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第4話

1・あれから数日

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 俺がこっちの世界に来る前日の、空白の時間を思い出したい。そこに、俺が元の世界に戻るためのヒントが隠されているかもしれない。
 なのに、数日経っても俺は何も思い出せないままだった。あいかわらず、昼休み以降の記憶は真っ白で、そこだけぽっかり抜き取られたかのようだ。
 ついでに言うと、青野ともあれから顔を合わせていない。
 あいつ、どうしてんのかな。
 ちゃんと元気にやってんのかな。
 で、それとなくナナセに探りを入れてみた。

「青野? ふつうだよ。昨日も学食でカツ丼大盛り食べてたし」

 あーそっか、そういう感じ。
 なんだ、めちゃくちゃ元気じゃん。つーか、あいつ意外と大食いなんだな。パッと見、全然そんな感じじゃないのに。
 よかった、って思うべきなんだろう。
 なのに、なぜか胸がモヤモヤする。
 何だ、これ。俺、青野にずっとしょんぼりしていてほしかったのか?

(そんなわけない)

 あいつが元気なほうがいいに決まってる。
 俺としては、傷つけたくて傷つけたわけじゃないんだし。

(つーか、冷静に考えてみたらおかしくね?)

 西階段でのあれこれは、青野が俺につっかかってきたことが原因だ。
 そりゃ、俺の言い方もキツかったかもしれねーけど、それほどおかしなことを言ったつもりはないし、よくよく考えてみたら、つっかかってきたあいつを返り討ちにしただけじゃねーか。

(だからって、傷つけたかったわけじゃねーけど)

 ああ、くそ。ダメだ、何がなんだかわかんねぇ。
 結局、俺は青野にどうなってほしいんだろう。
 「傷ついてほしくない」──これは間違いない。
 「落ち込んでいてほしい」──これは違う。違うはずだ。
 なのに、あいつが元気だって知ってモヤモヤしている。本当なら喜ぶべきことなのに、なんで素直に喜べないんだろう。
 そんなことをグルグル考えていたら、ナナセが「お兄ちゃんさぁ」と探るような目を向けてきた。

「もしかして、青野とよりを戻したかったりする?」
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