異世界聖女の王子改造作戦〜陰キャが立派になりまして〜

茅野ガク

文字の大きさ
3 / 16

異世界

しおりを挟む

 
「――――え?」


 石で造られた白い床、白い壁、高い天井。
 まるで外国のような。まるで映画のセットのような。まるでロールプレイングゲームの中のような――神殿みたいな場所。

 先ほどまで居た学校の校庭とまったく違う光景が絵麻の目の前に広がる。

「……ちょ、え、ナニ。もしかして在校生たちからの卒業式のサプライズ? フラッシュモブとかやっちゃう感じ?」

 しかし絵麻を囲む人々は後輩でも教師でもない。
 
 RPGなら確実に神官という立場であろう、ズルズルとした長いローブに長い髭の老人。芋虫みたいな太い指全てにギラギラとした指輪を嵌めた脂ぎった男。こちらを警戒しているのか、油断なく剣を構えた甲冑姿の兵士たち。

 サプライズの演出だとしても、見たことのない顔ぶれが絵麻を指差し、興奮した様子で捲し立てる。

「聖女だ!」
「聖女だ!」
「見ろ! あの奇妙な服! 異世界の聖女だ!」
「聖女の召喚に成功したぞ!!」
「やはりフェオードル様こそ次の王に相応しい方!」
「フェオードル様、万歳!」
「フェオードル様、万歳っ!!」

 ドッ! と沸いた歓声。
 未だに床に座り込んだままの絵麻を置き去りにして。
 周囲の空気が異様に昂っていく。

 怖い。ついていけない。なんだって言うの。

「――なんだ、思ったよりも貧相な女だな? 異界の聖女と言うのはもっと神々しいかと思っていたのだが……下町の小娘と変わらないんじゃないか?」

「フェオードル様! しかし、文献通りに儀式を行って、何もない空間からこの女が現れたのはご覧になった通りです!」

「ふん」

 興奮する人々の後ろから現れた若い男。
 青いナポレオンジャケットに白のパンツ。絵麻の想像する典型的な王族のような格好だが、他の人間への接し方を見るに実際にこの場での権力者なのだろう。年齢は絵麻と同じくらいなのに、誰よりも偉そうだ。
 その男が、絵麻に近づいてくる。

 バターブロンドに緑の瞳。その色彩はヘアカラーやコンタクトでなく、本来の彼の色に見えた。もしかして外国人エキストラだろうか。しかし彼の日本語はとても流暢だ。
 ――いや、この男だけではない。
 絵麻を取り囲む男たちはみな日本人離れした彫りの深い顔をしているのに、とても自然に日本語を話している。

「サプライズのために、エキストラの人たちをこんなに集めたの……?」

「何を訳わからないこと言ってる。お前、頭はまともなのか?」

「痛っ!」

 とても初対面の異性に触れるとは思えない強さで無遠慮に顎を掴まれ、上を向けさせられた。
 フェオードルと呼ばれていた金髪の男が、唇を歪め意地悪く笑う。

「……あぁ、鼻は少し低いが醜くはないな。気の強そうな目も嫌いじゃない。お前、名前は? ちゃんと聖女としての役目を果たせば、俺の妾の1人にしてやってもいい。――さぁ異世界の聖女サマ、俺を王にしてくれよ」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~

香木陽灯
恋愛
 「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」  実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。  「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」  「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」  二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。 ※ふんわり設定です。 ※他サイトにも掲載中です。

ストーカーから逃げ切ったつもりが、今度はヤンデレ騎士団に追われています。

由汰のらん
恋愛
ストーカーから逃げていたある日、ハルは異世界に召喚されてしまう。 しかし神官によれば、どうやらハルは間違って召喚された模様。さらに王子に盾ついてしまったことがきっかけで、ハルは国外追放されてしまう。 さらに連行されている道中、魔族に襲われ、ハルの荷馬車は置き去りに。 そのさなか、黒い閃光を放つ騎士が、ハルに取引を持ちかけてきた。 「貴様の血を差し出せ。さすれば助けてやろう。」 やたら態度のでかい騎士は、なんとダンピールだった! しかしハルの血が特殊だと知った騎士はハルを連れ帰って? いっそ美味しい血と癒しを与えるダンピール騎士団のセラピストを目指します!

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

処理中です...