モフモフ野郎と俺の朝ごはん

水野七緒

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第8話

7・目覚めたら、嵐

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そのあとのことは、あまりよく覚えていない。
気がついたら、俺は堅いベッドの上に横たわっていた。
なんだここ、いったいどこだ?
見覚えのない天井を見つめながら身じろぐと、少し離れたところから「ああ、気がついた?」と声をかけられた。

「具合大丈夫? 救急車呼んだほうがいい?」

えっ、救急車!?
驚いて身体を起こして、ようやくここがどこなのか気がついた。
たぶん、駅の救護室みたいなところだ。俺に話しかけてくれた人は駅員さんの制服を着ているし、ドアの向こうからは電車の走る音や構内アナウンスが聞こえてくる。

「救急車は、必要ないです」
「そう?」
「ていうか俺、なんでここに──」
「ああ、なんかね、君、電車を降りたとき倒れたらしくて」

駅員さんの話によると、そのときすぐそばにいた人が俺を担いで救護室まで連れてきてくれたらしい。

「担いで……って、その人がですか?」
「そう、君のことを抱っこしてね。いやぁ、ずいぶん力持ちな青年だよね」

──嫌な予感がした。
そういえば俺、倒れる前に大賀の幻を見ていなかったか?

「あの……その人って、年齢は俺くらいで、短髪で、背が180センチ以上あって……」
「ああ、うんうん、そんな感じ」

間違いない、大賀だ。
じゃあ、俺が見たのは幻じゃなくて本物?
たしかに、ここってあいつの家の最寄り駅ではあるけれど──

「いやぁ、まいったわ」

ふいにドアが開いて、別の駅員さんが入ってきた。

「どうした?」
「豪雨だよ、ゲリラ豪雨! いきなり土砂降りになってさぁ」

駅員さんたちは、橋がどうのとか徐行運転がどうのと話している。
耳をすませば、たしかに雨音のようなものが聞こえてきた。それもザーザーなんてかわいらしいものじゃない、滝のそばにいるような轟音だ。

(まいったな)

傘なんて持ってきてないんだけど。
俺が地元の駅に着くまでに、なんとか晴れてくれないかな。
そもそも、今日って降水確率0%じゃなかったっけ?
倒れる前も、雨が降りそうな気配なんてなかったし。
そんなことを考えていると、鞄のなかのスマホがぶるぶると震えた。
──え、神森から?

「はい……」
『叶斗くん!? 今どこ!?』
「どこって、駅だけど……」
『救護室!? まだ移動していない感じ!? 尊くんはそこにいる!?』
「──いねぇけど」

質問の意図がわからないまま答えると、受話口から「ああっ」と悲鳴のような声があがった。

『じゃあ、もう確定じゃん……絶対そうじゃん……』
「何がだよ」
『外! 嵐! ゲリラ豪雨!』

──は?

『これ、絶対尊くんだよ! 尊くん、めちゃくちゃ怒ってたから!』
「どういうことだよ」
『だから……っ』

神森は、焦れたように叫んだ。

『この嵐、尊くんの仕業しわざだって言ってるの!』
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