第四の生命体#2 奪取

岬 実

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Day40-⑫ シレント

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 イオタ達が去った後、マルセル警部は部下達と共に暴走族のヘッドの確保に向かっていた。
 その途中、スーツ姿の若い男がマルセル警部に尋ねた。

「警部、良いんですかあの人達行かせても? ヴァディム兄妹を殺すとか言ってたんじゃ?」
「大丈夫だ。一緒に居た白人は陸軍の第四生物対策部隊の者だ。公務員の端くれが居るなら、民間人のコロシなんざ見過ごすもんか。仮に殺して、そして問題になる事があれば、それは軍部の落ち度だ」
「確かに……」
「それはそれとして……、今優先すべきはコイツだ」

 マルセル警部は、消火作業中の車の脇で組み伏せられているコンダクターに歩み寄り、胸ぐらを掴んで無理矢理立たせた。

「おい、『コンダクター』だか何だか! お前の名前は!?」
「……『ガスパール=エモニエ』、だ……」
「知ってるよ。ナメてんのか」
「何で訊いた……」
「形式上の質問だからだ。気付いてないかも知れないから言っとくが、俺自身お前等にはかなりブチ切れてる。短絡的に生きる単細胞共が!」
「……野郎ぉ……! どいつもこいつも俺達を馬鹿にしやがって……! どこの国も滅んだ後で、あんな子供達がちからも持たずに生きて行けると思うか!」
「自己弁護は法廷で言え! どうせ良くても終身刑だろーがな!」
「だったら俺達の雇い主の事を教えてやるよ。何しろ奴等は――」
「立場が分かってないな。そんなもんは捜査に行き詰まったら幾らでも訊いてやる! まずは署に行こうか?」

 マルセル警部はガスパールを引っ張ってパトカーの後部座席に押し込み、続いて自らも乗り込んだ。

「出せ!」
「はい」

 マルセル警部が運転手に指示を出す。
 その瞬間、後部ガラスに丸く穴が空き、同時に運転手とガスパールの頭が砕け散り、車内は頭皮片や脳や血で真っ赤に染め上げられた。

「なっ……!? っく、後ろか!?」

 咄嗟に頭を下げて目の周りの血を拭い、そっと車の外に出て、短銃を手にして車越しに背後の様子を伺うマルセル警部。
 遠くに、走り去って行く一台のバイクが在った。

「くそっ! だから悪事なんかするもんじゃないんだ!」

 マルセル警部は車を蹴り付けた。

―――――

 ガスパールを始末し終え、バイクは人っ気の無い山道を走り続ける。運転しているのはルミエールである。
 運転しながら、無線で仲間へ連絡をする。

「皆聞いてるか? 口封じは完了した。次は壷のラドンパを狙うぞ!」
『了解!』
『おう!』
『分かった!』

 他にも大勢の返事がするのだが、ルミエールはそれを制して続ける。

「それと、シェージまで捕まったから、立場上、俺が2代目コンダクターだ! 異論は?」
『無い!』
『お前なら適任だ!』
『当てにしてるぜ!』
「よーしっ! 当面は、デイブレイクとヴァディム兄妹の潰し合いを眺める! どっちかが倒れた所で壷のラドンパを貰う!」
『おおっ!』

 ルミエールは薄ら笑い、イオタ達が乗ったヘリコの後を追って、曲がりくねった道を最高速で疾走するのだった。
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