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第6話

4・嘘を暴く

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神森と別れ、自宅の最寄り駅に到着したのは22時を過ぎたころだった。
駅前のスーパーはまだ開いている。この時間帯なら、いい感じの値切り品が手に入るかもしれない。
頭ではわかっていたけれど、どうしても立ち寄る気にはなれなかった。
怒りで心を煮えたぎらせたまま、俺は玄関に足を踏み入れた。

「ああ、帰ってきたか」

台所から、大賀がひょっこりと顔を覗かせた。

「すまん、まだ宿題が終わっていない」
「それはいい」
「……『いい』?」
「お前に話がある。居間に来い」

大賀の尻尾が、ゆらりと揺れた。
手も洗わず、コートも脱がないで、俺は居間の座布団に腰を下ろした。
いつもなら速攻でこたつに足を突っ込むところだけれど、今はとてもそんな気になれない。そもそも寒さすら感じない。
遅れてやってきた大賀も、少しためらったあと、俺と同じように座布団に正座した。エプロンをつけたまま──ということは、これから宿題をやるつもりだったのだろう。
そんなの、もはやどうでもいいけど。
こいつと神森が仕掛けた茶番は、今日でもうおしまいだ。

「今日、神森に会った」
「そうか」
「クソみたいな話を聞かされた」
「そうか」

あくまで淡々としている大賀の声。
もしかしたら、すでに神森から連絡がいっているのかもしれない。あいつは、そうした気配りがうまいから。

(そうか)

だったら、こちらも単刀直入言ってやる。
まわりくどいやり方は一切なしだ。

「お前ら、俺に嘘をついたよな?」

ああ、くそ。
怒りで声が震えちまった。

「俺のサポートが必要だ、なんて嘘だったんだな?」
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