魔法力0の騎士

犬威

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第一章 ガルディア都市

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 国王演説が始まり、私はある男を追って路地に入ってきた。


「よぉ、久しぶりじゃのう」


 私は後ろから声をかけられ慌てて振り返る。


「貴様、何をしに来た」


 悪感情が駆け巡る。怒気を含んだ声音でたずねる。


「フハハ、なぁに演説を見に来たに決まっているだろう」


 黒いフルプレートの男は後ろに大きな長剣を背負い堂々と路地から現れた。
 一定の距離を保ち、剣のふちに手をかける。


「そうくでない、今日は戦うために儂は来たわけではない」

「では何故そんな格好をしている」

「まぁこちらにも理由があるんでのう」


 額に油汗がにじむ。今は好戦的ではないがいざ戦闘になるといささか私のほうが不利である。
 前回は仲間の助けによってなんとか退しりぞけることができたが、実力は遥かにあちらのほうが上だ。


「それよりもまだ名乗っておらんかったのう、儂はユーアール=ガルブエリ、ちまたでは爆炎のユーアールとまで言われておるそうじゃが」

「なぜ、私に名を晒した」


 トリシアさんから聞いていた通りの男で間違いないようだ。しかし何故前回は名を伏せていたんだ……


「初めて会ったときは儂にすぐに殺されるようであるのならば名乗る必要性もないと思ったのじゃが、小僧には名乗る価値がありそうでな、儂は強い者が好きだ。フハハハ、戦いこそが儂の生きる意味じゃからのう」


 大きな声で笑うユーアールは根っからの戦闘狂らしい。今も隙のあるような出で立ちなのにその視線は私をとらえて動かない。


「ああ、小僧は名乗らなくてもよいぞ既に知れ渡っておる」


 私の情報はすでに敵に筒抜けのようだ。ますます分が悪くなっていくのを感じる。


「これは忠告じゃ小僧、世の中には知らなくていいことがある知らないほうが幸せなことがな」

「いったい何を……」

「しかし、残念じゃのう。小僧はここで死ぬ運命さだめのようじゃ」


 ユーアールが指さすそこは今まさに国王が演説をしている舞台だ。
 注意をユーアールに向けつつ指さすほうを見やる。
 ここからだと演説の声は遠いが聞こえている。演説する国王の姿もちょうど見ることができる位置にいた。


「宴が始まるぞ」


 舞台の背後、国王が演説するその後ろに私と同じ顔と服装をした者がいる。


「なんだ!? これは……」


 私がもう一人いる。そのことに動揺が隠し切れない。すぐさま危険を伝えにシーレスを起動させるが妨害されているようでまったく繋がらない!

 なんでこんな時に!!

 すぐさま足を動かそうとするがユーアールにより道をふさがれてしまう。

 くそっ!これは私を嵌めるための罠か!!


「まあ、少しくらい見ていってもいいんじゃないかのう」


 ユーアールは長剣を引き抜き私に突きつける。


 私をこの場に留まらせるつもりなのか!?

 視線を再び舞台に移す、次の瞬間私の恰好をした者が剣を引き抜き、国王を一刀両断の元切り捨てた。
 周囲に悲鳴と怒号が響き渡る。


「貴様!!!」

 
 やられた!!これはやはり罠だったのだ!!


「フハハハ、どうだ? もうお前はこの都市では立派な犯罪者に当たるぞ」

「違う!!!」


「違うも何も小僧と同じ顔と恰好をした者だ。周囲にはお主がやったと思っているはずだぞ、それにほら聞こえるだろう……」


 舞台にあった拡声器のマジックアイテムだろう、その音が大きく周囲に響く。


「全ての騎士に命令をする!! アリア=シュタインを見つけ次第処刑しろ!! これは国家転覆罪だ!」


 その声はとても聞き覚えのある声であった。


「父…… 様……」

 全身から血が引いていくのがわかった。

 そう我が父、アルバラン=シュタインの声であった。


「これで、儂の役目もしまいじゃ、最後に戦いたかったが、儂も今は自由にできん身でのう、もしお主が生き残ることができたのなら、再び戦場で会おうぞ」

 フハハハと大きな笑い声を残し、ユーアール=ガルブエリは音もなく去っていった。

 残された私は周囲から聞こえてくる足音を頼りに別方向へ逃げなければならない! 弁解する時間すらないのか、私は心臓が飛び出そうなほど焦っていた。

 ガイム広場周辺にいてはまずい!今はなんとしても距離を稼がなくては……


 私は地面を蹴り、広場とは逆方向である南の方へ走っていく。


 この周辺には人が演説を見る為皆ガイム広場のほうへ行っているので見られる心配はないが、音を拾って逃げているのに全く迷うことなくここを目指してすごいスピードで向かってくる人がいる。

 まずいこのままだと追いつかれる。
 足の速さは強化魔法によって変えることができる。私は瞬発力はあるが魔法がないため持続力がない!追いつかれるのも時間の問題であった。


「くそっ!!なんでこんなことに!」


 それよりも第一部隊の皆は無事にいるだろうか…… おそらく関係者として捕縛されることになるだろう、処刑まではいかないはずだ。
 私は走る。願わくば誰にも見つからずこのままこの都市を去れればよいと思った。
 ふと脳裏にターナーさんの家が浮かぶ。


「あそこなら……」

 淡い希望を抱き、進もうとしたその時頭上ずじょうから大きな斧を振り下ろしてきている一人のギガントが屋根から落ちてきていた。
 咄嗟とっさに次元収納から盾を取り出し直撃はまぬがれたが、威力が大きすぎてアリアは大きく吹き飛ばされ付近の民家の壁に叩きつけられる。


「ぐぅううう!」


 体を叩きつけられた衝撃で肺の空気が押し出される。


 HP3500/3240
 MP   0/   0


 アルタナ測定機に自分の体力が映し出される。
 ふらつき、くずれた壁から這い出ると、そこには絶望が待っていた。


「……テオ……」


 重装備に身を固め、様々な武器を携えたガルディアンナイト団長テオ。
 その風貌は歴戦の戦士の如く鍛え抜かれた肉体にギガントならではの高い身長と比類なきパワー。



 アリアは絶望を感じながら立ち向かうため、命を守るため武器を構えるのであった。


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