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5章 迷宮
5章ー16:救いの母ミツルと、依頼所への出発
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魅絃と魅絃の背後に隠れる空太を見て、触手に今にももみくちゃにされる寸前だったメイアが、ホッと表情を和らげる。
「良かった、間に合ったのね空太! 魅絃さん、助かりました!」
「いいのいいの。ほら、さっさとこっちへいらっしゃい? 触手も今は緩んでるわ」
命絃の分身体が突然の奇襲魔法攻撃に倒れたことで、粘液まみれの触手の束縛も一時的に緩み、メイアと舞子が触手から逃れて、急ぎ魅絃の傍へと駆け寄った。
「うー……嫌だ、ネトネトします、これぇ。ブルル」
「あと数秒遅かったら、私も勇子みたいに悲鳴を上げてたわ。ううっ、まだ鳥肌が立ってるぅ」
舞子とメイアの顔は真っ青であり、必死に粘液と触手の感触を我慢していた後遺症だろうか。
触手から解放された後も、2人は身体を腕で抱え、粘液を手で払いつつ、ガタガタ震えていた。
メイア達が震えている間に、空太は気絶した勇子を回収するが、芝生の上を重そう引きずっていると、引きずられた震動で勇子が目覚め、空太を蹴った。
蹴られた空太が怒り狂って、勇子と取っ組み合いを始めたのを一瞥して苦笑つつ、魅絃が口を開く。
「本当に驚いたわよ、空太君が私の工房の窓に貼り付いてるんだから。事情は粗方聞いたわ。ごめんねえ、ウチのバカ娘が酷いことして? 命彦に関係することだと、あの子途端に精神年齢と知能指数が低下するから、私も困ってるのよ」
ころころと笑う魅絃が、不意にメイアの後ろにいた舞子に視線を移した。
「あ、あの……」
「初めまして、歌咲舞子ちゃんね? 命彦から話は聞いてるわ。私は魂斬魅絃。命彦の母です」
「あ、命彦さんのお母様! は、初めまして!」
にこっと笑いかける魅絃の優しく美しい顔を見て、舞子はポーッとした。
顔の造形は命絃とよく似ているものの、舞子が受ける印象は真反対で、魅絃は身に纏う空気自体がとても落ち着いており、優しく包み込んでくれる感覚があった。
「色っぽくて、とてもキレイ……」
「あら、ありがとう。おばさん照れちゃうわ。うふふ、命彦や空太くんからも聞いたんだけど、舞子ちゃんは戦える〔魔法楽士〕を目指しているんですって?」
「は、はい! 身の程知らずと知りつつも夢を捨て切れず、今は命彦さん達におすがりしております」
「あらあら、かしこまらずとも良いのに……私はねぇ舞子ちゃん、貴方に感心しているのよ? 素晴らしいわ、舞子ちゃんの生き方は。一度志した己の夢の実現を目指し、夢のためであれば、手段を選ばず行動して努力する。その全力の姿勢は、誰にでもできることじゃありません。自分に自信を持って、誰に笑われようとも、堂々と我が道を進んでね? 勇往邁進よ、おばさんは応援してるからね」
「は、はいっ! ありがとうございます」
舞子は感激したように魅絃を見て、深々と頭を下げた。
「うむ。元気一杯でよろしい。それに比べて、ウチの娘はもう本当にダメダメねえ……」
舞子から視線を外し、倒れている命絃の分身体を見る魅絃。
分身体の命絃がプルプルと頭を振り、全身を見てから無傷で起き上がって言った。
「あ、危うかったわ。一瞬混乱して魔法の制御を乱してしまった。分身体は……よし、まだ動く。さて、よくもやってくれたわねって、げっ! 母さんっ!」
「命絃、少しは自重したらどう? あんたこの子達より3歳も年上でしょうが。仕事で命彦を迎えに来てくれてる子達の邪魔を、どうしてするのよ?」
「年齢も仕事もどうでもいいわよ! 私はこれから命彦とイチャイチャするの! 私がイチャイチャしたいのっ! 2人でまったりした時間を過ごして、母さんにも邪魔されずに魔法の修行とかもして、愛を深め合うのよ。邪魔する者は誰であれ叩き出すって決めてるのっ! ……って、どこ行くのよ母さん!」
「その分身体を幾ら攻撃しても無駄でしょ? 非実体の分身体を作る精霊探査魔法《陰遁・影分身》に、意志儀式魔法《触手の皇》を併用して、さも実体がある分身のように見せるとか、無駄に高度で凝った魔法の使い方をしちゃって。そういう才能は別の分野で活かして欲しいわねぇ?」
喚く娘をまるっきり無視して、魅絃は居間の硝子戸の前で語った。
「ミサヤちゃん、結界魔法を解いてくれるかしら? もうお遊びはおしまいよ? 命彦の仕事の邪魔をしては駄目。今言うことを聞いたら、私も怒りません。命彦にも良く言ってあげるわ」
魅絃の言葉が届いたのか。硝子戸を始めとして、庭園と母屋の間を分断するように展開されていた数十mほどの透明の魔法防壁が砕け散り、居間の様子を隠していた窓帷がスルスルっとひとりでに開いて、硝子戸から皮椅子で眠る命彦の姿が見えた。
硝子の壁が砕けるように霧散する魔法防壁を見て、舞子が言う。
「母屋と庭園を分断するほどの規模の結界魔法が、まさか目の前あったとは……私、全然気付きませんでした」
「私もよ。ミサヤの仕業だったらあり得るわ。探査魔法を使って周囲を確認してたら、気付いたでしょうけどね」
メイアも呆れた様子で肩を竦める。
居間の方へ視線を移したメイアと舞子は、命彦に膝枕して目を丸くする浴衣姿の命絃と、命彦の腹の上に乗る子犬形態のミサヤを視界に収めた。
命彦の腹の上でお座りしているミサヤは、魅絃を見詰めて耳をシュンとしている。
魅絃が居間の硝子戸を開けると、驚いていた命絃が我に返り、ミサヤへ言った。
「み、ミサヤ! どうして結界魔法を解いたのよっ!」
『ミツルがあちら側についた時点で、我々の企みは失敗しました。失敗した以上は潔くあるべきです。マイトがさっさとケリをつけていれば成功したものを……。そもそも、どうしてメイアの指示で動いたソラタを見逃したのですか』
「魔法具制作してるいつもの母さんだったら、1時間は周りを気にせずに、工房内で作業をじっと続けるって思ってたから、あの時は見逃してもいいと思ったのよ! 小娘3人をすぐにとっちめて、あの幼女萌えも始末できると思ってたの!」
内輪もめを始める2人。命絃の意識が魔法から逸れたためか、魔法幻影の分身体が煙のように消え、着ぐるみのように分身体に覆われていた人型の触手の塊が、べチャリと芝生に落ちた。
命絃は《触手の皇》も消失させたらしく、勇子達に付着していた粘液や、芝生の上でピクついていた触手達も、すぐにすっと消え去った。
そして、命絃とミサヤの言い合いによって、2人の傍にいた命彦が遂に目を覚ます。
「うむぅ? どうしたんだよ2人ともぉ、騒がしい。ふわああぁぁー……結構寝ちまったわ。あれ? 母さんにメイア、舞子まで、どうして庭にいんの?」
命彦の寝起きの視界に、硝子戸の傍に立つ魅絃達と、その後方の庭園で、勇子に絞め技を決められて気絶している空太が映る。
「お仕事よ、命彦」
穏やかに笑う魅絃の方を見て、命彦はポカンとしていた。
気絶した空太を連れてメイア達が玄関門へ去り、命絃の触手で掘り返された庭園の芝生を、エマボット達がせっせと修復している頃。
魂斬邸の母屋の居間では、命彦と魅絃が、皮椅子の上でシュンとする命絃とミサヤを見下ろしていた。
「まったく、姉さんとミサヤにも困ったもんだよ。俺のポマコン見るのはいいけど、仕事上の相手へ勝手に連絡したら駄目だろう? 舞子は立場上依頼主だぞ、分かってる?」
命彦にくどくど怒られ、身を縮める命絃とミサヤ。
『気持ち良さそうに眠っていたので、起こすことがはばかられたのです。申し訳ありません』
「ま、命彦も、私とイチャイチャしたいでしょう?」
「気を遣ってくれたのは嬉しいし、イチャイチャもしたいけど、すでに自分が引き受けてる仕事がある場合は別だろ? 明日には報酬の[結晶樹の果実]が依頼所へ届く。先払いでもらえるんだし、そもそも[結晶樹の果実]は、姉さんや母さんの仕事を助けてくれるモノだ。ミサヤも好物だって言ってよく食べてるだろ? つまり、この依頼は姉さんやミサヤのために受けてるとも言える。そこは理解してくれよ、俺だって家族でまったりしたいのを我慢して仕事してるんだからさ?」
『……はい』
「分かるけど、嬉しいんだけどっ! むうぅぅー……」
俯くミサヤと、子どものようにむくれる命絃。魅絃が命彦へ言った。
「まあまあ、ミサヤちゃんは反省してるみたいだし、この一件の首謀者はどうも命絃っぽいから、もうミサヤちゃんは許してあげたら?」
「ええっ! 待ってよ母さん、ミサヤも一緒に!」
命絃が最後まで言い終わる前に、命彦が首を縦に振った。
「分かったよ母さん。ミサヤ、今回は許す。次からは駄目だぞ?」
『はい!』
ミサヤが嬉しそうに尻尾をピコピコ振り、命彦に抱えられた。
それを見た命絃が、ミサヤに詰め寄る。
「ミサヤ、この裏切り者っ!」
「命絃はまだ反省が必要ね? 罰として母さんの手伝いよ。さあ工房に行きましょう」
「嫌よ、絶対に嫌! 過重労働させられる! 私は1日3時間以上働いたら死ぬようにできてるのよ!」
嫌々と首を横に振り、命彦にしがみ付く命絃。その命絃へ諭すように、命彦が優しく言った。
「姉さん、俺は魔法具作ってる時の姉さんが1番好きだよ。そういう姉さんを愛してるんだ。俺のために、また新しい魔法具を作って欲しいって、いつも思ってる。質の良い魔法具を作ってもらうために、母さんの魔法具開発を手伝って、姉さんにもっと腕を磨いて欲しいんだ」
「え、いや、突然そういう愛の告白をされると、照れると言うかそのぉ……ポッ」
命彦の言葉を自分に都合よく解釈し、身をよじってデレデレする命絃。
その命絃を見て、命彦と目と目で通じ合った魅絃は、素早く命彦から命絃を引き剥がし、命絃の背を押した。
「はい決定! 命彦に今後も好いてもらえるよう、一杯愛していてもらえるように、母さんを手伝ってね命絃? さて、浴衣姿じゃ作業に困るから、浴衣の上から着る作業用の割烹着が必要ねぇ? 昨日洗濯した予備が部屋にあるでしょ? さっさと取りに行くわよ」
「う、あ……もうっ、分かったわよっ! その代わり、命彦は早く帰って来てよね! そして帰ったら私を一杯構うこと! いいわね?」
「りょーかい、それじゃ行って来るよ、2人とも」
魅絃や命絃に出立を告げ、ミサヤを抱えて母屋を出た命彦は、そのままの足で別館の自分の工房へ寄って、部屋着の甚平からいつもの魔法具を装備した姿へと着替え、敷地外と接する玄関門の前で待っていたメイア達と合流した。
「待たせてすまん。それと、迎えに来てくれてあんがとよ」
「いつものことだから別に良いわ。それより、やっと全員揃ったわね?」
「そうだね? これで迷宮に行けるよ、舞子」
「はい、嬉しいです……それはいいんですけど、あの、勇子さんはほっといていいんですか?」
勇子は魂斬邸の高い塀に手をつき、ズーンと沈んでいた。
「また負けた……数え切れんほど勝負を挑んどるのに、まだ1勝もしてへんやんウチ。もしかして、ウチって弱いんか?」
「いやー全敗してるのが精神的に相当応えてるみたいだねぇ。いい気味だ」
さっき気絶させられた腹いせだろうか、空太が面白そうに笑って言う。
命彦はミサヤと顔を見合わせ、勇子に声をかけた。
「おい勇子、迷宮に行くぞ、シャンとしろ」
「命彦か……ウチ、どうしてあんたの姉やんに勝てんの?」
「知るか。俺はお前と姉さんが戦う場合、理由いかんを問わず、常に全力で姉さんを応援するぞ? お前が負けたままでいてくれた方が、都合がいいんだ。いつも言ってるだろ?」
命彦のキツイ言葉に、勇子ががっくりと肩を落とす。その勇子を見て、命彦は言葉を続けた。
「ただ、今回の戦闘については、ミサヤが姉さんに手を貸してた部分もある。ただでさえ格上の相手と2対1の数的不利の条件下で、しかも相手側が迎撃の用意を整えた万全の状態で戦ったんだ。負けるのは当然だろうが?」
「……数的不利、2対1、迎撃態勢が万全の相手? せや、せやった! ウチが弱いわけやあらへん。同じ条件下で1対1やったら、ウチかてもっと戦える筈や。よっしゃ、よっしゃああーっ!」
突然勇子が叫び、復活した。
「舞子、はよ依頼所行って依頼受けるで! この鬱憤、迷宮の魔獣共で晴らしたる!」
「は、はい!」
「待ってよ、勇子。まったくさ」
「急いだって電車の時刻は決まってるのに……命彦、ミサヤも、置いてかれるわよ?」
勇子は舞子の手を引き、駆け出した。その2人を追うように、空太とメイアも小走りする。
勇子達を見ていた命彦へ、ミサヤが思念で語った。
『私が手を貸したのは精霊探査魔法《旋風の眼》を展開し、メイア達がここへ到着する数分前に、マイトへ彼女らの接近を知らせたくらいですよ? 戦闘には一切関与していませんから、純粋に実力差で勝敗が決まったと思いますが?』
「ミサヤの知らせで姉さんが待ち伏せして、迎撃用の魔法を展開してたのは事実だろ? 力のある魔法士同士の戦いにおいて、相手より先手を取れるのは相当優位に立てるぞ? この負けで凹んで、小隊の戦力が低下するのはあんまりだ。助言の1つくらいはしてやってもいいと思う」
『うふふ、お優しいことです』
命彦もミサヤを背に垂らした頭巾に入れて、勇子達を追って走り出した。
「良かった、間に合ったのね空太! 魅絃さん、助かりました!」
「いいのいいの。ほら、さっさとこっちへいらっしゃい? 触手も今は緩んでるわ」
命絃の分身体が突然の奇襲魔法攻撃に倒れたことで、粘液まみれの触手の束縛も一時的に緩み、メイアと舞子が触手から逃れて、急ぎ魅絃の傍へと駆け寄った。
「うー……嫌だ、ネトネトします、これぇ。ブルル」
「あと数秒遅かったら、私も勇子みたいに悲鳴を上げてたわ。ううっ、まだ鳥肌が立ってるぅ」
舞子とメイアの顔は真っ青であり、必死に粘液と触手の感触を我慢していた後遺症だろうか。
触手から解放された後も、2人は身体を腕で抱え、粘液を手で払いつつ、ガタガタ震えていた。
メイア達が震えている間に、空太は気絶した勇子を回収するが、芝生の上を重そう引きずっていると、引きずられた震動で勇子が目覚め、空太を蹴った。
蹴られた空太が怒り狂って、勇子と取っ組み合いを始めたのを一瞥して苦笑つつ、魅絃が口を開く。
「本当に驚いたわよ、空太君が私の工房の窓に貼り付いてるんだから。事情は粗方聞いたわ。ごめんねえ、ウチのバカ娘が酷いことして? 命彦に関係することだと、あの子途端に精神年齢と知能指数が低下するから、私も困ってるのよ」
ころころと笑う魅絃が、不意にメイアの後ろにいた舞子に視線を移した。
「あ、あの……」
「初めまして、歌咲舞子ちゃんね? 命彦から話は聞いてるわ。私は魂斬魅絃。命彦の母です」
「あ、命彦さんのお母様! は、初めまして!」
にこっと笑いかける魅絃の優しく美しい顔を見て、舞子はポーッとした。
顔の造形は命絃とよく似ているものの、舞子が受ける印象は真反対で、魅絃は身に纏う空気自体がとても落ち着いており、優しく包み込んでくれる感覚があった。
「色っぽくて、とてもキレイ……」
「あら、ありがとう。おばさん照れちゃうわ。うふふ、命彦や空太くんからも聞いたんだけど、舞子ちゃんは戦える〔魔法楽士〕を目指しているんですって?」
「は、はい! 身の程知らずと知りつつも夢を捨て切れず、今は命彦さん達におすがりしております」
「あらあら、かしこまらずとも良いのに……私はねぇ舞子ちゃん、貴方に感心しているのよ? 素晴らしいわ、舞子ちゃんの生き方は。一度志した己の夢の実現を目指し、夢のためであれば、手段を選ばず行動して努力する。その全力の姿勢は、誰にでもできることじゃありません。自分に自信を持って、誰に笑われようとも、堂々と我が道を進んでね? 勇往邁進よ、おばさんは応援してるからね」
「は、はいっ! ありがとうございます」
舞子は感激したように魅絃を見て、深々と頭を下げた。
「うむ。元気一杯でよろしい。それに比べて、ウチの娘はもう本当にダメダメねえ……」
舞子から視線を外し、倒れている命絃の分身体を見る魅絃。
分身体の命絃がプルプルと頭を振り、全身を見てから無傷で起き上がって言った。
「あ、危うかったわ。一瞬混乱して魔法の制御を乱してしまった。分身体は……よし、まだ動く。さて、よくもやってくれたわねって、げっ! 母さんっ!」
「命絃、少しは自重したらどう? あんたこの子達より3歳も年上でしょうが。仕事で命彦を迎えに来てくれてる子達の邪魔を、どうしてするのよ?」
「年齢も仕事もどうでもいいわよ! 私はこれから命彦とイチャイチャするの! 私がイチャイチャしたいのっ! 2人でまったりした時間を過ごして、母さんにも邪魔されずに魔法の修行とかもして、愛を深め合うのよ。邪魔する者は誰であれ叩き出すって決めてるのっ! ……って、どこ行くのよ母さん!」
「その分身体を幾ら攻撃しても無駄でしょ? 非実体の分身体を作る精霊探査魔法《陰遁・影分身》に、意志儀式魔法《触手の皇》を併用して、さも実体がある分身のように見せるとか、無駄に高度で凝った魔法の使い方をしちゃって。そういう才能は別の分野で活かして欲しいわねぇ?」
喚く娘をまるっきり無視して、魅絃は居間の硝子戸の前で語った。
「ミサヤちゃん、結界魔法を解いてくれるかしら? もうお遊びはおしまいよ? 命彦の仕事の邪魔をしては駄目。今言うことを聞いたら、私も怒りません。命彦にも良く言ってあげるわ」
魅絃の言葉が届いたのか。硝子戸を始めとして、庭園と母屋の間を分断するように展開されていた数十mほどの透明の魔法防壁が砕け散り、居間の様子を隠していた窓帷がスルスルっとひとりでに開いて、硝子戸から皮椅子で眠る命彦の姿が見えた。
硝子の壁が砕けるように霧散する魔法防壁を見て、舞子が言う。
「母屋と庭園を分断するほどの規模の結界魔法が、まさか目の前あったとは……私、全然気付きませんでした」
「私もよ。ミサヤの仕業だったらあり得るわ。探査魔法を使って周囲を確認してたら、気付いたでしょうけどね」
メイアも呆れた様子で肩を竦める。
居間の方へ視線を移したメイアと舞子は、命彦に膝枕して目を丸くする浴衣姿の命絃と、命彦の腹の上に乗る子犬形態のミサヤを視界に収めた。
命彦の腹の上でお座りしているミサヤは、魅絃を見詰めて耳をシュンとしている。
魅絃が居間の硝子戸を開けると、驚いていた命絃が我に返り、ミサヤへ言った。
「み、ミサヤ! どうして結界魔法を解いたのよっ!」
『ミツルがあちら側についた時点で、我々の企みは失敗しました。失敗した以上は潔くあるべきです。マイトがさっさとケリをつけていれば成功したものを……。そもそも、どうしてメイアの指示で動いたソラタを見逃したのですか』
「魔法具制作してるいつもの母さんだったら、1時間は周りを気にせずに、工房内で作業をじっと続けるって思ってたから、あの時は見逃してもいいと思ったのよ! 小娘3人をすぐにとっちめて、あの幼女萌えも始末できると思ってたの!」
内輪もめを始める2人。命絃の意識が魔法から逸れたためか、魔法幻影の分身体が煙のように消え、着ぐるみのように分身体に覆われていた人型の触手の塊が、べチャリと芝生に落ちた。
命絃は《触手の皇》も消失させたらしく、勇子達に付着していた粘液や、芝生の上でピクついていた触手達も、すぐにすっと消え去った。
そして、命絃とミサヤの言い合いによって、2人の傍にいた命彦が遂に目を覚ます。
「うむぅ? どうしたんだよ2人ともぉ、騒がしい。ふわああぁぁー……結構寝ちまったわ。あれ? 母さんにメイア、舞子まで、どうして庭にいんの?」
命彦の寝起きの視界に、硝子戸の傍に立つ魅絃達と、その後方の庭園で、勇子に絞め技を決められて気絶している空太が映る。
「お仕事よ、命彦」
穏やかに笑う魅絃の方を見て、命彦はポカンとしていた。
気絶した空太を連れてメイア達が玄関門へ去り、命絃の触手で掘り返された庭園の芝生を、エマボット達がせっせと修復している頃。
魂斬邸の母屋の居間では、命彦と魅絃が、皮椅子の上でシュンとする命絃とミサヤを見下ろしていた。
「まったく、姉さんとミサヤにも困ったもんだよ。俺のポマコン見るのはいいけど、仕事上の相手へ勝手に連絡したら駄目だろう? 舞子は立場上依頼主だぞ、分かってる?」
命彦にくどくど怒られ、身を縮める命絃とミサヤ。
『気持ち良さそうに眠っていたので、起こすことがはばかられたのです。申し訳ありません』
「ま、命彦も、私とイチャイチャしたいでしょう?」
「気を遣ってくれたのは嬉しいし、イチャイチャもしたいけど、すでに自分が引き受けてる仕事がある場合は別だろ? 明日には報酬の[結晶樹の果実]が依頼所へ届く。先払いでもらえるんだし、そもそも[結晶樹の果実]は、姉さんや母さんの仕事を助けてくれるモノだ。ミサヤも好物だって言ってよく食べてるだろ? つまり、この依頼は姉さんやミサヤのために受けてるとも言える。そこは理解してくれよ、俺だって家族でまったりしたいのを我慢して仕事してるんだからさ?」
『……はい』
「分かるけど、嬉しいんだけどっ! むうぅぅー……」
俯くミサヤと、子どものようにむくれる命絃。魅絃が命彦へ言った。
「まあまあ、ミサヤちゃんは反省してるみたいだし、この一件の首謀者はどうも命絃っぽいから、もうミサヤちゃんは許してあげたら?」
「ええっ! 待ってよ母さん、ミサヤも一緒に!」
命絃が最後まで言い終わる前に、命彦が首を縦に振った。
「分かったよ母さん。ミサヤ、今回は許す。次からは駄目だぞ?」
『はい!』
ミサヤが嬉しそうに尻尾をピコピコ振り、命彦に抱えられた。
それを見た命絃が、ミサヤに詰め寄る。
「ミサヤ、この裏切り者っ!」
「命絃はまだ反省が必要ね? 罰として母さんの手伝いよ。さあ工房に行きましょう」
「嫌よ、絶対に嫌! 過重労働させられる! 私は1日3時間以上働いたら死ぬようにできてるのよ!」
嫌々と首を横に振り、命彦にしがみ付く命絃。その命絃へ諭すように、命彦が優しく言った。
「姉さん、俺は魔法具作ってる時の姉さんが1番好きだよ。そういう姉さんを愛してるんだ。俺のために、また新しい魔法具を作って欲しいって、いつも思ってる。質の良い魔法具を作ってもらうために、母さんの魔法具開発を手伝って、姉さんにもっと腕を磨いて欲しいんだ」
「え、いや、突然そういう愛の告白をされると、照れると言うかそのぉ……ポッ」
命彦の言葉を自分に都合よく解釈し、身をよじってデレデレする命絃。
その命絃を見て、命彦と目と目で通じ合った魅絃は、素早く命彦から命絃を引き剥がし、命絃の背を押した。
「はい決定! 命彦に今後も好いてもらえるよう、一杯愛していてもらえるように、母さんを手伝ってね命絃? さて、浴衣姿じゃ作業に困るから、浴衣の上から着る作業用の割烹着が必要ねぇ? 昨日洗濯した予備が部屋にあるでしょ? さっさと取りに行くわよ」
「う、あ……もうっ、分かったわよっ! その代わり、命彦は早く帰って来てよね! そして帰ったら私を一杯構うこと! いいわね?」
「りょーかい、それじゃ行って来るよ、2人とも」
魅絃や命絃に出立を告げ、ミサヤを抱えて母屋を出た命彦は、そのままの足で別館の自分の工房へ寄って、部屋着の甚平からいつもの魔法具を装備した姿へと着替え、敷地外と接する玄関門の前で待っていたメイア達と合流した。
「待たせてすまん。それと、迎えに来てくれてあんがとよ」
「いつものことだから別に良いわ。それより、やっと全員揃ったわね?」
「そうだね? これで迷宮に行けるよ、舞子」
「はい、嬉しいです……それはいいんですけど、あの、勇子さんはほっといていいんですか?」
勇子は魂斬邸の高い塀に手をつき、ズーンと沈んでいた。
「また負けた……数え切れんほど勝負を挑んどるのに、まだ1勝もしてへんやんウチ。もしかして、ウチって弱いんか?」
「いやー全敗してるのが精神的に相当応えてるみたいだねぇ。いい気味だ」
さっき気絶させられた腹いせだろうか、空太が面白そうに笑って言う。
命彦はミサヤと顔を見合わせ、勇子に声をかけた。
「おい勇子、迷宮に行くぞ、シャンとしろ」
「命彦か……ウチ、どうしてあんたの姉やんに勝てんの?」
「知るか。俺はお前と姉さんが戦う場合、理由いかんを問わず、常に全力で姉さんを応援するぞ? お前が負けたままでいてくれた方が、都合がいいんだ。いつも言ってるだろ?」
命彦のキツイ言葉に、勇子ががっくりと肩を落とす。その勇子を見て、命彦は言葉を続けた。
「ただ、今回の戦闘については、ミサヤが姉さんに手を貸してた部分もある。ただでさえ格上の相手と2対1の数的不利の条件下で、しかも相手側が迎撃の用意を整えた万全の状態で戦ったんだ。負けるのは当然だろうが?」
「……数的不利、2対1、迎撃態勢が万全の相手? せや、せやった! ウチが弱いわけやあらへん。同じ条件下で1対1やったら、ウチかてもっと戦える筈や。よっしゃ、よっしゃああーっ!」
突然勇子が叫び、復活した。
「舞子、はよ依頼所行って依頼受けるで! この鬱憤、迷宮の魔獣共で晴らしたる!」
「は、はい!」
「待ってよ、勇子。まったくさ」
「急いだって電車の時刻は決まってるのに……命彦、ミサヤも、置いてかれるわよ?」
勇子は舞子の手を引き、駆け出した。その2人を追うように、空太とメイアも小走りする。
勇子達を見ていた命彦へ、ミサヤが思念で語った。
『私が手を貸したのは精霊探査魔法《旋風の眼》を展開し、メイア達がここへ到着する数分前に、マイトへ彼女らの接近を知らせたくらいですよ? 戦闘には一切関与していませんから、純粋に実力差で勝敗が決まったと思いますが?』
「ミサヤの知らせで姉さんが待ち伏せして、迎撃用の魔法を展開してたのは事実だろ? 力のある魔法士同士の戦いにおいて、相手より先手を取れるのは相当優位に立てるぞ? この負けで凹んで、小隊の戦力が低下するのはあんまりだ。助言の1つくらいはしてやってもいいと思う」
『うふふ、お優しいことです』
命彦もミサヤを背に垂らした頭巾に入れて、勇子達を追って走り出した。
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召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
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この物語は
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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