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第7話
4・正義はこちらに
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まずは、川野ちゃんから嫌がらせの詳細を聞き出してメモを取る。
それを「相談を受けて聞き出した」のではなく「自発的に俺が気づいた」ことにして、本社宛てのメールを書きつづった。
「内容、これで間違ってない?」
川野ちゃんは、苦しそうな表情で目を通したあと「はい」と小さくうなずいた。
「でも、あの……本当にこんなことをして大丈夫でしょうか」
「大丈夫だって」
「でも、若井さんに迷惑がかかるんじゃ……せめて匿名で送るとか……」
「その必要はないだろ」
俺たちは何も間違っていない。後ろめたいことは何ひとつない。
だったら、堂々と名前を記すべきだ。正義はこちらにあるんだから。
「じゃあ、送るな」
もう一度内容を読み直して、送信ボタンをタップした。
まだ不安そうな川野ちゃんの隣で、彼氏くんは「よっしゃ」とガッツポーズをした。
「これで解決っすね」
「返答次第だけどな」
帰り際、彼氏くんから「今日のお礼っす」とこの店のドリンク無料券をもらった。川野ちゃんは、最後まで浮かない顔つきで「すみません」と頭を下げてきた。
「いいって、これくらい。本社から返信があったら、また伝えるな」
「よろしくお願いします」
その後、いつもの電車に乗り、駅前のスーパーで割引になっていたお惣菜と食パンを買った。うっかり6枚入りの食パンを買ってしまったと気づいたのは、帰路についてからだった。
消費期限はいつだっただろう。とりあえず明日の朝食はホットサンドにして、早めに食べちまうか。
そうしたことで頭がいっぱいだったので、本社に送ったメールの件は、完全に頭の片隅に追いやられてしまっていた。
翌日、19時から閉店までバイトが入っていた。
ちなみに、今日は川野ちゃんとはシフトが被っていない。
「おつかれさまっす」
バックヤードのドアを開けると、休憩中らしい先輩ふたりが勢いよくこちらを振り向いた。
「なんっすか」
「ああ、いや……」
ふたりとも、どうも歯切れが悪い。何かあったのだろうか、と怪訝に思っていると、再び背後のドアが開いた。
「あ……」
「おつかれさまっす……」
先輩たちの挨拶を無視して、あとから来た人物は「退け」とばかりに俺を肩で突き飛ばした。
坂沼さんだった。しかも、いつも店に来るときとは違う、サラリーマンらしいスーツ姿だった。
あれ、この人今日シフトに入っていたっけ?
そう考えた矢先、囁くような声が耳に届いた。
「このままで済むと思うなよ」
それは、明らかに俺に向けられた言葉だった。
それを「相談を受けて聞き出した」のではなく「自発的に俺が気づいた」ことにして、本社宛てのメールを書きつづった。
「内容、これで間違ってない?」
川野ちゃんは、苦しそうな表情で目を通したあと「はい」と小さくうなずいた。
「でも、あの……本当にこんなことをして大丈夫でしょうか」
「大丈夫だって」
「でも、若井さんに迷惑がかかるんじゃ……せめて匿名で送るとか……」
「その必要はないだろ」
俺たちは何も間違っていない。後ろめたいことは何ひとつない。
だったら、堂々と名前を記すべきだ。正義はこちらにあるんだから。
「じゃあ、送るな」
もう一度内容を読み直して、送信ボタンをタップした。
まだ不安そうな川野ちゃんの隣で、彼氏くんは「よっしゃ」とガッツポーズをした。
「これで解決っすね」
「返答次第だけどな」
帰り際、彼氏くんから「今日のお礼っす」とこの店のドリンク無料券をもらった。川野ちゃんは、最後まで浮かない顔つきで「すみません」と頭を下げてきた。
「いいって、これくらい。本社から返信があったら、また伝えるな」
「よろしくお願いします」
その後、いつもの電車に乗り、駅前のスーパーで割引になっていたお惣菜と食パンを買った。うっかり6枚入りの食パンを買ってしまったと気づいたのは、帰路についてからだった。
消費期限はいつだっただろう。とりあえず明日の朝食はホットサンドにして、早めに食べちまうか。
そうしたことで頭がいっぱいだったので、本社に送ったメールの件は、完全に頭の片隅に追いやられてしまっていた。
翌日、19時から閉店までバイトが入っていた。
ちなみに、今日は川野ちゃんとはシフトが被っていない。
「おつかれさまっす」
バックヤードのドアを開けると、休憩中らしい先輩ふたりが勢いよくこちらを振り向いた。
「なんっすか」
「ああ、いや……」
ふたりとも、どうも歯切れが悪い。何かあったのだろうか、と怪訝に思っていると、再び背後のドアが開いた。
「あ……」
「おつかれさまっす……」
先輩たちの挨拶を無視して、あとから来た人物は「退け」とばかりに俺を肩で突き飛ばした。
坂沼さんだった。しかも、いつも店に来るときとは違う、サラリーマンらしいスーツ姿だった。
あれ、この人今日シフトに入っていたっけ?
そう考えた矢先、囁くような声が耳に届いた。
「このままで済むと思うなよ」
それは、明らかに俺に向けられた言葉だった。
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