ある日,トカゲに転生~ダンジョン暮らしの少年は外の世界の強さが分からない~

ルー

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二章 人間での生活

第十一話 冒険者としてしっかり働いた件

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~サイド 弘樹~

 俺は今大きな門の前に立っていた。
「すげえ,ここ。まさに異世界ファンタジー。もし異世界召喚されるんならここがいいぜ」

 俺はテンションが高くなっていた。それもそのはずだ。今俺がいるのは冒険者の町,エンラの入り口の前。そしてその入り口がすごく大きな門なのだ。それは真っ白で汚れを知らないような感じだった。大きさは横は俺が何人いても通れそうな幅で縦に関して言えば,近くで見上げると一番上を見るより先に俺の首の方が痛くなってしまうほどだ。

「それにしても道中色々なことがありましたね」
「ああ。だがテンプレで良かったぜ。雑魚デーモンに襲われている馬車とか,ゴブリンの群れに襲われていた商人とか。あとは俺が魔物と戦っていたらなんて素晴らしい魔法だって言って抱き着こうとしてきたおじさんとか」
「あれは驚きましたよね。弟子入りさせてくれとか言ってませんでしたか?」
「気のせいさ」
「商人の護衛をしていた傭兵も弘樹を熱っぽい目で見てましたよ」
「気のせいさ。そうだそろそろスキル形態に戻らなくていいのか」
「そうですね。今は周りにあまり人がいないのでしておきましょう」
そういうとシーは一回転し光の粒になった。
「いつ見てもきれいだよな」
そういうと弘樹は何人かがならんでいるエンラの入場口に向かうのだった。





「す,す,すげぇぇぇ。中世ヨーロッパだ。俺はこれが見たかったんだよ。洞窟なんかじゃなくて」

 俺はまたしてもはしゃいでいた。しかしそれも仕方ないかも知れない。なんせ目の前にはザ,異世界という感じの街並みが続いていたのだ。石畳の道路,石でできた家,道に並ぶ売店,そのどれもが弘樹にここは異世界だと感じさせていた。

(弘樹,しっかりしてください。ここに来たのは観光もありますが一番は実力をつけるためでしょう)

 そうだった。忘れてたよ。じゃあさっそくこの街のギルドに行くとするか。


 ここでこの街,エンラについて少し説明しておこう。このエンラは簡単に言えば平城京のような作りになっている。この街には二つの広い道路がある。それは町の真ん中で交差している。そしてそのうちの一つの道路の一番奥に領主の家がある。そしてその広い道路から細い道路が何本も枝分かれしている。

 町の周りは塀で囲まれているが出入り口は三か所ある。単純に言えば広い道路が町を囲む城壁とぶつかるところだ。ただ領主の住むところは出入り口がないので三か所になっている。

 そしてその出入り口の名前は領主の家の反対にあるところが南口,東にあるのが東口,そして残ったのが西口となっている。



 俺はギルドに来た。
「今日はどういったご用件ですか」
「えっと,この依頼を受けたいのですが」
弘樹はそう言って一枚の紙を出す。それには薬草採取と書いてあり,しっかりとEランク冒険者でも受けられる依頼だ。
「分かりました。期限は一週間で,違約金は銅貨三枚です」
「分かりました」
「それとこの薬草はこの近くのミルの丘というところで手に入れられますよ。出現する魔物はスライムとたまにゴブリンが出てくるので注意してください」
「はい」
「それではいい冒険者ライフを」
そう言われ弘樹は外に出る。そして一直線に門のところに行くと外に出た。

 いやぁ,ここはすごいな。Eランク冒険者でもうけられる依頼があるなんてな。

 そういいながら歩いているうちにミルの丘というところに来た。そこにはいろいろなところに薬草があり,ところどころスライムが歩いている,まさに初心者用の場所だった。

「それじゃあ妖精に戻ってもらってもいいかな」
「はい」

 すると弘樹のMPが少し減り弘樹の前に妖精が出てきた。
「それじゃあ俺が草をたくさん集めてくるからそれを仕分けてもらっていい?」
「分かりました」

 そう,これがこの依頼を受けたときに思いついた作戦である。もともとギルドでこの依頼を受けるときにこのミルの丘には薬草以外にもたくさんの植物が生えているということが分かっていた。だが薬草以外を持って行ってしまうと違約金が発生してしまう。そして草を取るより仕分ける方が時間がかかるということも。そこで俺は自分は草を取ってきて鑑定に仕分けてもらおうと思ったのだ。


 俺はどんどん草を持ってくる。そしてシーがどんどん分けていく。鑑定の権限を持つ彼女にとって薬草とそれ以外を分けるなど造作もないことだった。そして日が暮れる頃には薬草が山になっていた。だがそこで問題が発生する。

「これ,どうやって持って帰ろう」
 俺,何も考えていなかったけど,これはどうしよう。こんなにも出るなんて思わなかった。

「弘樹が何か案を考えていたのではないですか」
「いや,俺もシーが何かを考えているのかと」
「はー。これだから弘樹は。で,どうするんですか」
なぜかシーがマウントを取るがそれに気づかない弘樹だあった。
「そうだね,この世界にはアイテムボックスとか収納機能とかないのかな」
「ないことはないですが弘樹が獲得するのは無理だと思います。ああいうのは空間魔法にとてつもない才能があってやっとできるんですから」
「そっか。じゃあどうしよう」
「ここに空間魔法が使える人が通ればいいんですがね」
「ん? そうだシーはできないの? この前MPを手に入れたって言ってたよね」
「そういえばそうですね。まあできなと思いますがやるだけやってみます」
そういうとシーは手を前にかざした。そして急に真剣な表情を作る。これには弘樹も思わずビクッとしてしまう。そしてシーが詠唱を始める。シーいわく新しい魔法だったり難しい魔法には詠唱が効果的らしい。

「空間を司る神よ,私に力を貸しなさい。そして空間をゆがませて亞空間を作るのよ」
シーがそう言うと目の前の空間が歪み,あっさりとそこに空間の歪みができた。
「できました」
「て,えーー。難しいんじゃなかったの」
「難しかったですよ。詠唱をしないといけないくらいには」
「どこか空間の神様がかわいそうに思えてくるね」
「あれくらいの方がうまく行くんですよ」
「そうなんだ。じゅあ気を取り直して,この空間に物を入れればいいんだね」
「そうです。あと入れれば入れるほどMPがなくなりますので気を付けてください」
「それは大変だ。シーのMPって少ないんだよね」
「はい。ですがご心配なく。ちゃんと弘樹のMPを使っていますから」
「へ? ほんとだ。今もどんどんMPがなくなってっている」
「何はともあれ万事解決ですね」
「まあいっか」
俺は大量の薬草を亜空間に入れる。そして弘樹は終始マウントを取られたことにも気づかず町へと帰っていく。今日も町は平和なようだ。


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