異端の調合師 ~仲間のおかげで山あり谷あり激しすぎぃ~

こたつぬこ

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第二章

2-2 調合2回目

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 滝周辺で素材を集める事1時間。かなりの量の物が集まっていた。

ポリー草――煮詰めた液体が渇くと固く変化し接着剤となる。
ププロフ草――乾燥させて燃やすと虫よけの香を発生させる。
サラマン草――乾燥させると簡易着火剤となる。

スリポ茸――睡眠促進効果。但し大量摂取すると呼吸器障害を起こす。
キノキノ茸――疲労回復硬化。但し大量摂取すると幻覚症状が起き強い中毒性がある。
シイシイ茸――食用キノコ。煮ても焼いても美味。

魔香岩――香りの魔力を含んだ石。粉にすると香り成分を吸着する。
魔水岩――水の魔力を含んだ石。水の浄化作用をもつ。また砕いて武器に混ぜ込むことで属性を付与できる。

耐水苔――表面が水不透過性の膜で覆われた苔。食用可能。

 さらにはピピン草やアリーの茎なんかも生えていた。どれもこれもそこそこの量を採集し調合台の引き出しに入れている。
 今まで採集なんて割とどうでもいいと思っていたことだったが、やってみてこんなに楽しいとは思わなかった。

 ただ、なぜこんなに群生しているのかは分からないけど。

 洞窟のせい? 滝が放つ清涼感のせい?

 不明であるが俺にとっては幸運なことなので考えないことにした。

 そんなことよりも大事なのは調合。
 といっても材料だけはかき集めたが、全てが基礎調合の本に載っているという訳では勿論ない。
 有用物としての知識を本で得たことから集めておいたわけだ。

「ま、とはいっても早速やるけどね」

 基礎調合の本をパラパラとめくり、必要材料がそろっているページを開く。
 かなり後半の項目。調合難度が高めという訳だ。

『防水軟膏』
 効能
8時間ほどの間水の透過を完全に阻害する。時間経過で自然と乾燥し剥がれ落ちる。

 調合法
魔水岩の粉と耐水苔の灰を1:1の割合で混ぜ合わせたものに、ポリー草の煮詰め汁を少しずつ加え練り合わせていく。
粉と灰の粒子の大きさは誤差15%以内の大きさに合わせる必要があり、粒子の分布率を13%の未満に収束させる必要がある。
また、ポリー草の煮詰め液は飽和濃度を越えて固体化が始まってしまうと失敗してしまうため――

 と、さらにつらつらとやり方が書いてある。
 面倒なので省くけど、効能も調合法ももっと詳しい。
 とりあえず調合台の性能を考えれば失敗することはない。……はずだ。

(というよりこれを作って意味あるのかって気もするし、俺が作っちゃうとモンスターになるわけだけど)

 やってみないと分からない。
 一つ言えることは単純に防水軟膏ができるわけではないということだ。
 水の上を歩くほどの力は出せないが、全身に塗れば水の上に浮かぶくらいの浮力は得られるようで、少し興味はあったのだけど。
 自分にないものをねだっても仕方がない。

「まぁいいや。やろやろ。これで終わりってわけじゃないし」

 基礎調合にはもっと難易度の低いものも二つほどあった。
 特に深い意味があったわけじゃない。
 たまたまこれからやろうと思っただけだ。

 傷薬を作ろうと思った時もそうだったけど、調合をやる前は何だかドキドキする。
 まるで俺が偉い学者さんにでもなったかのような気分。

 なんとなく辺りを見回してから、調合台に並べた必要物に目を向けた。

 振動粉砕機と小規模高温窯。どちらも複雑すぎるほどに複雑な見た目をしている。
 原理は今一つよく分からないけど、これで魔水岩の粉と耐水苔の灰を作ることができるということは分かっている。

 次は濃度計付き電熱煮沸機。水分と材料を入れてスイッチを入れると設定した水溶液の濃度まで自動で煮詰めてくれる。
 ただかき混ぜ機能はついていないので、適宜かき混ぜてやる必要があるみたいだけど。

 あとは均一化を行うためのミキサーや混ぜ合わせる乳鉢乳棒なども用意した。

 本来この防水軟膏を調合するためには相当の準備と設備が必要になるだろうけど、俺の場合は調合台の上だけで全てが終わってしまう。
 皆に言ったら羨ましがられるだろうなぁという気持ちはあるのだけど、珍しすぎて目立ってしまうのは困る。
 コーラム家の人間だとばれてはいけないのだ。
 有名になるとするなら調合以外の分野で有名にならなくてはいけない。

「モンスターになっちゃうしね」

 モンスターを作り出す人間だなんて知れ渡ってしまったら、人々から奇異の眼を向けられるのは必至。
 それは色々な意味でまずい。
 モンスターを生活に利用したり、使役したりする人がいるということは聞いたことがあるけど。
 恐怖の対象であるそれを連れ歩いていると大変だろうと思う。

「さてと……」

 サラサラと流れる小川、ざざーと水が落ちる滝壺、そこから届けられるひんやりとした空気。
 そういった物を感じながら俺は調合を開始した。
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