。
「聖女だ!」
「聖女だ!」
「見ろ! あの奇妙な服! 異世界の聖女だ!」
「聖女の召喚に成功したぞ!!」
「やはりフェオードル様こそ次の王に相応しい方!」
「フェオードル様、万歳!」
「フェオードル様、万歳っ!!」
ドッ! と沸いた歓声。
未だに床に座り込んだままの絵麻を置き去りにして。
周囲の空気が異様に昂っていく。
怖い。ついていけない。なんだって言うの。
「――なんだ、思ったよりも貧相な女だな? 異界の聖女と言うのはもっと神々しいかと思っていたのだが……下町の小娘と変わらないんじゃないか?」
「フェオードル様! しかし、文献通りに儀式を行って、何もない空間からこの女が現れたのはご覧になった通りです!」
「ふん」
興奮する人々の後ろから現れた若い男。
青いナポレオンジャケットに白のパンツ。絵麻の想像する典型的な王族のような格好だが、他の人間への接し方を見るに実際にこの場での権力者なのだろう。年齢は絵麻と同じくらいなのに、誰よりも偉そうだ。
その男が、絵麻に近づいてくる。
バターブロンドに緑の瞳。その色彩はヘアカラーやコンタクトでなく、本来の彼の色に見えた。もしかして外国人エキストラだろうか。しかし彼の日本語はとても流暢だ。
――いや、この男だけではない。
絵麻を取り囲む男たちはみな日本人離れした彫りの深い顔をしているのに、とても自然に日本語を話している。
「サプライズのために、エキストラの人たちをこんなに集めたの……?」
「何を訳わからないこと言ってる。お前、頭はまともなのか?」
「痛っ!」
とても初対面の異性に触れるとは思えない強さで無遠慮に顎を掴まれ、上を向けさせられた。
フェオードルと呼ばれていた金髪の男が、唇を歪め意地悪く笑う。
「……あぁ、鼻は少し低いが醜くはないな。気の強そうな目も嫌いじゃない。お前、名前は? ちゃんと聖女としての役目を果たせば、俺の妾の1人にしてやってもいい。――さぁ異世界の聖女サマ、俺を王にしてくれよ」
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