64 / 76
第6話
8・なんで?
しおりを挟む
そんなこんなで話し込んでいるうちに、昼休みは残り10分となった。
「佐島、そろそろヤバくね?」
「え? でも、まだ10分……」
「次! 体育!」
そうだ、すっかり忘れていた。
体育だと移動するだけじゃなく着替えもあるから、今から戻ってもけっこうギリギリだ。
書庫を出ると、めちゃくちゃ早足で渡り廊下を通りぬける。
運動が苦手な私はこれだけですでに息があがっているのに、間中くんはぜんぜん堪えていないみたいだ。
「なあなあ、そういえばさぁ」
えっ、なに!?
こっちは、会話する余裕なんてぜんぜんないんですけど!
「昨日の髪型! あれ、なんで?」
──すごい質問がきた。
驚きのあまり、急いでいるのも忘れて私は立ち止まってしまった。
「へっ……あれ? 佐島、どうしたの?」
当然、間中くんもつられたように立ち止まる。
大きな目が不思議そうにパチパチと数回またたいた。
「……だって……」
気づいてたんだ、私がいつもと違う髪型していたの。
てっきり結麻ちゃんのことしか目に入ってないと思ってたのに。
そう伝えると、間中くんは「はぁっ」と憤慨したように顔をしかめた。
「だって、佐島が言ったんだろ! 『まず私に手を振れ』って」
「……え」
「だから、昨日ゴールを決めたとき、真っ先に佐島のことを探したのに。髪型違ってたからぜんぜんわかんなくて、先に池沢先輩に手振っちまったじゃん」
──そうなの? そういう理由だったの?
「手振ったあとで、隣にいるのが佐島だって気づいたけどさ。なあ、なんで? なんで昨日髪型違ってたの?」
「あれは……髪ゴムが切れて三つ編みできなくて……そしたら、結麻ちゃんがヘアクリップで止めてくれて……」
「えっ、じゃあ、あれ池沢先輩がやったってこと?」
「うん、まあ……」
ふーん、と間中くんは頭を傾けた。
もしかして惜しんでいるのかな。結麻ちゃんが手がけたなら、もっとちゃんと見ておけばよかった──とか?
「俺は、いつものが好き」
「……えっ」
「いつもの、こっちの佐島のほうが好き!」
あまりにもきっぱりとした口調に面食らう。
ええと──本当に?
あの髪型、やってくれたの結麻ちゃんなんだけど。
「池沢先輩がどうとか関係ない。俺はこっちが好き」
「どうして?」
「こっちのが『佐島』って感じだから!」
なに、それ。
意味わからなさすぎるよ。
けど、なんだか口元がニマニマした。気をつけないと、そのまま頬まで緩んでしまいそうだった。
「佐島、そろそろヤバくね?」
「え? でも、まだ10分……」
「次! 体育!」
そうだ、すっかり忘れていた。
体育だと移動するだけじゃなく着替えもあるから、今から戻ってもけっこうギリギリだ。
書庫を出ると、めちゃくちゃ早足で渡り廊下を通りぬける。
運動が苦手な私はこれだけですでに息があがっているのに、間中くんはぜんぜん堪えていないみたいだ。
「なあなあ、そういえばさぁ」
えっ、なに!?
こっちは、会話する余裕なんてぜんぜんないんですけど!
「昨日の髪型! あれ、なんで?」
──すごい質問がきた。
驚きのあまり、急いでいるのも忘れて私は立ち止まってしまった。
「へっ……あれ? 佐島、どうしたの?」
当然、間中くんもつられたように立ち止まる。
大きな目が不思議そうにパチパチと数回またたいた。
「……だって……」
気づいてたんだ、私がいつもと違う髪型していたの。
てっきり結麻ちゃんのことしか目に入ってないと思ってたのに。
そう伝えると、間中くんは「はぁっ」と憤慨したように顔をしかめた。
「だって、佐島が言ったんだろ! 『まず私に手を振れ』って」
「……え」
「だから、昨日ゴールを決めたとき、真っ先に佐島のことを探したのに。髪型違ってたからぜんぜんわかんなくて、先に池沢先輩に手振っちまったじゃん」
──そうなの? そういう理由だったの?
「手振ったあとで、隣にいるのが佐島だって気づいたけどさ。なあ、なんで? なんで昨日髪型違ってたの?」
「あれは……髪ゴムが切れて三つ編みできなくて……そしたら、結麻ちゃんがヘアクリップで止めてくれて……」
「えっ、じゃあ、あれ池沢先輩がやったってこと?」
「うん、まあ……」
ふーん、と間中くんは頭を傾けた。
もしかして惜しんでいるのかな。結麻ちゃんが手がけたなら、もっとちゃんと見ておけばよかった──とか?
「俺は、いつものが好き」
「……えっ」
「いつもの、こっちの佐島のほうが好き!」
あまりにもきっぱりとした口調に面食らう。
ええと──本当に?
あの髪型、やってくれたの結麻ちゃんなんだけど。
「池沢先輩がどうとか関係ない。俺はこっちが好き」
「どうして?」
「こっちのが『佐島』って感じだから!」
なに、それ。
意味わからなさすぎるよ。
けど、なんだか口元がニマニマした。気をつけないと、そのまま頬まで緩んでしまいそうだった。
0
あなたにおすすめの小説
君との恋はシークレット
碧月あめり
児童書・童話
山田美音は、マンガとイラストを描くのが好きな中学二年生。学校では黒縁メガネをかけて地味に過ごしているが、その裏で人気ファッションモデル・星崎ミオンとして芸能活動をしている。
母の勧めでモデルをしている美音だが、本当は目立つことが好きではない。プライベートでは平穏に過ごしたい思っている美音は、学校ではモデルであることを隠していた。
ある日の放課後、美音は生徒会長も務めるクラスのクールイケメン・黒沢天馬とぶつかってメガネをはずした顔を見られてしまう。さらには、教室で好きなマンガの推しキャラに仕事の愚痴を言っているところを動画に撮られてしまう。
そのうえ、「星崎ミオンの本性をバラされたくなかったら、オレの雑用係やれ」と黒沢に脅されてしまい…。
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
笑いの授業
ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。
文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。
それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。
伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。
追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。
9日間
柏木みのり
児童書・童話
サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。
(also @ なろう)
モブの私が理想語ったら主役級な彼が翌日その通りにイメチェンしてきた話……する?
待鳥園子
児童書・童話
ある日。教室の中で、自分の理想の男の子について語った澪。
けど、その篤実に同じクラスの主役級男子鷹羽日向くんが、自分が希望した理想通りにイメチェンをして来た!
……え? どうして。私の話を聞いていた訳ではなくて、偶然だよね?
何もかも、私の勘違いだよね?
信じられないことに鷹羽くんが私に告白してきたんだけど、私たちはすんなり付き合う……なんてこともなく、なんだか良くわからないことになってきて?!
【第2回きずな児童書大賞】で奨励賞受賞出来ました♡ありがとうございます!
空を泳ぐ金魚
空-kuu-
児童書・童話
その少女は、風のように現れ、僕の世界のすべてを変えてしまった――。
内気で、本の世界だけが自分の居場所だった小学五年生の少年、神谷春樹。彼の退屈な日常は、一人の転校生によって、静かに、しかし決定的に壊されていく。
彼女の名前は、天野七海。
明るく、天真爛漫で、誰もが好きになってしまうような笑顔の裏に、どこか触れてはいけないような儚さを秘めた少女。春樹のクラスにやってきた彼女は、あっという間にその中心になる。そして、教室の隅で本ばかり読んでいた春樹にも、屈託なく声をかけてくるのだった。
「ねえ、あの雲、金魚みたいじゃない?」
彼女の瞳を通せば、見慣れたはずの世界は、魔法のようにきらめき始める。
そんな七海が、ある日一冊のノートを取り出した。
お楽しみノートと名付けられたその手帳には、彼女のささやかな「やりたいことリスト」が、子供らしい文字でたくさん綴られていた。
《潮見ヶ丘の駄菓子屋さんで、100円分お菓子を買う》
《みんなで写真を撮る》
《駅前の観覧車に乗りたい》
《夏祭りで、浴衣を着て花火を見る》
「お願い。私に残された時間で、これを全部叶えたいの。手伝ってくれないかな?」
七海がこの町にやってきた本当の理由。そして、彼女に残された時間が限られているという秘密。
その事実を知った時、最初は戸惑っていた春樹とクラスメイトたちは、彼女の切ない願いを叶えるため、一つになって動き出す。
駄菓子屋への小さな冒険、病室での真夜中のピクニック、ファインダー越しの忘れられない笑顔。
リストの項目が一つひとつ達成されていくたびに、彼らの絆は深まっていく。春樹もまた、彼女の隣で笑ううちに、今まで知らなかった「誰かのために行動する」という喜びと、胸を締め付けるような淡い想いを覚えていく。
だが、楽しい夏の時間が輝きを増すほどに、終わりの予感もまた、すぐそこに影を落としていた。
そして、運命の夏祭りの夜。
夜空に舞う、色とりどりの打ち上げ花火。それを「金魚みたい」だと無邪気に笑う七海。
彼女が本当に伝えたかった想いとは、そして、その小さな手に握りしめていた最後の願いとは――。
これは、限られた時間の中で、誰よりも自由に、強く生きようとした小さな命の輝きと、残された者たちが紡ぐ物語。
あの夏、僕たちが失ったもの。そして、見つけたもの。
切ないほどの感動と、温かい涙が、心の中を満たしていく。
黒地蔵
紫音みけ🐾書籍発売中
児童書・童話
友人と肝試しにやってきた中学一年生の少女・ましろは、誤って転倒した際に頭を打ち、人知れず幽体離脱してしまう。元に戻る方法もわからず孤独に怯える彼女のもとへ、たったひとり救いの手を差し伸べたのは、自らを『黒地蔵』と名乗る不思議な少年だった。黒地蔵というのは地元で有名な『呪いの地蔵』なのだが、果たしてこの少年を信じても良いのだろうか……。目には見えない真実をめぐる現代ファンタジー。
※表紙イラスト=ミカスケ様
【完結】またたく星空の下
mazecco
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 君とのきずな児童書賞 受賞作】
※こちらはweb版(改稿前)です※
※書籍版は『初恋×星空シンバル』と改題し、web版を大幅に改稿したものです※
◇◇◇冴えない中学一年生の女の子の、部活×恋愛の青春物語◇◇◇
主人公、海茅は、フルート志望で吹奏楽部に入部したのに、オーディションに落ちてパーカッションになってしまった。しかもコンクールでは地味なシンバルを担当することに。
クラスには馴染めないし、中学生活が全然楽しくない。
そんな中、海茅は一人の女性と一人の男の子と出会う。
シンバルと、絵が好きな男の子に恋に落ちる、小さなキュンとキュッが詰まった物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる