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第3話
3・これからのこと
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俺の問いかけに、八尾は「うん?」と首を傾げた。
「どうすれば、って?」
「だからさ……今の俺は『星井夏樹』でありながら『星井夏樹』じゃないっていうか、パラレルワールドからきた別人だろ?」
「おう」
「でも、それを信じてくれたのは、今んとこお前だけなんだよ。ナナセも青野も、どんなに説明しても浮気の言い訳だって思ってるみたいで」
「なるほどな」
八尾の眼差しが、遠くを見るようなものに変わった。
「こっちのお前、マジでクソみてーな言い訳ばかりしてたからな。『相手は宇宙人で「地球の思い出に」ってキスをせがまれた』とか『夢のなかの出来事だと勘違いしていた』とか『占いで「今日中にキスしないと不幸になる」って言われた』とか」
「……マジか」
また知りたくなかった事実が判明した。
こっちの俺、ほんとダメダメだな。
なんでそんな言い訳が通用するって思ってたんだろ。
「でも、ある意味それで助かった部分もあるだろ」
「どういうことだよ?」
「こっちのお前が、クソみてーな言い訳ばかりしてたからさ。お前が『パラレルワールドから来ました』って主張しても『またはじまった』で済んだんじゃねーの? じゃなかったら、今頃心療内科にでも連れていかれてただろ」
「……たしかに」
そうか、それもあり得るよな。
俺が、青野との思い出を本当に覚えていないって知ったとたん、ナナセは「病院に行こう」って騒いだわけだし。
「となると、やっぱり『こっちの世界の俺』のふりをするのが一番いいってことか」
「いいっていうか……無難ではあるよな。お前が今後どうしたいのかにもよるだろうけど」
「今後?」
「あのさ、これけっこう重要なことだと思うんだけど」
八尾の表情が、まじめなものに変わった。
「お前、ずっとこっちの世界にいたいか?」
「え?」
「それによっていろいろ変わってくるだろ。お前がこっちの世界にいつづけるつもりなら、こっちの星井になりきる必要があるけどさ。向こうの世界に戻る気でいるなら、そこまでやる必要はないんじゃねーの?」
なるほど、たしかに、
元いた世界に戻るのをあきらめるなら、俺はこっちの俺が歩んできた18年間をしっかり頭に叩き込む必要がある。だって、今後はこっちの星井夏樹になりきらなければいけないから。
でも、元いた世界に戻る気でいるなら、記憶の埋め合わせは最低限でいいんだよな。それより「戻る方法」を探さないといけないわけで。
「そっか……戻る方法……」
「ってことは、お前は『元いた世界に戻る』つもりなんだな?」
「当たり前だろ」
だって、ここは俺が生きてきた世界じゃない。似ているようでやっぱり違うし、なにより受け入れられないことが多すぎる。
俺は、どう頑張っても「尻軽クソビッチ」な俺にはなれないし、青野と付き合っていたことも、さらに「抱かれる側」だったことも、ちょっといろいろ──かなり無理だ。
でも、元いた世界の青野となら、ふつうに仲良くやっていける気がする。「妹の彼氏」としての、あいつとなら──
「となると、記憶の齟齬は最低限のとこだけ埋めるとして……とにかく、あっちの世界に戻るための方法を考えねぇとな」
八尾の言葉で、我に返った。
そうだ、今は青野のことを考えている場合じゃない。今後について、相談にのってもらっているところだろうが。
「俺、戻れるかな」
「戻れるんじゃねーの? こっちに来られたくらいだし」
「いや、そんな簡単に……」
「簡単に言ったつもりはねーよ。ただ、来られる方法があるなら、戻る方法もあるんじゃねーのってこと」
まあ、俺なりに調べてやるよ、と言いながら、八尾は早くもスマホのメモアプリに何やら打ち込みはじめた。
すげぇな、自分のことじゃないのにそんなに真剣に考えてくれるなんて。
さすが親友──
「いや、俺、今めちゃくちゃヒマだから。ヒマつぶしにちょうどいいと思って」
──あ、そうこと。
「どうすれば、って?」
「だからさ……今の俺は『星井夏樹』でありながら『星井夏樹』じゃないっていうか、パラレルワールドからきた別人だろ?」
「おう」
「でも、それを信じてくれたのは、今んとこお前だけなんだよ。ナナセも青野も、どんなに説明しても浮気の言い訳だって思ってるみたいで」
「なるほどな」
八尾の眼差しが、遠くを見るようなものに変わった。
「こっちのお前、マジでクソみてーな言い訳ばかりしてたからな。『相手は宇宙人で「地球の思い出に」ってキスをせがまれた』とか『夢のなかの出来事だと勘違いしていた』とか『占いで「今日中にキスしないと不幸になる」って言われた』とか」
「……マジか」
また知りたくなかった事実が判明した。
こっちの俺、ほんとダメダメだな。
なんでそんな言い訳が通用するって思ってたんだろ。
「でも、ある意味それで助かった部分もあるだろ」
「どういうことだよ?」
「こっちのお前が、クソみてーな言い訳ばかりしてたからさ。お前が『パラレルワールドから来ました』って主張しても『またはじまった』で済んだんじゃねーの? じゃなかったら、今頃心療内科にでも連れていかれてただろ」
「……たしかに」
そうか、それもあり得るよな。
俺が、青野との思い出を本当に覚えていないって知ったとたん、ナナセは「病院に行こう」って騒いだわけだし。
「となると、やっぱり『こっちの世界の俺』のふりをするのが一番いいってことか」
「いいっていうか……無難ではあるよな。お前が今後どうしたいのかにもよるだろうけど」
「今後?」
「あのさ、これけっこう重要なことだと思うんだけど」
八尾の表情が、まじめなものに変わった。
「お前、ずっとこっちの世界にいたいか?」
「え?」
「それによっていろいろ変わってくるだろ。お前がこっちの世界にいつづけるつもりなら、こっちの星井になりきる必要があるけどさ。向こうの世界に戻る気でいるなら、そこまでやる必要はないんじゃねーの?」
なるほど、たしかに、
元いた世界に戻るのをあきらめるなら、俺はこっちの俺が歩んできた18年間をしっかり頭に叩き込む必要がある。だって、今後はこっちの星井夏樹になりきらなければいけないから。
でも、元いた世界に戻る気でいるなら、記憶の埋め合わせは最低限でいいんだよな。それより「戻る方法」を探さないといけないわけで。
「そっか……戻る方法……」
「ってことは、お前は『元いた世界に戻る』つもりなんだな?」
「当たり前だろ」
だって、ここは俺が生きてきた世界じゃない。似ているようでやっぱり違うし、なにより受け入れられないことが多すぎる。
俺は、どう頑張っても「尻軽クソビッチ」な俺にはなれないし、青野と付き合っていたことも、さらに「抱かれる側」だったことも、ちょっといろいろ──かなり無理だ。
でも、元いた世界の青野となら、ふつうに仲良くやっていける気がする。「妹の彼氏」としての、あいつとなら──
「となると、記憶の齟齬は最低限のとこだけ埋めるとして……とにかく、あっちの世界に戻るための方法を考えねぇとな」
八尾の言葉で、我に返った。
そうだ、今は青野のことを考えている場合じゃない。今後について、相談にのってもらっているところだろうが。
「俺、戻れるかな」
「戻れるんじゃねーの? こっちに来られたくらいだし」
「いや、そんな簡単に……」
「簡単に言ったつもりはねーよ。ただ、来られる方法があるなら、戻る方法もあるんじゃねーのってこと」
まあ、俺なりに調べてやるよ、と言いながら、八尾は早くもスマホのメモアプリに何やら打ち込みはじめた。
すげぇな、自分のことじゃないのにそんなに真剣に考えてくれるなんて。
さすが親友──
「いや、俺、今めちゃくちゃヒマだから。ヒマつぶしにちょうどいいと思って」
──あ、そうこと。
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