たかが、恋

水野七緒

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第5話

6・なんで?

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「はぁ!? なんで!?」

 これが、思わず飛び出た私の第一声。
 だって、文化祭まですでに1ヶ月をきっている。
 なのに告白? ふざけすぎでしょ。

「まさか調子にのってる?」
「そ、そういうわけじゃ……」
「顔と名前を覚えてもらえたから? それならうまくいくって? さすがに図々しすぎるでしょ」
「違っ……今からちゃんと説明する! あのさ、あのさ」

 ほうほうのていで、間中くんが説明したところによると。
 一昨日、隣の席の中村さんが後夜祭のジンクスを教えてくれたらしい。
 そう、あれだ。「後夜祭で告白して成立したカップルは絶対に別れない」ってやつ。

「絶対別れないならさ、やっぱ告白するしかないじゃん?」
「……」
「だから俺、後夜祭に賭けたいなって!」

 いやいや、そんなの嘘だって! どう考えても「絶対に別れない」とか有り得ないし。
 そもそもそのジンクスって、あくまで「うまくいったあと」のことだよ? 「告白すると100%うまくいく」ってわけじゃないんだよ?
 なのに、それらの指摘がすべて喉元でとまってしまう。協力者としては「だから反対だ」ってはっきり言わなければいけないのに。
 間中くんは、まっすぐな眼差しで私の答えを待っている。
 その目から逃げるように、私はわずかに顔を傾けた。

「わかった。次回までに作戦を考えておく」

 ──私は、何を言っているんだろう。
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