姉弟日和

我妻 夕希子

文字の大きさ
上 下
9 / 28

第3話・歪みだす糸①

しおりを挟む


本屋に着くと、念の為に姉さんの姿を探す。
店内は広くは無いから、もしいたら直ぐに見付けれる筈だ。

(やっぱり俺の方が早いな)

ホッと胸を撫で下ろすと、今度は店内をゆっくり見て回った。

この本屋は、小さい割に品揃えが抜群で凄く気に入っている。

そういえば、姉さんが探している本、此処にならあるのでは無いか?

俺は女性向けの本棚まで来ると、タイトルを指で横になぞっていく。

「確かタイトルは…」

異世界に召喚されたら、召喚先でーー

ダメだ、思い出せない。

俺は携帯を取り出すと検索をかける。

【異世界に召喚されたら、召喚先で見染められました】

多分、これだな…
コレ、だよな…

俺なら絶対、読まないであろう本のタイトルに三度見くらいした。

指でタイトルをなぞりながら探す。

あれ、この作業、何だかデジャヴ感するな

目が昏みそうな文字列に眩暈を感じ始めた頃、俺は朝のクラス分けの事を思い出していた。

「久城 理玖、か」

ぽつりと名前を呼ぶ。

「何ですか?」
「え?」

下の方から声が聞こえ、俺は上げていた顔を下ろした。

そこには、本を手にコチラを見ている女の子の姿。

「くっ、久城さん?!」
「です」

俺は驚きのあまり、二歩ほど退がった。

「先程振りなのです」
「…です」

ペコリと会釈する久城に、俺も挨拶を返す。

「中川さんは、お姉様と待ち合わせだったのでは?」

久城は、首を傾げると周りを見渡した。

「待ち合わせ場所が此処なんだ」
「なんと!」

久城の瞳が輝く。

「では、ここにいたら中川さんのお姉様にも会えるのでしょうか?」

好奇心に満ちた瞳で俺を見つめてくる。
俺は余り会わせたくないという感情が強まり曖昧な言葉を探していたら、久城の持っている本に目が行った。

「それ」

久城が持っていた本は、今まさに俺が探していた本!

「コレ知ってるのですか?」
「姉さんが探してるんだ」

久城の瞳が更に輝く。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

トを追って

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

最強幼女に懐かれたポンコツ

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:6

執事は男装令嬢!?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:47

クジラと雨宿りした猫

絵本 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

『路地裏の野良犬は皇子に成り代わる』

odo
ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

姉弟

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:10

ビールと青年とちょっと不思議な町

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

クズとセフレ

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:35

処理中です...