神社のゆかこさん

秋野 木星

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第二章 ゆかこさんの一年間

雨水

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 神社の池に薄氷がはっています。

「今日も冷えるわねぇ。」

そうですね、ゆかこさん。
冷え込みが厳しい時期になりました。

ゆかこさんはフリースの上着の上にダウンジャケットを重ね着してコタツの中に入っています。

窓から、葉の落ちた紅葉の木で小鳥たちが遊んでいるのが見えました。


「鳥は元気ね。晴れた日にはいつも追いかけっこをしているわ。」

受験生も元気ですよ。
今日も大勢、参ってきています。

今の時期は私立の受験が多いようです。

神社の片隅に下げられた絵馬には合格祈願の祈りが張り付いています。

ゆかこさんは朝ご飯を食べる前に、いつも絵馬を確認して歩くのでした。

そして笑ったり頷いたりしながら、ブツブツと口の中で祈りを重ねがけして行きます。

すると念が強くなった絵馬は、ぼうっと赤く光り始めるのです。


何日も冷たい空気で震えあがる日が続いた後、ある日、ふっと寒さがやわらぎました。

その翌朝、空から暖かい雨が降って来たのです。

「まぁ、春の雨だわ。」

シトシトと降り続く雨が庭の土や田んぼを黒く染めていきます。

大気に、そして地中に、湿り気が浸透していきました。


これからは三寒四温になるんでしょうか。

「そうね。暖かい日が少しずつ増えていきそうね。」

固く締まっていた梅のつぼみが、春の雨にうたれています。

今度やわらかな陽射しがそそぐ日には、一輪ずつ花を開くのかもしれません。


遠雷のように聞こえる電車の音が、ガタガタと川を渡って

春を迎えに走っていきました。
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