神社のゆかこさん

秋野 木星

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第二章 ゆかこさんの一年間

花粉

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 梅の花が満開になった神社には、春の匂いが漂っていました。

気温がグングン上がっていくと、池の鯉たちも水面を彩りながら泳ぎ回り始めます。


「ハ、ハ、ハ、ハァクショイ!クシュンクシュン、ヘクション!」

ゆかこさん、風邪ですか?

「違うわ、花粉症よきっと。ハァクション!」

目が真っ赤になったゆかこさんは、顔中をこすりながらティッシュで鼻をかみます。

今年も花粉の季節がやって来ました。

朝から強い風が吹いていたので、山奥からたっぷりと花粉が飛んできたようです。


「もう我慢ならないわ。」

ゆかこさんは立ち上がると、神社の裏山の杉の木のてっぺんに飛び上がりました。

そこから眺めると、町中に花粉の黄色いもやがかかっているようです。

「杉の木、ひのき、花粉の木。すべてのチカチカ花粉よ集まりなさいっ!」

ゆかこさんがそう言うと、人に害をなすチカチカ花粉が渦を巻いて集まり始めました。


花粉の渦は、濃さを増してどんどんと空高く上がって行きます。

ゆかこさんの左手も、渦を押し上げるように上がって行きます。

「さぁみんな、ここで特大のくしゃみをするのよ!」

ゆかこさんが町中の人に呼びかけます。

人々は涙と鼻水を流しながら、家の外へ出てきました。


「「「ハ、ハ、ハ、ハァ~~~クション!!!」」」


ゆかこさんの右手の指揮に合わせて、町中の人が特大のくしゃみをぶちかましました。

すべてをビリビリと震わせる、空気砲のようなものすごい音がしたかと思うと、

花粉の渦を一気に宇宙まで吹き飛ばしました。


「やれやれ、これで良し。」

ゆかこさん、少し耳がツーンとするんですが・・。

「あら、それじゃあ雨でも降らせて、やわらかな音楽を聞きましょう。」

ゆかこさんが空を流れる白い雲に伝言を頼むと、薄い灰色の雨雲が町の空に集まって来ました。


ポツポツと水玉が下りてきます。

静かに増えてきた雨の雫が、屋根にあたってパラパラと音を立てます。

ザーザーザー パラパラパラ

しっとりと雨を含んだ空気が、赤く腫れあがっていた目や鼻や喉をうるおしていきます。

ツーンとしていた耳も、優しい雨の音で癒されていきます。


町中の人たちが透明な雨の音に耳を傾けています。

ホッとした空気が、すべての人を包みました。


神社の池では鯉たちが、しっぽでピチャンと雨粒をはじいて遊んでいましたよ。
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