夏の日の時の段差

秋野 木星

文字の大きさ
9 / 22

これからの予想

しおりを挟む
病院からの帰りに、由紀恵は山岡君と一緒にファミレスに寄って、食事をして帰ることになった。

ここのファミレスでは誠二の大学の友達がバイトをしているらしく、彼が持っていた割引券で、安く食事をすることができた。

昨日は同級生だと思っていた誠二が、ウェイトレスに躊躇なく食事を注文しているし、サラダバーから由紀恵の欲しいものを取ってきてくれたりもする。
なんだかちょっと差をつけられた感じ。

山岡君はもう18歳じゃないんだな。
たった一年経っただけなのに、山岡君はもう大人の男の人みたいだ。
高校生には逆立ちしても届かない、大学生の山岡君がそこにいた。

こうやって、あのスーツを着ていた25歳の山岡君になっていくんだろうか?

私は、山岡君と同じ19歳になった時に、いったい何をしてるんだろう?


おばあちゃんの家に帰ってから、山岡君と今後の話をすることになった。

「25歳の山岡君が言った『やることをやったら帰れる。』というのは、写真をおばあちゃんに見せることだったのかな?」

「たぶんね。おばあちゃんの意識が戻るわずかな日を選んでここに来たということは、一つはそういう事だったんだろうな」

「一つは?」

「うん。これは推測でしかないけど、君の友達の長峰さんに送る手紙があるだろ? あれに、次の鍵があると思うんだ。それはつまり、僕が見てはいけないもの…………えっと、け、結婚式の写真とかが関係するんじゃないかな?」

なぜか真っ赤になった山岡君の顔を、由紀恵は不思議そうに見た。
……どういう意味だか、いまいちよくわからない。

「山岡君が見てはいけないって……山岡君の知り合いと私が結婚するっていうこと?」

「……それも可能性としてある。……例えば相手が……その……僕……とか?」

「キャハハハッ、まさかっ! ……え?…………そうなの??」

「知らないよ! そんな未来のことを、僕が知るわけないだろっ」

「……なに怒ってるの? でも、自分で言ったんじゃない」

「はぁ~……もういい。なんか疲れた。僕はもう帰るね」

「うん、ありがと。ごめんね、二日続けて振り回しちゃって。」

山岡君は何か言いたそうだったが、由紀恵の顔を見て、何も口にせずに帰って行った。



結婚式か……
うー、男の子とつき合ったことも無いのに、そんなことを想像できるわけないじゃん。

相手が山岡君だっていったって、昨日会ったばかりのよく知らない人だよ。
まぁ……親切な人だけどさ。
いい人ではあるよね。
二日も続けてこんなおかしなことに付き合ってくれてるんだから。

あ、そう言えば今日は誕生日だって言ってたな。
なんかお礼のプレゼントをあげたほうがいいかも。
よっし、これから買いに行くか。

モールがないから、イケダの文房具屋だね。


由紀恵は駅の近くにあるイケダ文房具店に行くことにした。
隣にアラキの本屋があるので、この並びの二軒は昔から由紀恵の御用達ごようたしだ。

そういえばモールが出来てから、この店にはあんまり来てなかったなぁ。

よく使うものがいいと思ったので、黒のボールペンで少し値段の高いものを選んだ。
文房具屋を出ると、はす向かいにあるトングーのパン屋が目に留まった。

ふーむ、ボールペンだけじゃ寂しいから、ドーナツの大袋も奮発しとくかな。
育ち盛りの男の子といえば、やっぱり食い気よねー


「よしよし、こんな感じかな?」

パン屋を出て自転車に乗ろうとしたら、アラキの本屋の前で見たことがあるような男の子が立ち読みをしていた。

えーと、誰だっけ?

……あ、武ちゃんマンだ! 
丁度いいや、プレゼントを持って帰ってもらおう。


「すいませーん。武ちゃんマンじゃなくて、山岡君ですか?」

「へっ? お姉さん誰?」

あ、そうか。
私って今は、武ちゃんマンよりも年上になるのね。


「私は、後輩?じゃなくて、今は先輩っていうか……んー、もうどっちでもいいや。ええっと、遠坂由紀恵といいます。あなたのお兄さんにお世話になっているものです。今日、お兄さんの誠二さんが誕生日でしょ?」

「……ああ、そうだけど?」

「お家まで行こうかと思ってたけど、あなたを見かけたので持って帰ってもらおうと思って。これ、プレゼントです。お兄さんに渡してもらえます?」

由紀恵が声をかけてきたわけがやっと腑に落ちたのか、武史は快くプレゼントの包みを受け取ってくれた。
ドーナツの匂いがしていたからか、ニンマリと顔をほころばせる。

「へー、そういうことね。わかった、持って帰るよ」

「ありがとうー。じゃ、よろしくね!」

ラッキー。


この時由紀恵は、ラッキーと思っただけだったのだが、この出会いは後に、誠二が勘違いをするキッカケになったようである。

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。 「だって顔に大きな傷があるんだもん!」 体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。 実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。 寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。 スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。 ※フィクションです。 ※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness

碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞> 住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。 看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。 最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。 どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……? 神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――? 定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。 過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。

『 ゆりかご 』 

設楽理沙
ライト文芸
  - - - - - 非公開予定でしたがもうしばらく公開します。- - - - ◉2025.7.2~……本文を少し見直ししています。 " 揺り篭 " 不倫の後で 2016.02.26 連載開始 の加筆修正有版になります。 2022.7.30 再掲載          ・・・・・・・・・・・  夫の不倫で、信頼もプライドも根こそぎ奪われてしまった・・  その後で私に残されたものは・・。 ―――― 「静かな夜のあとに」― 大人の再生を描く愛の物語 『静寂の夜を越えて、彼女はもう一度、愛を信じた――』 過去の痛み(不倫・別離)を“夜”として象徴し、 そのあとに芽吹く新しい愛を暗示。 [大人の再生と静かな愛] “嵐のような過去を静かに受け入れて、その先にある光を見つめる”  読後に“しっとりとした再生”を感じていただければ――――。 ――――            ・・・・・・・・・・ 芹 あさみ  36歳  専業主婦    娘:  ゆみ  中学2年生 13才 芹 裕輔   39歳  会社経営   息子: 拓哉   小学2年生  8才  早乙女京平  28歳  会社員  (家庭の事情があり、ホストクラブでアルバイト) 浅野エリカ   35歳  看護師 浅野マイケル  40歳  会社員 ❧イラストはAI生成画像自作  

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

Husband's secret (夫の秘密)

設楽理沙
ライト文芸
果たして・・ 秘密などあったのだろうか! むちゃくちゃ、1回投稿文が短いです。(^^ゞ💦アセアセ  10秒~30秒?  何気ない隠し事が、とんでもないことに繋がっていくこともあるんですね。 ❦ イラストはAI生成画像 自作

処理中です...