6 / 106
❶
第一話【我慢できなかった】
しおりを挟む
ゴルァ!!!出てこいや!いるのはわかってんだぞ!
ドンドンドン!!!
ピンポンピンポンピンポンピンポン
ご近所迷惑だからはやくでてきましょー
「うるせぇ………」
いやほんと超うるせぇ
何時だと思ってんだこちとら1時間前に寝たばっかだぞ殺す気か
締め切り前のギリギリで朝寝たってのにほんともうまじで勘弁して…
「毎日毎日毎日毎日…」
ワンルーム3万5千円の家賃に見合うだけのうっすい壁とセキュリティの低さを呪いたい…
(この部屋を選んだ私が悪いんだが…)
布団に転がっていた私は思わずタオルケットを頭までかぶる。
かぶったところで隣の家のドアを叩く音も怒鳴り声も掻き消えることはないんだが
A.M 7:30
朝。ねぇ。超朝。
隣の人はもういねえんだよ…それくらいわかんねぇのか
1週間毎日朝昼晩と1時間もドンドコピンポンうるさいったら…暇なのか…?取り立て屋なのかヤクザかしらんが……
とはいえ人に言えないような職業の人になんかに関わりたくないし、2.3日ほっときゃー諦めて違うルートで居場所を割り当てると思っていたが、チンピラの猛攻はまったく衰えず、今日で7日目に入る。
こうしている間にもインターホンの音もドアを叩き破りそうなノックも怒鳴り声もやまず
他のお部屋は大丈夫なのかと心配するが、さすがに1週間目だ。
こいつらが怒鳴り込む前に仕事に行ったり息をひそめたりなんだりしてこの1時間あまりをやり過ごすのだろう…。
私も本当はそうしたい。そうしたいんだが。
実はこの猛攻。日に日に時間が増しているのだ。
最初の3日間以降、大体10分から15分単位で。
安眠も仕事も妨害されてこちとら気が立ってるんだよ!!!
耐え切れずに、がばっと布団から起き上がり、デスクの上から用意していたA4用紙をつかみ、徒歩10歩のところにある玄関のドアをバン!と開けた。
ドアを開けて音の出ている右側にぐりんと向くと3人の男がいた。
今時どうなの?と思うようなサテン地のからし色のシャツとチノパン、短髪にしてるいかにもなチンピラA。
黒シャツに肩につくくらいの金髪をハーフアップにしたホストのような若いチャラ男。
紺のタイトなスーツのポケットに手を入れ、煙草をふかしながら気だるげに柵にもたれるイケメン眼鏡。
(眼鏡だけチンピラっぽくないな…)
三人ともドアを思いきり開けた私をぽかんと見てる。
が、そこはさすが裏稼業といったところか。
からし色のシャツのチンピラAが「ああん?」と声をかけた。
てかこいつらに関わりたくないのを忘れてた。
チンピラの反応に我に返り、まじまじと男たちを観察してしまったことを反省した。
ツカツカと三人の前1m(といってもたかだか4歩くらいだが)のところまで行き
一番手前にいたスーツの男にA4用紙を突き出した。
「なんだ、お前」
チンピラAが地声よりも低い、ドスのきいた声を出しながら下から上へ素早く首を振りながら2度見る。
受け取ろうとしない男たちに痺れを切らし、私はスーツの男に差し出したA4用紙をバン!と体に突きつけ手を放す。
宙を舞う紙をスーツ男がパスっと手にとるのを横目で確認し、無言で部屋に戻り鍵を閉めチェーンをかける。
やることはやった。
仕事も1時間前に終えた。
ヤクザに関わるとロクな事がないのはわかっているので、あの3人が部屋から離れるのを待ったらこの部屋を出よう。そうしよう。
あのA4用紙は1週間前に夜逃げした隣の部屋の住人の現在地だ。
居場所を教えたことによって私の人生の役にたたないようなチンピラ共に興味を持たれるのは嫌だ。
けど昼夜問わず一日に何度も何時間も騒がれる近隣住民の生活も考えてほしい。
1週間も通い詰めるくらい必要な男なのだろう。何をしたのか知らんがここの住人にも近所の人たちにも、そして私にも迷惑をかけたんだ…、たとえどんな仕打ちが待っていようがその迷惑料は己で支払え、隣の住人よ。
しばらくごにょごにょと外でなにか話しているのが聞こえたが、私の部屋の前を通り、カンカンと階段を降りていくのが聞こえた。
A.M 11:30
ここ1週間、毎日怒鳴り声が開始される時間だが、やつらは来なかった。
そっとドアを開けきょろきょろと確認するが見える範囲に怪しげなやつはいなさそうである。
絶対に必要な荷物を入れたカバンを持ち、鍵をかけ、私は部屋を後にした。
この日の所業を何度恨むことになるか
このときの私はまだ知らない。
ドンドンドン!!!
ピンポンピンポンピンポンピンポン
ご近所迷惑だからはやくでてきましょー
「うるせぇ………」
いやほんと超うるせぇ
何時だと思ってんだこちとら1時間前に寝たばっかだぞ殺す気か
締め切り前のギリギリで朝寝たってのにほんともうまじで勘弁して…
「毎日毎日毎日毎日…」
ワンルーム3万5千円の家賃に見合うだけのうっすい壁とセキュリティの低さを呪いたい…
(この部屋を選んだ私が悪いんだが…)
布団に転がっていた私は思わずタオルケットを頭までかぶる。
かぶったところで隣の家のドアを叩く音も怒鳴り声も掻き消えることはないんだが
A.M 7:30
朝。ねぇ。超朝。
隣の人はもういねえんだよ…それくらいわかんねぇのか
1週間毎日朝昼晩と1時間もドンドコピンポンうるさいったら…暇なのか…?取り立て屋なのかヤクザかしらんが……
とはいえ人に言えないような職業の人になんかに関わりたくないし、2.3日ほっときゃー諦めて違うルートで居場所を割り当てると思っていたが、チンピラの猛攻はまったく衰えず、今日で7日目に入る。
こうしている間にもインターホンの音もドアを叩き破りそうなノックも怒鳴り声もやまず
他のお部屋は大丈夫なのかと心配するが、さすがに1週間目だ。
こいつらが怒鳴り込む前に仕事に行ったり息をひそめたりなんだりしてこの1時間あまりをやり過ごすのだろう…。
私も本当はそうしたい。そうしたいんだが。
実はこの猛攻。日に日に時間が増しているのだ。
最初の3日間以降、大体10分から15分単位で。
安眠も仕事も妨害されてこちとら気が立ってるんだよ!!!
耐え切れずに、がばっと布団から起き上がり、デスクの上から用意していたA4用紙をつかみ、徒歩10歩のところにある玄関のドアをバン!と開けた。
ドアを開けて音の出ている右側にぐりんと向くと3人の男がいた。
今時どうなの?と思うようなサテン地のからし色のシャツとチノパン、短髪にしてるいかにもなチンピラA。
黒シャツに肩につくくらいの金髪をハーフアップにしたホストのような若いチャラ男。
紺のタイトなスーツのポケットに手を入れ、煙草をふかしながら気だるげに柵にもたれるイケメン眼鏡。
(眼鏡だけチンピラっぽくないな…)
三人ともドアを思いきり開けた私をぽかんと見てる。
が、そこはさすが裏稼業といったところか。
からし色のシャツのチンピラAが「ああん?」と声をかけた。
てかこいつらに関わりたくないのを忘れてた。
チンピラの反応に我に返り、まじまじと男たちを観察してしまったことを反省した。
ツカツカと三人の前1m(といってもたかだか4歩くらいだが)のところまで行き
一番手前にいたスーツの男にA4用紙を突き出した。
「なんだ、お前」
チンピラAが地声よりも低い、ドスのきいた声を出しながら下から上へ素早く首を振りながら2度見る。
受け取ろうとしない男たちに痺れを切らし、私はスーツの男に差し出したA4用紙をバン!と体に突きつけ手を放す。
宙を舞う紙をスーツ男がパスっと手にとるのを横目で確認し、無言で部屋に戻り鍵を閉めチェーンをかける。
やることはやった。
仕事も1時間前に終えた。
ヤクザに関わるとロクな事がないのはわかっているので、あの3人が部屋から離れるのを待ったらこの部屋を出よう。そうしよう。
あのA4用紙は1週間前に夜逃げした隣の部屋の住人の現在地だ。
居場所を教えたことによって私の人生の役にたたないようなチンピラ共に興味を持たれるのは嫌だ。
けど昼夜問わず一日に何度も何時間も騒がれる近隣住民の生活も考えてほしい。
1週間も通い詰めるくらい必要な男なのだろう。何をしたのか知らんがここの住人にも近所の人たちにも、そして私にも迷惑をかけたんだ…、たとえどんな仕打ちが待っていようがその迷惑料は己で支払え、隣の住人よ。
しばらくごにょごにょと外でなにか話しているのが聞こえたが、私の部屋の前を通り、カンカンと階段を降りていくのが聞こえた。
A.M 11:30
ここ1週間、毎日怒鳴り声が開始される時間だが、やつらは来なかった。
そっとドアを開けきょろきょろと確認するが見える範囲に怪しげなやつはいなさそうである。
絶対に必要な荷物を入れたカバンを持ち、鍵をかけ、私は部屋を後にした。
この日の所業を何度恨むことになるか
このときの私はまだ知らない。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
535
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる