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第一章 ガルディア都市
side ナグル=ウル=ガルディア 2
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王宮のとある一室、そこにはこの大陸の名だたる重鎮が集められていた。
この緊急の会議を提案し、司会となり話を進めようとする人物…… アルバラン=シュタインはシルバーの眼鏡を指先で押さえながら険しい顔で話し始めた。
「我が優秀な諜報部がもたらした情報はたしかに真実味が薄いようにも感じます。 しかし、かの前回の前線での戦いでは我が諜報部の成果で敵の次の攻撃目標を聞き出し、逆に罠を掛け、敵の兵を全滅に追いやったではありませんか! それは彼らのまぎれもない実績ではありませんか? 私は彼らの命がけで持ってきた情報を決して無駄にしないためにも、今この場で彼らを信じるに値する存在だと言いたいのです! 彼らも我が国を愛する国民であります嘘を付く理由がございません!」
熱い思いを口にするアルバランは私の右腕として色々な戦争にも参加し、経験も積んでおる。 だが…… なにもかもうまく事が運びすぎているのではないかと不自然に感じる事もある気がするのだ。
他の者はアルバランの熱き演説を聞き口々に、「アルバラン殿は部下思いのあるお方だな」「その手腕はさすがだ」と感嘆の声を漏らしていた。
「この戦争は十二年にも及び、我が国の兵力が上でも決して油断などできませぬ! ここは同じ力を持つ勇者を我が国でも必要とするべきではありませんか?」
その言葉にひどく動揺した。
「そう、我が国でも勇者召還を行いましょう!」
なんと残酷な言葉をお前は吐くのか、お前は私の一番の友人としていてくれるのではなかったのか。
周囲の者が不安そうな顔をして答える。
「しかし我が国には巫女なぞいるのか……」「赤い目のものなぞ全く見かけんが……」
当たり前だ。我が娘サーシャは巫女と分かった日にすぐに目の色を変える施術をしておる。
赤い目は巫女の証、そんなわかりやすい情報を一番最初に潰すべくあらゆる秘匿をして施術していた。
サーシャの目は今は金色の目をしておる。
「ちゃんと巫女はいますよ。 国王の娘であるサーシャ=ウル=ガルディアは巫女である」
高らかに宣言するアルバランに怒りが込みあがる、これはしてやられた。
こいつはどこでその情報を知ったのだ。友人ではあったが私が話した記憶はないというのに……
「不思議そうにしてますね国王、あの施術を行ったのは誰でした? まぎれもない私がその施術を行ったのですよ」
ざわめきが大きくなる、それもそのはずだ戦争の兵器になりうる巫女を秘匿してきたのだから。
眩暈がしそうだった。とてつもなく叫びたい気持ちに駆られた。
あの時サーシャが発病したときは検査の為、王宮の医師に診てもらったはずなのに…… 何故お前が?
いろいろな疑問が浮かんでいく…… だが一つだけわかることがあるあの医師はあの後から全く見てはいない。 いやむしろ私は誰に見せたのだ!?
不確かな記憶のつぎはぎ、鮮明にあの時の事は覚えているはずなのだが…… これは…… 私の記憶が偽造されていたというのか……
そもそも医師がいたように思いこまされていた。
あの時から全ては始まっていたというのか……
ただ私はアルバランを眺めることしかできなかった。
全ては遅すぎた。
「となりますと…… 勇者の儀はいつ頃開始したほうがいいでしょうかね?」
とある大臣が答える。
「三日じゃ」
「三日…… だと……」
いくらなんでも早すぎる。 そう思ったが、教皇の顔はいたって冷静に話した。
「もう地方にいる騎士団の隊長各には伝えておる! 今こちらに向かってきており到着するのに三日かかるそうじゃ」
教皇 ドンナム=イルレシアはそのしわがれた声で話す。
ドンナムは情報伝達の能力が国で唯一使える。その魔法の力だろう息もあがっていて、水をしきりに飲んでいた。
「では三日後に勇者の儀を執り行うように手配いたしますので」
「他にも方法はないのか!?」
駄目だとはわかっていても言わなければならないことがある。
「ナグルよ…… お主のわがままで国を動かせると思ったら大間違いじゃぞ! 国王であろう! 私情はもちこむでない!」
厳しい口調で言い放つドンナム。
何もかも破壊してしまいたかった。 この煩わしい地位など捨ててしまいたかった。
あの愛おしい娘を助けれるならいっそのこと。
だができるわけがない、そんなことはわかっていた。
恨みを込めた目でアルバランを睨みつけることしかできない。
「おお、怖いですな。 そんな目をなさらないでくださいよ、ちゃんと三日後の勇者の儀には国王にいてもらわなくては困りますから」
「お前はこの我に娘が目の前で死ぬのを見届けろと申すか!」
「娘? はてさてあのサーシャ=ウル=ガルディアは勇者の新たなる器になるのですよ、死ぬわけではございません。 そもそも最初から巫女になった時点で人間ではないのですから」
「貴様……!!!」
怒りでどうにかなりそうだった。 今すぐに殺してやりたい気持ちになる。 アルバランの胸倉を掴み叫ぶ。
「貴様それでも父親なのか!!」
「私には家族など低俗な物などいませんよ」
「それまでじゃ! お主らいい加減にしろ! 三日後に勇者の儀を行う! これは決定事項じゃ!以上をもって会議は解散じゃ」
ドンナムが場を治めたが、ざわめきはしばらく止むことはなかった。
私はアルバランに嵌められたのだ。
記憶を改造され、いま私が手を出せないタイミングで最高のカードを切ってきた。
なんて最悪なんだ、あの時から私を陥れようとしていたのか……
勇者召喚は三日後、すでに取り返しのつかないところまで来ているようだ。
ユリア…… 私は何も守ることなど出来なかった……
せめて…… 私は……
この緊急の会議を提案し、司会となり話を進めようとする人物…… アルバラン=シュタインはシルバーの眼鏡を指先で押さえながら険しい顔で話し始めた。
「我が優秀な諜報部がもたらした情報はたしかに真実味が薄いようにも感じます。 しかし、かの前回の前線での戦いでは我が諜報部の成果で敵の次の攻撃目標を聞き出し、逆に罠を掛け、敵の兵を全滅に追いやったではありませんか! それは彼らのまぎれもない実績ではありませんか? 私は彼らの命がけで持ってきた情報を決して無駄にしないためにも、今この場で彼らを信じるに値する存在だと言いたいのです! 彼らも我が国を愛する国民であります嘘を付く理由がございません!」
熱い思いを口にするアルバランは私の右腕として色々な戦争にも参加し、経験も積んでおる。 だが…… なにもかもうまく事が運びすぎているのではないかと不自然に感じる事もある気がするのだ。
他の者はアルバランの熱き演説を聞き口々に、「アルバラン殿は部下思いのあるお方だな」「その手腕はさすがだ」と感嘆の声を漏らしていた。
「この戦争は十二年にも及び、我が国の兵力が上でも決して油断などできませぬ! ここは同じ力を持つ勇者を我が国でも必要とするべきではありませんか?」
その言葉にひどく動揺した。
「そう、我が国でも勇者召還を行いましょう!」
なんと残酷な言葉をお前は吐くのか、お前は私の一番の友人としていてくれるのではなかったのか。
周囲の者が不安そうな顔をして答える。
「しかし我が国には巫女なぞいるのか……」「赤い目のものなぞ全く見かけんが……」
当たり前だ。我が娘サーシャは巫女と分かった日にすぐに目の色を変える施術をしておる。
赤い目は巫女の証、そんなわかりやすい情報を一番最初に潰すべくあらゆる秘匿をして施術していた。
サーシャの目は今は金色の目をしておる。
「ちゃんと巫女はいますよ。 国王の娘であるサーシャ=ウル=ガルディアは巫女である」
高らかに宣言するアルバランに怒りが込みあがる、これはしてやられた。
こいつはどこでその情報を知ったのだ。友人ではあったが私が話した記憶はないというのに……
「不思議そうにしてますね国王、あの施術を行ったのは誰でした? まぎれもない私がその施術を行ったのですよ」
ざわめきが大きくなる、それもそのはずだ戦争の兵器になりうる巫女を秘匿してきたのだから。
眩暈がしそうだった。とてつもなく叫びたい気持ちに駆られた。
あの時サーシャが発病したときは検査の為、王宮の医師に診てもらったはずなのに…… 何故お前が?
いろいろな疑問が浮かんでいく…… だが一つだけわかることがあるあの医師はあの後から全く見てはいない。 いやむしろ私は誰に見せたのだ!?
不確かな記憶のつぎはぎ、鮮明にあの時の事は覚えているはずなのだが…… これは…… 私の記憶が偽造されていたというのか……
そもそも医師がいたように思いこまされていた。
あの時から全ては始まっていたというのか……
ただ私はアルバランを眺めることしかできなかった。
全ては遅すぎた。
「となりますと…… 勇者の儀はいつ頃開始したほうがいいでしょうかね?」
とある大臣が答える。
「三日じゃ」
「三日…… だと……」
いくらなんでも早すぎる。 そう思ったが、教皇の顔はいたって冷静に話した。
「もう地方にいる騎士団の隊長各には伝えておる! 今こちらに向かってきており到着するのに三日かかるそうじゃ」
教皇 ドンナム=イルレシアはそのしわがれた声で話す。
ドンナムは情報伝達の能力が国で唯一使える。その魔法の力だろう息もあがっていて、水をしきりに飲んでいた。
「では三日後に勇者の儀を執り行うように手配いたしますので」
「他にも方法はないのか!?」
駄目だとはわかっていても言わなければならないことがある。
「ナグルよ…… お主のわがままで国を動かせると思ったら大間違いじゃぞ! 国王であろう! 私情はもちこむでない!」
厳しい口調で言い放つドンナム。
何もかも破壊してしまいたかった。 この煩わしい地位など捨ててしまいたかった。
あの愛おしい娘を助けれるならいっそのこと。
だができるわけがない、そんなことはわかっていた。
恨みを込めた目でアルバランを睨みつけることしかできない。
「おお、怖いですな。 そんな目をなさらないでくださいよ、ちゃんと三日後の勇者の儀には国王にいてもらわなくては困りますから」
「お前はこの我に娘が目の前で死ぬのを見届けろと申すか!」
「娘? はてさてあのサーシャ=ウル=ガルディアは勇者の新たなる器になるのですよ、死ぬわけではございません。 そもそも最初から巫女になった時点で人間ではないのですから」
「貴様……!!!」
怒りでどうにかなりそうだった。 今すぐに殺してやりたい気持ちになる。 アルバランの胸倉を掴み叫ぶ。
「貴様それでも父親なのか!!」
「私には家族など低俗な物などいませんよ」
「それまでじゃ! お主らいい加減にしろ! 三日後に勇者の儀を行う! これは決定事項じゃ!以上をもって会議は解散じゃ」
ドンナムが場を治めたが、ざわめきはしばらく止むことはなかった。
私はアルバランに嵌められたのだ。
記憶を改造され、いま私が手を出せないタイミングで最高のカードを切ってきた。
なんて最悪なんだ、あの時から私を陥れようとしていたのか……
勇者召喚は三日後、すでに取り返しのつかないところまで来ているようだ。
ユリア…… 私は何も守ることなど出来なかった……
せめて…… 私は……
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