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第3話
6・奮起
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帰宅後、私は買ってきたばかりの雑誌をめくっていた。
おしゃれ・モテ・モテ・おしゃれ、みたいな、綾が夢中になって隅々まで読んでいそうなやつ。だって、表紙に「今、クール系男子が熱い!」って書いてあったから。
でも──
「ダメだ、つまんなさすぎる」
どんなに読んでも、頭に入ってこない。ちっとも共感できない。
でも、せっかく550円も払ったんだ。何かひとつでもヒントを掴まないと。
「よし、もう一回読もう」
私は、改めて特集ページを開いてみた。『みんなの知ってる「クール系男子」教えて!』──まずはこの記事からだ。
──「超モテのI先輩。みんな彼のことを知りたいのに、いつもはぐらかされるから謎は深まるばかり。でも、そこが好き」
なにこれ。何を聞いてもはぐらかすのは、後ろ暗いことがあるからじゃないの?
──「同じクラスのKくんは、他の男子がワイワイ騒いでいても、見向きもしないで自分の世界に浸っている。まさにクール系」
それ、ただのオタクでは?
それか協調性がないとか。
──「美術部のJくんは、いつも腕組して窓辺に寄りかかっているんだけど、その顔がすごくクール系」
でも、そういう人が心までクールとは限らないよね? 窓辺に寄りかかりながら「やべー腹減ったー」とか思っているかもしれなくて──
「はぁ……」
ダメだ、どのページを読んでもピンとこない。
唯一理解できたのは「クール系男子」と間中くんは真逆だということ。
なにせ、クラスで誰かが騒いでいたら「なになに?」って駆け寄るのが間中くんだ。女子に質問されれば、ニコニコしながら聞かれていないことまで答えそうだし、腕を組んで窓辺に寄りかかっていても、すぐに男子に「なにやってんだよ」って声をかけられそう。
(そんな彼が「クール系男子」……)
無理だ。ハードルが高すぎる。
しかも、本人は「演技なんて無理」って半ばいじけてしまっている。
(まいったな)
だんだん面倒くさくなってきた。
やっぱり断ろうかな。
どうせうまくいかないなら、あれこれ考えているこの時間がもったいないし、間中くんも無駄な努力をしたくないだろうし──
なんて考えていたら、勢いよく部屋のドアが開いた。
「友香、電子辞書どこ?」
いやいや、お姉ちゃん。
その前にやるべきことがあるでしょ。
「あのさ、前から言ってるけどちゃんとノックしてからドアを開けて」
「えーいいじゃん、家族なんだし。それより電子辞書貸して。私の、電池が切れたっぽくてさー」
勝手に机をあさろうとしたお姉ちゃんは、ふいに「あれ?」と手を止めた。
「めずらしいね、あんたがそういう雑誌読んでるの」
「ああ、これ……ちょっといろいろあって」
適当に言葉を濁したのに、お姉ちゃんは「えっ」と食いついてきた。
「もしかして、好きな子ができたとか?」
「違う」
「じゃあ、ヘアスタイル特集目当て? それともモテコーデ? 着まわし特集?」
ああ、もう面倒くさい!
「クール系!」
「えっ」
「クール系男子特集!」
「ってことは、あんた、やっぱり……」
「違う! 私が好きなんじゃない!」
恋をしているのは別の人!
私は、アドバイスを頼まれただけ!
思わずそう力説すると、お姉ちゃんはポカンとしたように私を見た。
それから「アドバイス……友香が……」とうわごとのように呟いたかと思うと、
「あははっ、なにそれ!」
いきなり、ものすごい大声で笑い出した。
「無理無理、絶対に無理! 友香に恋のアドバイスなんて、できるわけないじゃん!」
は? なんでよ。
「だって恋愛したことないでしょ」
「そんなの関係ない」
「あるでしょ、大有り! 恋愛経験ないくせにどんなアドバイスをするわけ?」
「それは……そういう本を読むとか……」
「出たよ、本! それしかないもんね」
お姉ちゃんの口元に、嫌みったらしい笑みが浮かんだ。
「だって初恋もまだでちゅからねぇ、誰かさんは」
この一言で、私の心に火がついた。
おしゃれ・モテ・モテ・おしゃれ、みたいな、綾が夢中になって隅々まで読んでいそうなやつ。だって、表紙に「今、クール系男子が熱い!」って書いてあったから。
でも──
「ダメだ、つまんなさすぎる」
どんなに読んでも、頭に入ってこない。ちっとも共感できない。
でも、せっかく550円も払ったんだ。何かひとつでもヒントを掴まないと。
「よし、もう一回読もう」
私は、改めて特集ページを開いてみた。『みんなの知ってる「クール系男子」教えて!』──まずはこの記事からだ。
──「超モテのI先輩。みんな彼のことを知りたいのに、いつもはぐらかされるから謎は深まるばかり。でも、そこが好き」
なにこれ。何を聞いてもはぐらかすのは、後ろ暗いことがあるからじゃないの?
──「同じクラスのKくんは、他の男子がワイワイ騒いでいても、見向きもしないで自分の世界に浸っている。まさにクール系」
それ、ただのオタクでは?
それか協調性がないとか。
──「美術部のJくんは、いつも腕組して窓辺に寄りかかっているんだけど、その顔がすごくクール系」
でも、そういう人が心までクールとは限らないよね? 窓辺に寄りかかりながら「やべー腹減ったー」とか思っているかもしれなくて──
「はぁ……」
ダメだ、どのページを読んでもピンとこない。
唯一理解できたのは「クール系男子」と間中くんは真逆だということ。
なにせ、クラスで誰かが騒いでいたら「なになに?」って駆け寄るのが間中くんだ。女子に質問されれば、ニコニコしながら聞かれていないことまで答えそうだし、腕を組んで窓辺に寄りかかっていても、すぐに男子に「なにやってんだよ」って声をかけられそう。
(そんな彼が「クール系男子」……)
無理だ。ハードルが高すぎる。
しかも、本人は「演技なんて無理」って半ばいじけてしまっている。
(まいったな)
だんだん面倒くさくなってきた。
やっぱり断ろうかな。
どうせうまくいかないなら、あれこれ考えているこの時間がもったいないし、間中くんも無駄な努力をしたくないだろうし──
なんて考えていたら、勢いよく部屋のドアが開いた。
「友香、電子辞書どこ?」
いやいや、お姉ちゃん。
その前にやるべきことがあるでしょ。
「あのさ、前から言ってるけどちゃんとノックしてからドアを開けて」
「えーいいじゃん、家族なんだし。それより電子辞書貸して。私の、電池が切れたっぽくてさー」
勝手に机をあさろうとしたお姉ちゃんは、ふいに「あれ?」と手を止めた。
「めずらしいね、あんたがそういう雑誌読んでるの」
「ああ、これ……ちょっといろいろあって」
適当に言葉を濁したのに、お姉ちゃんは「えっ」と食いついてきた。
「もしかして、好きな子ができたとか?」
「違う」
「じゃあ、ヘアスタイル特集目当て? それともモテコーデ? 着まわし特集?」
ああ、もう面倒くさい!
「クール系!」
「えっ」
「クール系男子特集!」
「ってことは、あんた、やっぱり……」
「違う! 私が好きなんじゃない!」
恋をしているのは別の人!
私は、アドバイスを頼まれただけ!
思わずそう力説すると、お姉ちゃんはポカンとしたように私を見た。
それから「アドバイス……友香が……」とうわごとのように呟いたかと思うと、
「あははっ、なにそれ!」
いきなり、ものすごい大声で笑い出した。
「無理無理、絶対に無理! 友香に恋のアドバイスなんて、できるわけないじゃん!」
は? なんでよ。
「だって恋愛したことないでしょ」
「そんなの関係ない」
「あるでしょ、大有り! 恋愛経験ないくせにどんなアドバイスをするわけ?」
「それは……そういう本を読むとか……」
「出たよ、本! それしかないもんね」
お姉ちゃんの口元に、嫌みったらしい笑みが浮かんだ。
「だって初恋もまだでちゅからねぇ、誰かさんは」
この一言で、私の心に火がついた。
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