異端の調合師 ~仲間のおかげで山あり谷あり激しすぎぃ~

こたつぬこ

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第二章

2-1 始まりと滝

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 フォーカス兄さんと別れた俺は、王都への道を歩んで山道へと差し掛かっていた。
 周りは木々が生い茂り、空からは降り注ぐ熱波が俺の背中を焼き付ける。

 喉が渇く。

 王都までの道のりは長い。
 普通に進んでいればまず間違いなく駄目。

 兄さんに貰った革袋に入っていたのは乾燥した食料がほとんどで水は入っていない。
 おそらくは遠出するためか、王都に行くように自分用に用意しておいたものなのだろう。
 水は腐ってしまうので、当然行くとなったときは新鮮なものを持っていくに決まっている。

「ピギュンをかじってみるか?」

 ぷるるんと揺れるその体は砂が付着することもなく、非常に美味しそうに見える。
 だがその気配を感じた、というより俺が見つめたためかもしれないが、体を僅かに震わせ後退った。

「ははは。冗談だよ」

 そう言うとピギュンは俺の腕に中に飛び込んできた。
 ピギュンを食べるなんてとんでもない!とでも言われてしまいそうだ。

 しかしピギュンも動いていると疲弊しているのか、最初より動きが緩慢だ。
 その体積を減らしていると言ったことはないのだが。

「ピギュンはずっと出っぱなしなんだろうか?」

 もよんもよんとその体を触りながら全身を見つめてみる。
 ヒヤリと冷たい体が気持ちいいくらいで特に変わった様子はない。
 そういえば……、と思いつつ腰のケースに目を向けるとピギュン一号の珠を嵌めた場所は空に。
 ピギュン二号の珠は透明になっていた。
 おもむろに横のボタンを押すとピギュンは体を薄くしていきながら、やがて光の粒子となり珠の中へと吸い込まれていった。
 もう一度押せば出てくるし、簡単に出し入れすることができる。
 ピギュンはどう感じているのかは分からないが、出し入れすることで不快に思っていたりはしないようだ。

(なるほどね……。たくさんいれば俺の軍隊にも成り得るということか。なら調合はどんどん試したほうがいいってことだね)

 とは思ったところで調合はほとんどの場合で水が必要になる。
 調合材料は行商隊から買い込んで調合台の中にしまっているが水だけはない。
 そうすると最初にループしてしまうのだ。

 この先は山道であるが山賊などの心配はない。絶対的に人が通らない場所なので、そんなことをここでするメリットはないためだ。
 逆に言えば人に助けを求めることもできないということ。
 湧き水でも出る場所があればいいが、なければ絶望的だ。

 なら木々が生い茂る森の方が水がありそだと思ったのは、普通の考えとは思わないか?

 耳を澄ましてみると微かに聞こえる水の音。
 木漏れ日を頼りにしその音のする方へと向かってみる。
 しかしそれは単純な湧き水なんかではなかったようで、近付くにつれ激しい音が聞こえてくる。
 清涼な風と微細な水しぶきを飛ばす、いわゆる滝というやつだ。

「こんなとこがあったんだ……」

 滝から流れる流水が美しい溜まり池と小川を作り出し、森との調和で見事な憩いの空間を作り上げている。
 さらに幸いなことに近辺には調合に使えそうな植物や、さらには変わった鉱物も見える。
 追手がいるというわけでもない。俺は死んだことになっているはずだ。
 少しの間ここで調合を試して準備を整えてもいいかもしれない。

 そう思った時、滝の後ろに大きな穴が開いてるのも目に留まった。
 激しい水流の向こうなので行くことは敵わないし、どれほどの大きさなのかもよく分からない。
 それでも何となく気になり目が自然と向いてしまう。

 けれど今は調合! 調合だ!

 そう鼓舞して周辺のアイテムを集め始めた。
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