たかが、恋

水野七緒

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第3話

7・再び、作戦会議(その1)

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 数日後の昼休み、私は再び間中くんを書庫に呼び出した。

「これから、間中くんを『クール系男子』にするための作戦を発表します」
「えっ、それまだやんの?」
「やるの! やらないと間中くんの恋は実らないの!」

 きっぱりそう断言して、作戦ノートの5ページ目をつきつける。

「すげぇ、文字がいっぱい」
「この数日、手に入るだけの恋愛小説と恋愛漫画を読んで研究したから」
「研究!?」
「いい? 今から説明すること、ちゃんと頭にたたき込んで」

 まずは、作戦その1「おしゃべり」の件。

「『無口』はクール系男子の必須条件だけど、間中くんにはちょっと無理だよね」
「ちょっとじゃないって! 絶対に無理!」
「なので、この作戦はもう少し簡単なものにします」

 というのも、今回調べてみた結果、クール系男子は必ずしも「無口」じゃないことが判明したんだ。

「で、彼らと間中くん、何が違うのかなって考えてみたんだけど……要は雰囲気なんだよね」
「はあ……ふいんき……」
「違う、『ふんいき』。なんていうかね」

 彼らは「騒がしくない」し「よけいなおしゃべり」をしない。その名のとおり、おしゃべりするときのたたずまいが「涼しげ」なのだ。

「だから、おしゃべりは許可する。けど、声のテンションをおさえてほしいんだ」
「え、どういうこと?」
「たとえばだけど、間中くんって『佐島、佐島、佐島ぁっ』ってよく連呼するでしょ。あれはダメ。呼ぶときは、ちょっと落ち着いた声で『佐島』──ハイ」

 どうぞ、と手を向けると、間中くんは「今やるの!?」とのけぞった。

「当然でしょ、名前を呼ぶだけなんだから」
「うっ、でも……」
「ごちゃごちゃ言わない! ほら、やってみて!」
「えっ……ええと……『佐島』!」
「声大きすぎ」
「ええっ!? じゃあ……『佐島』……?」
「疑問形にしない!」
「『佐島』……」
「もう少し低い声で!」
「『佐島』……」
「……今のでギリギリ合格かな」
「ギリギリ!?」
「でも、ちゃんとできたでしょ」
「まあ、うん」
「ってことで、今後はさっきくらいのトーンで女子とおしゃべりをすること」
「男子とは?」
「できれば男子ともそうしてほしいけど……難しそうだから女子限定でいいや。でも、少しずつ男子ともそうできるように努力して」
「……わかった」

 よし、これで作戦1の説明は終わった。

「次、作戦その2」
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