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第一部
今のリオが思うこと
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※本日2話目の更新です。
リオは丘の上を目指す。
月に一度、あの事件があったのと同じ日に、リオは出来るだけ屋敷に向かうことにしている。敷地内の見回りということもあるが、リオにとっては月命日の墓参りが主な目的だ。
明日は朝からウォルターズの長男であるフレドリックが墓参に来る予定になっている。いつもと同じように綺麗に整った墓地を確認する。街の人たちが入れ代わり立ち代わり墓参りに来てくれるからか、庭園の中に作られたそれらはいつもきれいだった。
手前にはたくさんの使用人の墓が並んでいる。ここにあるのは引き取り先がなかった使用人だったり、ここに新たに作られる墓地に遺族が埋葬を希望した者の墓だ。家族に遺体が引き取られ、違う墓地に埋葬された使用人たちは一番手前にある大きな慰霊碑に名前が刻まれている。レオンにとっては全員、名前も顔も一致する大事な家族のような人たちだった。
その一つ一つに抱えてきた花を供えていく。
そしてその一番奥に、ひときわ大きな墓石がいくつか並んでいる。レオンの祖父であった子爵、レオンの両親、そしてレオンの叔母とその子供の墓である。
「こんにちは。今日もお天気が良くて良かったです。明日はウォルターズ公爵の息子さんがいらっしゃるそうですよ。レオンの件に対して謝りたいらしいですけど、怒らないであげてくださいね」
あの小さな少年はあの後十年、贖罪の道を歩んできたのだと、リオは知っている。
あの時安易にすぐに死んだことにしてしまったのは、後から考えると悪手だったかもな、とリオも反省した。あの少年も反省して、厨二病染みた思考から卒業してくれればよかった。後から聞いた所によるとウォルターズ公爵も灸をすえる意味でちょっときついことを言ってしまったらしい。公爵も悪手だった、と数年後にぼやいていた。慎重に物事を調べて考えてから口に出すべきだ、としっかりと植え付けるというのは大いに同意するところではあるが、あの当時の五歳児ではない前世の年齢に影響されたレオンと、そして殺伐とした現場を処理した公爵が思うよりも、フレドリックの心は純粋で柔らかく、そして繊細だったということである。
そんなフレドリックが十八歳の成人を迎え、墓参りに来るとは思わなかった。いや、墓参りを申し出ることは想定出来ていたが、ウォルターズ公爵が許可を出すとは思わなかった。
「カレッジ子爵家を潰してしまったのは、あの婿殿であり、そして俺ですからね」
カレッジという姓は捨てた。けれどカレッジ領で暮らす道を選んだし、十五歳を目前にした今、代行官であるケビンとその補佐をしているケイの仕事の手伝いをしている。上の者たちでは目の届かない領地内を歩いて子供の目線で民の声を直接伝えるのだ。上にまで回ってこない小さな問題は拾いに行かなくても街を歩くだけでぶち当たる。それはカレッジ子爵が昔から取っていた方法だった。カレッジ子爵家に来たばかりだった未成年のケイがやっていた仕事である。おかげで代行官補佐をやっているケイを知っている人が多く、その弟ということになっているリオもとても良くしてもらっている。
「将来はカレッジ領を運営を手助けする仕事に就きたいと思ってるんだ。――カレッジではないけれども、あなたたちが愛したこの領を守ることは許してほしいな」
丘の上から屋敷を見下ろすと、カレッジ領の豊かな牧草地帯と畑が広がっている。
あの日、この領を守った屋敷の者たちは、リオの誇りだった。
リオは丘の上を目指す。
月に一度、あの事件があったのと同じ日に、リオは出来るだけ屋敷に向かうことにしている。敷地内の見回りということもあるが、リオにとっては月命日の墓参りが主な目的だ。
明日は朝からウォルターズの長男であるフレドリックが墓参に来る予定になっている。いつもと同じように綺麗に整った墓地を確認する。街の人たちが入れ代わり立ち代わり墓参りに来てくれるからか、庭園の中に作られたそれらはいつもきれいだった。
手前にはたくさんの使用人の墓が並んでいる。ここにあるのは引き取り先がなかった使用人だったり、ここに新たに作られる墓地に遺族が埋葬を希望した者の墓だ。家族に遺体が引き取られ、違う墓地に埋葬された使用人たちは一番手前にある大きな慰霊碑に名前が刻まれている。レオンにとっては全員、名前も顔も一致する大事な家族のような人たちだった。
その一つ一つに抱えてきた花を供えていく。
そしてその一番奥に、ひときわ大きな墓石がいくつか並んでいる。レオンの祖父であった子爵、レオンの両親、そしてレオンの叔母とその子供の墓である。
「こんにちは。今日もお天気が良くて良かったです。明日はウォルターズ公爵の息子さんがいらっしゃるそうですよ。レオンの件に対して謝りたいらしいですけど、怒らないであげてくださいね」
あの小さな少年はあの後十年、贖罪の道を歩んできたのだと、リオは知っている。
あの時安易にすぐに死んだことにしてしまったのは、後から考えると悪手だったかもな、とリオも反省した。あの少年も反省して、厨二病染みた思考から卒業してくれればよかった。後から聞いた所によるとウォルターズ公爵も灸をすえる意味でちょっときついことを言ってしまったらしい。公爵も悪手だった、と数年後にぼやいていた。慎重に物事を調べて考えてから口に出すべきだ、としっかりと植え付けるというのは大いに同意するところではあるが、あの当時の五歳児ではない前世の年齢に影響されたレオンと、そして殺伐とした現場を処理した公爵が思うよりも、フレドリックの心は純粋で柔らかく、そして繊細だったということである。
そんなフレドリックが十八歳の成人を迎え、墓参りに来るとは思わなかった。いや、墓参りを申し出ることは想定出来ていたが、ウォルターズ公爵が許可を出すとは思わなかった。
「カレッジ子爵家を潰してしまったのは、あの婿殿であり、そして俺ですからね」
カレッジという姓は捨てた。けれどカレッジ領で暮らす道を選んだし、十五歳を目前にした今、代行官であるケビンとその補佐をしているケイの仕事の手伝いをしている。上の者たちでは目の届かない領地内を歩いて子供の目線で民の声を直接伝えるのだ。上にまで回ってこない小さな問題は拾いに行かなくても街を歩くだけでぶち当たる。それはカレッジ子爵が昔から取っていた方法だった。カレッジ子爵家に来たばかりだった未成年のケイがやっていた仕事である。おかげで代行官補佐をやっているケイを知っている人が多く、その弟ということになっているリオもとても良くしてもらっている。
「将来はカレッジ領を運営を手助けする仕事に就きたいと思ってるんだ。――カレッジではないけれども、あなたたちが愛したこの領を守ることは許してほしいな」
丘の上から屋敷を見下ろすと、カレッジ領の豊かな牧草地帯と畑が広がっている。
あの日、この領を守った屋敷の者たちは、リオの誇りだった。
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