魔法力0の騎士

犬威

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第一章 ガルディア都市

side オクムラタダシ ~改竄~

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 王宮の中は静まり返り僕たちの足音だけがやけに響いた。
 それもそのはずだ駆けつけてきた衛兵は僕とユーアールさんで切り捨て、振り返ればそこは血の海と化していた。
 真っ白であった王宮の壁や天井は衛兵の血で汚れ、靴はすでに血に濡れていた。


「小僧もだいぶ肝が据わっとるのう、まぁ今はそっちの彼がでているおかげか」

「ええ、よく気が付きましたねユーアールさん、あまりわからないと思ったんですけどねぇ」

「それだけ覇気が違えば普通にわかるわ、日常はあっちで戦闘になるとこっちの人格が出るのか、便利じゃのう」

「あっちの自分は嫌いでね、いつかは僕が支配権を持ちたいんだけど」


 ひとつの体に二つの心、あれはいったいいつから出てきたんだろうか?それとも今の自分がいったいいつから出来たのかのほうが正しいのか?
 考えても答えはきっと優希に繋がるんだろうな、僕は僕だ、だけど僕はもうすでに壊れてるのかもな…


「クハハハ、小僧も面白いのう、しかしちと殺しすぎた、後でクリーンをかけていかんと、これから住む場所が血で汚れてるとかシャレにならんからのう、儂はこう見えて綺麗好きなのじゃ」

「意外です、あまり気にしなそうなのに」

「よくジェダイにも言われるわ!」


 しかし僕たちが返り血で濡れているというのにアルバランさんは一滴も返り血を浴びずに綺麗なスーツ姿のままだ。
 それだけレベル差ってもんがあるのか…

 それにしてもさっき合流したこの黒いフードの奴は一回も喋らないし、戦闘にも参加しないしなんなんだ?
 ユーアールさんも何も言わないし、まぁわかってるのはこいつが記憶を改竄できるっていうことだけだな、ようは僕達の監視役でもあるわけか。



 アルバランさんは眼鏡を指で直すと、おもむろに振り返り、僕たちに話しかけた。


「ここが国王の居る部屋だよ」


 立派な金の装飾が施された扉はいかにも王族の部屋のドアを彷彿させる。
 これだけ長い廊下を歩いてきてこの部屋だけが他とは違う作りになっている。

 アルバランさんがドアを開けるとそこには椅子に座った無気力な中年男性が酒を飲みうなだれていた。
 これが国王、ずいぶんイメージと違うんだな、どうみても国のトップという見た目ではないぞ。


「夜分に失礼するよ、ナグル=ウル=ガルディア国王」

「…ついに来たか」


 国王はそのままアルバランさんを一瞥すると再び酒をあおった。


「今更なんのようだ、儂の首を取りに来たのか?」

「そんな物騒な、今日は国王に生きる意味を与えに来たのですよ」

「生きる意味だと…?馬鹿にするのも大概にしろよアルバラン!!娘をあんな風にしておいてもはや儂に生きる意味などないわ!!ゲホッ!ゴホッ!!」

「さぞ辛い思いをしたでしょう、その痛み消し去ってあげましょう」

「貴様!!何を」

「覚えて…いませんよね、来なさい*****」

「まさか…やめろ!!!来るんじゃない!!これは、これだけは忘れたくない!!」


 国王は急に黒いフードの奴を見るなり慌てて椅子から転げ落ち、後ずさるように青い顔でそいつを見る。


「察しがいいですね、そんなに辛く苦しい思い出なら最初から無いほうが幸せでしょう」

「いっそのこと儂を殺せ!!頼む!!お願いだ!!家族の記憶を忘れるくらいなら死んだほうがましだ!!!」


 国王は叫ぶが、アルバランさんは相変わらず冷たい瞳で見下ろし、黒いフードの奴に指示をする。
 なんて残酷な仕打ちだ、国王は涙を流し、額を床に叩きつけて頼み込む。
 額からは血が流れ出て、顔は血で真っ赤に染まっている。


「お願いだ!!なんでもする!!頼むからこの記憶だけは……」


 白い光は無情にも国王を包み込み、国王はさっきまでの表情からがらりと変わった。
 まるで別人だ、そう思えるほど国王の顔は生気に満ち溢れている。


「我が友、アルバランよ、よく来た歓迎するぞ!!」

「ああ、ナグル、今日は頼みがあってね、この王宮を私達にくれないか?」

「ああ、そういう約束だったな、儂が友の約束を忘れるわけがないだろう?もちろんだ、好きな部屋を使いたまえ」

「ありがとう、感謝するよナグル、それと今後は私の指示で動いてもらっていいか?」

「当り前じゃないか、友の為だ、儂も尽力しよう」


 なんだ、この茶番劇は……
 見ているこっちが吐き気がする。


「これで今後は王宮を拠点として、動けるな」

「はぁ…まあ、やばいのはよくわかりましたよ」


 それから僕たちは王宮に住むことになり今日までに至る。


 ーーーーーーーーーー
 ーーーーーー
 ーー


「これで、騎士団もほぼ崩壊して、僕達が移るだけになりましたね」

「まあそううまくいくとは限らないのが人生ってもんじゃよ…っとホレ、ナイトは貰うぞ」

「グッ!?マタ…!?…貴様、私がよそ見した隙に動かしたダロ?」

「あ、」

「バレてんだよ!!そのナイト戻セ!!」

「チッ…よそ見してるほうが悪いんじゃよ」

「緊張感が全くないなぁ」


 僕は深いため息を吐いた。
 すると部屋の隅に闇が広がり中から一人歩いて出てくる。


「あら、随分とお暇なのね」


 それは金色の髪を幾重にも束ね、濃いめの化粧に綺麗な美貌の怪しげな雰囲気漂う派手ないで立ちの女性が現れた。
 胸元を強調し、広げた服装は日本でいう花魁にどこか似ている。
 そして特徴的なのは頭から生えている耳が人ではないことを物語る。
 彼女は唯一の魔物であり妖狐、名をエイシャと呼ばれる女性だ。


「なんじゃ戻ったんかエイシャ」

「貴方の尻拭いをしてきたというのに、感謝の一言すらないのね」

「儂は頼んだ覚えはないぞ」

「フン、まあいいでしょう、私がアルバラン様にご寵愛を頂ける機会ができたことと思っておきましょう」


 エイシャさんはソファーに腰かけると、気だるそうにユーアールさんに話しかけた。


「アルバラン様はまだお戻りにならないの?」

「ホレ、噂をすれば戻ってきたぞ」


 部屋の隅の闇が広がり、中から眼鏡をかけた騎士鎧姿のアルバランさんが出てくる。



「アルバラン様~」


 エイシャさんはさっきまでの動きとは違い機敏にアルバランさんのところへ駆けていく。


「エイシャか、お前の活躍見事だったぞ、褒美を授けよう、何が良いのだ」

「はい、アルバラン様のご寵愛を頂けたら私はさらにこれからもアルバラン様に尽くします」

「そうか、その程度造作もないな、付いてこいエイシャ」

「は、はい」


 ようはこれからお楽しみというやつだろう、アルバランさんとエイシャさんは奥にある部屋へと入っていった。


「小僧、気になるか?」

「なっ!?き、気になりません!!」

「クハハ、青いのう」

「あんな交配ナド何も面白くナイ」

「エイシャなら頼めばしてもらえると思うぞ?」

「ぼ、僕は心に決めた人がいるんです!」

「クハハ、まあ嫌いじゃないぞ」


 フン、なんとでも言えばいい、僕は君じゃなきゃダメなんだ、絶対に召喚して見せるからな優希!





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