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第4話
13・作戦撤回
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突然の私の宣言に、間中くんはもう一度「へっ」て声をあげた。
「なんで? さっき『大丈夫』って言ったじゃん!」
「言ったけど……でも、やっぱり違う気がする」
本当はずっと気になっていた。
間中くんの笑顔が間中くんっぽくなくなったあたり──ううん、さらにその前の、間中くんのとびきりの笑顔に目を奪われるようになってから。
「クール系男子って、私が提案したことだけど……結麻ちゃんに好きになってもらうならそれしかないって思ってたけど……」
それじゃ、間中くんのあの笑顔はどうなっちゃうんだろう。
大きな花が咲いたみたいな、真夏の太陽みたいなあの笑顔。あれを隠して、間中くんの良さって本当に伝わるのかな。
「それに熱を出すくらい悩むってことは、間中くん自身、心のどこかで『こんなのおかしい』って思ってたんじゃないの?」
私の指摘に、間中くんはうっと口ごもった。
「そ、それは俺があれこれ考えすぎたせいで……」
「でも『違う』って言いきれる? 言いきれないよね?」
もともと間中くんは「クール系男子」になるのを渋っていた。それでも今まで頑張ってくれたのは、私が「そうしなければ結麻ちゃんに好かれない」って彼をたきつけたからだ。
(でも、そうじゃないとしたら?)
間中くんが間中くんのまま、結麻ちゃんに好かれる可能性があるとしたら?
「やっぱり作戦を変えよう。もとの、そのまんまの間中くんを好きになってもらえるようにしよう?」
そうなると、きっと間中くんのモテ期は終わる。「クール系男子」から「目立ちたがりやのうるさい男子」に戻るんだ。今「かっこいい」と騒いでいる子たちはすぐにてのひらを返すだろう。
でも、結麻ちゃんもそうだとは限らない。朝練の間、誰よりも大きな声を出していた間中くんを、好意的に見てくれたんだから。
「よし、決めた。そっちに賭けよう」
となると、まずは研究のやり直しだ。今度は、間中くんみたいなタイプの男の子が人気の恋愛小説や少女漫画を探して──
「待って待って! 勝手に決めんな!」
グッて間中くんに腕を捕まれた。
「俺は反対!」
「え……」
「俺は続けたい! このままクール系男子を目指したい!」
間中くんの思いがけない発言に、私はぽかんとしてしまった。
だって、彼はむしろ喜んでくれると思っていたから。
「ええと……どうして?」
まさか「モテ期」が終わるのが嫌だとか?
「違う! そんなんじゃなくて」
私の腕を掴む手に、ググッて力が込められた。
「ここでやめたら無駄になるじゃん」
「え……」
「お前が、せっかく俺のために考えてくれたのに……そういうの全部無駄になるだろ!」
「それは……」
「そんなのやだ。そういうの無駄にしたくない。俺は、お前のがんばりにちゃんと応えたい!」
らんらんと輝く強い眼差し。
驚いた。少し前に「無駄なことなんてない」って言っていたくせに。
(ああ、でも……)
もしかして、無駄になるのが「私の努力」だからなのかな。私ががんばって考えた作戦を無駄にしたくない──その一心で「応えたい」って言ってくれているのかな。
だったら──
「無駄じゃないよ」
今度こそ、私は本心から答えた。
「今ここで作戦変更しても無駄じゃない。次の作戦の参考にできるもん」
今回、学んだこと。
無茶な作戦は、どこかで失敗する。
間中くんの、間中くんらしさを消すのは絶対にダメ。
それと──
(間中くんは、思っていた以上にマジメな人だ)
やると決めたことは、とことん頑張ってくれる。無茶な作戦もやりきってくれる。
だからこそ──無理な作戦をたててはダメなんだ。今回みたいに、熱を出して倒れることになりかねないから。
「大丈夫。今度はもっとすごい作戦をたててみせる」
「……けど……」
「それに『無駄なことなんてない』って言ったの、間中くんだよ」
あのときは共感したわけではなかった。あくまで「間中くんってそういうタイプだよね」って理解できただけだった。
でも、今は違う。
あの言葉は、きっと本当──ううん、これから私が「本当」にするんだ。
「それに私、笑ってる間中くん、けっこう好きなんだよね」
そう、これも本音。
はじめてちゃんと伝えるけれど。
「間中くんってさ、すごく『間中くん!』って感じの笑い方するでしょ。それこそ、朝練で大声出していそう、みたいな?」
「えっ、そうか? なんかよくわかんねーけど……」
「わかんないならわかんなくていいよ。とにかく、笑ってる間中くんも悪くないってこと!」
だから、私はそっちに賭けたい。私が「いいな」って思った間中くんを、結麻ちゃんに好きになってもらいたい。
「ね、どうかな?」
あとは間中くんの返答次第だ。
だって、この作戦は間中くんのためのものだから。
彼の恋を叶えるためのものだから。
「……わかった」
間中くんの目が、ようやくキラキラと輝いた。
「佐島がそう言うなら、俺は佐島を信じる!」
ああ、これ……この笑顔だ。
私が見たかった、間中くんの笑顔。見ているほうまで、つられて笑ってしまうような──
「じゃあ、決まりだね」
「おう! でも、具体的にはどうすればいいんだ?」
「新しい作戦については、あとで考えるからもうちょっと待って。とりあえずクール系男子っぽくふるまうのは、今日でもうおしまい」
「じゃあ、俺、これからふつうにゲラゲラ笑ったり、女子とおしゃべりしてもいいってこと?」
「もちろん。ただ、たぶんモテ期は終わっちゃうけど……」
「それは、別にどーでもいいや」
間中くんは、あっさり答えた。
「なんか、モテるのってあんまり楽しくない」
「告白を断るの、苦しいって言ってたもんね」
「それ! ほんとそのとおり! 俺は、池沢先輩に好きになってもらえたらそれで十分!」
まったく迷いのない、間中くんの目。これまで何度も見てきた、強い意志のこもった目。
なのに──なぜか胸がチリッってした。
なんで? なんで私、ちょっとモヤッとしているんだろう。
「なんで? さっき『大丈夫』って言ったじゃん!」
「言ったけど……でも、やっぱり違う気がする」
本当はずっと気になっていた。
間中くんの笑顔が間中くんっぽくなくなったあたり──ううん、さらにその前の、間中くんのとびきりの笑顔に目を奪われるようになってから。
「クール系男子って、私が提案したことだけど……結麻ちゃんに好きになってもらうならそれしかないって思ってたけど……」
それじゃ、間中くんのあの笑顔はどうなっちゃうんだろう。
大きな花が咲いたみたいな、真夏の太陽みたいなあの笑顔。あれを隠して、間中くんの良さって本当に伝わるのかな。
「それに熱を出すくらい悩むってことは、間中くん自身、心のどこかで『こんなのおかしい』って思ってたんじゃないの?」
私の指摘に、間中くんはうっと口ごもった。
「そ、それは俺があれこれ考えすぎたせいで……」
「でも『違う』って言いきれる? 言いきれないよね?」
もともと間中くんは「クール系男子」になるのを渋っていた。それでも今まで頑張ってくれたのは、私が「そうしなければ結麻ちゃんに好かれない」って彼をたきつけたからだ。
(でも、そうじゃないとしたら?)
間中くんが間中くんのまま、結麻ちゃんに好かれる可能性があるとしたら?
「やっぱり作戦を変えよう。もとの、そのまんまの間中くんを好きになってもらえるようにしよう?」
そうなると、きっと間中くんのモテ期は終わる。「クール系男子」から「目立ちたがりやのうるさい男子」に戻るんだ。今「かっこいい」と騒いでいる子たちはすぐにてのひらを返すだろう。
でも、結麻ちゃんもそうだとは限らない。朝練の間、誰よりも大きな声を出していた間中くんを、好意的に見てくれたんだから。
「よし、決めた。そっちに賭けよう」
となると、まずは研究のやり直しだ。今度は、間中くんみたいなタイプの男の子が人気の恋愛小説や少女漫画を探して──
「待って待って! 勝手に決めんな!」
グッて間中くんに腕を捕まれた。
「俺は反対!」
「え……」
「俺は続けたい! このままクール系男子を目指したい!」
間中くんの思いがけない発言に、私はぽかんとしてしまった。
だって、彼はむしろ喜んでくれると思っていたから。
「ええと……どうして?」
まさか「モテ期」が終わるのが嫌だとか?
「違う! そんなんじゃなくて」
私の腕を掴む手に、ググッて力が込められた。
「ここでやめたら無駄になるじゃん」
「え……」
「お前が、せっかく俺のために考えてくれたのに……そういうの全部無駄になるだろ!」
「それは……」
「そんなのやだ。そういうの無駄にしたくない。俺は、お前のがんばりにちゃんと応えたい!」
らんらんと輝く強い眼差し。
驚いた。少し前に「無駄なことなんてない」って言っていたくせに。
(ああ、でも……)
もしかして、無駄になるのが「私の努力」だからなのかな。私ががんばって考えた作戦を無駄にしたくない──その一心で「応えたい」って言ってくれているのかな。
だったら──
「無駄じゃないよ」
今度こそ、私は本心から答えた。
「今ここで作戦変更しても無駄じゃない。次の作戦の参考にできるもん」
今回、学んだこと。
無茶な作戦は、どこかで失敗する。
間中くんの、間中くんらしさを消すのは絶対にダメ。
それと──
(間中くんは、思っていた以上にマジメな人だ)
やると決めたことは、とことん頑張ってくれる。無茶な作戦もやりきってくれる。
だからこそ──無理な作戦をたててはダメなんだ。今回みたいに、熱を出して倒れることになりかねないから。
「大丈夫。今度はもっとすごい作戦をたててみせる」
「……けど……」
「それに『無駄なことなんてない』って言ったの、間中くんだよ」
あのときは共感したわけではなかった。あくまで「間中くんってそういうタイプだよね」って理解できただけだった。
でも、今は違う。
あの言葉は、きっと本当──ううん、これから私が「本当」にするんだ。
「それに私、笑ってる間中くん、けっこう好きなんだよね」
そう、これも本音。
はじめてちゃんと伝えるけれど。
「間中くんってさ、すごく『間中くん!』って感じの笑い方するでしょ。それこそ、朝練で大声出していそう、みたいな?」
「えっ、そうか? なんかよくわかんねーけど……」
「わかんないならわかんなくていいよ。とにかく、笑ってる間中くんも悪くないってこと!」
だから、私はそっちに賭けたい。私が「いいな」って思った間中くんを、結麻ちゃんに好きになってもらいたい。
「ね、どうかな?」
あとは間中くんの返答次第だ。
だって、この作戦は間中くんのためのものだから。
彼の恋を叶えるためのものだから。
「……わかった」
間中くんの目が、ようやくキラキラと輝いた。
「佐島がそう言うなら、俺は佐島を信じる!」
ああ、これ……この笑顔だ。
私が見たかった、間中くんの笑顔。見ているほうまで、つられて笑ってしまうような──
「じゃあ、決まりだね」
「おう! でも、具体的にはどうすればいいんだ?」
「新しい作戦については、あとで考えるからもうちょっと待って。とりあえずクール系男子っぽくふるまうのは、今日でもうおしまい」
「じゃあ、俺、これからふつうにゲラゲラ笑ったり、女子とおしゃべりしてもいいってこと?」
「もちろん。ただ、たぶんモテ期は終わっちゃうけど……」
「それは、別にどーでもいいや」
間中くんは、あっさり答えた。
「なんか、モテるのってあんまり楽しくない」
「告白を断るの、苦しいって言ってたもんね」
「それ! ほんとそのとおり! 俺は、池沢先輩に好きになってもらえたらそれで十分!」
まったく迷いのない、間中くんの目。これまで何度も見てきた、強い意志のこもった目。
なのに──なぜか胸がチリッってした。
なんで? なんで私、ちょっとモヤッとしているんだろう。
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