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第二章
2-23 少女と上着
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フランシスがゆっくりと歩き出すのに合わせて俺も歩き出す。
俺とフランシスが先を歩き、リンガルさんとシュネムさんが馬を連れながら後方を歩いている。
するとフランシスは俺のかけてやった上着をくんくんと嗅ぎ匂いを確かめ始めた。
「何これ、臭いわよ。私に……こんな汚い……」
よくよく考えてみれば屋敷を出てからは一度も風呂になんて入っていないし、滝壺でどぼんしたのが最後の行水といえる。
そりゃ確かに臭い。
臭いはずだ。
だが。
折角の俺の好意に、そんな言い方しなくてもいいんじゃないだろうか。
それに女の子に臭いと言われるとはっきり言って悲しい。
ジョカは何も言わないようだけど、何か言って欲しいくらいに。
「じゃあいいよ、そんな風に言うなら返してくれよ。俺だって上着がいらないってわけじゃないんだ」
そう言いながら上着に手をかけようとしたが、フランシスはキュッと上着を握り俺から逃げるように避ける。
俺の手は空を切り、一体なんなのだと頭を疑問符が埋めつくす。
「貸してくれたのに何よ! ううん。貸しとは言ってないわ。これは貰ったの。私があなたから借金のカタとして!」
「は、はぁ!? 何訳のわから……」
言って手を再度伸ばしかけたところで、フランシスが再度くんくんと俺の上着の匂いを嗅いでいるのを見て固まる。
当然のように「くさい~」と言ったのだが、なぜかその頬は緩んでいた。
「これはもう私のものなの! 取ろうとしたらあなたが泥棒なんだからね!」
「いや、意味わからんし……」
「じゃあ借金、今すぐ耳をそろえて返してよ! はい、200万! 無理なんでしょ? この上着はその利子の分よ!」
なぜ俺は200万の借金を抱えたことになっているのだろうか。
いや。確かに剣の事は悪いと思っている。悪いと思っているからこそその言い分を切って捨てれない。
まるで悪徳商法のようだ。
後ろの二人は何やら話をしているようで、俺に助け舟を出してくれそうにはない。
なので、俺は観念することにした。ジョカが怒らなければ、まぁ構わない話だ。
服くらい買えばいいからな。
「はぁ~。分かった。分かったよ。借金はともかくとしてその上着はフランシスにやるよ。その代わり大事にしてくれよな」
「こ、こんなの用が済んだらゴミ箱行きに決まってるじゃない……」
「んだよそれ……」
そう吐き捨てた時、再度くんくんと匂いを嗅ぎ「くさい~」と言ったのを見て腹が立ちそうになり俺は足を速めた。
どう考えてもおちょくられてるし、馬鹿にされている。なんで臭いのに三回も匂いを嗅ぐんだ! と言いたかったけど俺が感情をたかぶらせるとジョカが暴れてしまう。
やはり俺はフロードやピギュンたちのような仲間以外を作ると、胃がキリキリ痛むのが確定している。
さっさと別れて俺は俺の道を行くべきだ。
「ねぇ」
しかし、リンリアに着いた後どうするのがいいだろうか?
冒険者になりたいとは思っていたが、それは15歳になってからの話。12歳の俺では冒険者登録をすることができず冒険者にはなれない。
保護者がいれば大丈夫だという話も聞いたことがあるが、当然俺は実家の後ろ盾がないために保護者はいない。
「ねぇってば」
冒険者のシステムも冒険者ギルドのシステムも領内にはなかったわけで、伝え聞いた話くらいでしか知らない。
王都に言った時も別の用事だったし、随分と小さいころだったしな。
その辺りを調べてみるか、それとも…………。
だが。
何をするにせよ所持金が少ないということは正直言ってまずい。
ピピン草を採集して売ってもいいのだが、大した金にはならない。実家という住処があった時とは違うのだ。
薬草採集だけして生きていくことができるのは家があってこその話。
「ねぇ!」
キュッと俺の服が掴まれ何かと思い振り返って見ると、フランシスが俺の顔をじっと見つめながら頬を膨らましていた。
しかもちょっと睨まれてる?
「ん、どうしたの?」
「なんでずっと呼んでるのに無視するのよ! ずっとずっと呼んでたのに!」
「あ、ああ……そうなの? ちょっと考え事してたから全然聞こえてなかったよ。別に無視したわけじゃないから……んで、なに?」
考え事をしてるうちに先ほどの怒りも薄れていた。
なんだかぎゅっと俺の上着を握りしめていて、ぞんざいに扱っているという訳でもないし。
「な、名前……教えてよ……。あなたの名前が知りたいの」
さっきリンガルさんが口にしてなかったかな、と思いつつも教えてやることにした。
別に減るもんでもないし構わないだろう。
「俺の名前はディル。えーと……12歳だよ」
名前、しかも貴族としての名前じゃないのでなんとなく寂しい気持ちがして年もつけてやった。
ディルレアン・ド・コーラム。嫌いじゃなかったんだけどなぁ。
「ディル……くん……? この上着結構上等な生地だから貴族かと思ったけど違うんだ……。ふぅん、でも12歳か。私より一つ年上なのね」
「あー別に上等って訳でも……。ま、悪いもんでもないけどさ。フランシスは11歳か。性格はともかくとして見た目は大人びてるね」
上等な服かどうかで言えばそこそこの服だと思う。一応伯爵家として身なりは整えるように言われてるし。
ただ貴族ということはバレてはいけない事。それにおそらくだけど王都にでもいけばこのくらいの服はいくらでもある。
なので誤魔化しつつ答え、フランシスの年齢を聞いての正直な意見を言ったつもりだったのだが。
「ちょ、ちょっと性格はともかくとしてって何よ! 性格だって落ち着いてるわよ」
「ど、どこがぁ~……? 暴れ馬みたいな性格だと思うけど」
フランシスを見て落ち着いていると言う人は十人いて十人いないだろう。
いや、確かに最初よりかは落ち着いた雰囲気を出してるかもしれないけれど、俺には土下座を強要された時の記憶が頭に焼き付いている。
「あ、あ、あ、暴れ馬ぁ。しっつれいね! そんなこと言われたの初めてよ! 普段なら私は…………はぁ。とにかく暴れ馬はやめて」
言い得て妙だったとは思うがフランシスには不満だった様子。
物凄い剣幕で言った後、少し肩を落として呟いた。
だが、確かに女の子相手に暴れ馬はなかったかな?
じゃじゃ馬とかのほうがよかったんだろうか?
しかし今更じゃじゃ馬と言い換えてもさらにヒートアップしそうな気がする。
なので逆に尋ねかけてみることにした。
「分かった分かった。じゃあ何だったら良かったの?」
「そうね……。しろ……じゃなくて…………可愛い子リスとか……?」
「子リスぅ!? どこの、だれが、子リスなの? フランシスが? それ何の冗談……」
キュッと目を一度つぶり、周囲をキョロキョロと見回してから飛び出してきた言葉に、俺は反射的に声をあげていた。
いや、だって子リスは流石にないだろう?
「ばかばかばかばか。ディルくんのばかっ!」
「あ、だめだめ。叩かないで。俺の事叩いたらまた土下座させないといけなくなるから」
「あぅ……」
拳を振り上げていたフランシスの顔の前に手を向けて制止をかける。
プルプルと唇を震わせているのは、あの時の事を思い出しているのだろう。目をウルウルと滲ませると先へと向けて足早に進みだす。
なんだかちょっと可哀想な気もしてそれを追いかけ前方を向いた時、リンリアの巨大な円型外壁と閉じている赤褐色の重厚な門が目に入った。
俺とフランシスが先を歩き、リンガルさんとシュネムさんが馬を連れながら後方を歩いている。
するとフランシスは俺のかけてやった上着をくんくんと嗅ぎ匂いを確かめ始めた。
「何これ、臭いわよ。私に……こんな汚い……」
よくよく考えてみれば屋敷を出てからは一度も風呂になんて入っていないし、滝壺でどぼんしたのが最後の行水といえる。
そりゃ確かに臭い。
臭いはずだ。
だが。
折角の俺の好意に、そんな言い方しなくてもいいんじゃないだろうか。
それに女の子に臭いと言われるとはっきり言って悲しい。
ジョカは何も言わないようだけど、何か言って欲しいくらいに。
「じゃあいいよ、そんな風に言うなら返してくれよ。俺だって上着がいらないってわけじゃないんだ」
そう言いながら上着に手をかけようとしたが、フランシスはキュッと上着を握り俺から逃げるように避ける。
俺の手は空を切り、一体なんなのだと頭を疑問符が埋めつくす。
「貸してくれたのに何よ! ううん。貸しとは言ってないわ。これは貰ったの。私があなたから借金のカタとして!」
「は、はぁ!? 何訳のわから……」
言って手を再度伸ばしかけたところで、フランシスが再度くんくんと俺の上着の匂いを嗅いでいるのを見て固まる。
当然のように「くさい~」と言ったのだが、なぜかその頬は緩んでいた。
「これはもう私のものなの! 取ろうとしたらあなたが泥棒なんだからね!」
「いや、意味わからんし……」
「じゃあ借金、今すぐ耳をそろえて返してよ! はい、200万! 無理なんでしょ? この上着はその利子の分よ!」
なぜ俺は200万の借金を抱えたことになっているのだろうか。
いや。確かに剣の事は悪いと思っている。悪いと思っているからこそその言い分を切って捨てれない。
まるで悪徳商法のようだ。
後ろの二人は何やら話をしているようで、俺に助け舟を出してくれそうにはない。
なので、俺は観念することにした。ジョカが怒らなければ、まぁ構わない話だ。
服くらい買えばいいからな。
「はぁ~。分かった。分かったよ。借金はともかくとしてその上着はフランシスにやるよ。その代わり大事にしてくれよな」
「こ、こんなの用が済んだらゴミ箱行きに決まってるじゃない……」
「んだよそれ……」
そう吐き捨てた時、再度くんくんと匂いを嗅ぎ「くさい~」と言ったのを見て腹が立ちそうになり俺は足を速めた。
どう考えてもおちょくられてるし、馬鹿にされている。なんで臭いのに三回も匂いを嗅ぐんだ! と言いたかったけど俺が感情をたかぶらせるとジョカが暴れてしまう。
やはり俺はフロードやピギュンたちのような仲間以外を作ると、胃がキリキリ痛むのが確定している。
さっさと別れて俺は俺の道を行くべきだ。
「ねぇ」
しかし、リンリアに着いた後どうするのがいいだろうか?
冒険者になりたいとは思っていたが、それは15歳になってからの話。12歳の俺では冒険者登録をすることができず冒険者にはなれない。
保護者がいれば大丈夫だという話も聞いたことがあるが、当然俺は実家の後ろ盾がないために保護者はいない。
「ねぇってば」
冒険者のシステムも冒険者ギルドのシステムも領内にはなかったわけで、伝え聞いた話くらいでしか知らない。
王都に言った時も別の用事だったし、随分と小さいころだったしな。
その辺りを調べてみるか、それとも…………。
だが。
何をするにせよ所持金が少ないということは正直言ってまずい。
ピピン草を採集して売ってもいいのだが、大した金にはならない。実家という住処があった時とは違うのだ。
薬草採集だけして生きていくことができるのは家があってこその話。
「ねぇ!」
キュッと俺の服が掴まれ何かと思い振り返って見ると、フランシスが俺の顔をじっと見つめながら頬を膨らましていた。
しかもちょっと睨まれてる?
「ん、どうしたの?」
「なんでずっと呼んでるのに無視するのよ! ずっとずっと呼んでたのに!」
「あ、ああ……そうなの? ちょっと考え事してたから全然聞こえてなかったよ。別に無視したわけじゃないから……んで、なに?」
考え事をしてるうちに先ほどの怒りも薄れていた。
なんだかぎゅっと俺の上着を握りしめていて、ぞんざいに扱っているという訳でもないし。
「な、名前……教えてよ……。あなたの名前が知りたいの」
さっきリンガルさんが口にしてなかったかな、と思いつつも教えてやることにした。
別に減るもんでもないし構わないだろう。
「俺の名前はディル。えーと……12歳だよ」
名前、しかも貴族としての名前じゃないのでなんとなく寂しい気持ちがして年もつけてやった。
ディルレアン・ド・コーラム。嫌いじゃなかったんだけどなぁ。
「ディル……くん……? この上着結構上等な生地だから貴族かと思ったけど違うんだ……。ふぅん、でも12歳か。私より一つ年上なのね」
「あー別に上等って訳でも……。ま、悪いもんでもないけどさ。フランシスは11歳か。性格はともかくとして見た目は大人びてるね」
上等な服かどうかで言えばそこそこの服だと思う。一応伯爵家として身なりは整えるように言われてるし。
ただ貴族ということはバレてはいけない事。それにおそらくだけど王都にでもいけばこのくらいの服はいくらでもある。
なので誤魔化しつつ答え、フランシスの年齢を聞いての正直な意見を言ったつもりだったのだが。
「ちょ、ちょっと性格はともかくとしてって何よ! 性格だって落ち着いてるわよ」
「ど、どこがぁ~……? 暴れ馬みたいな性格だと思うけど」
フランシスを見て落ち着いていると言う人は十人いて十人いないだろう。
いや、確かに最初よりかは落ち着いた雰囲気を出してるかもしれないけれど、俺には土下座を強要された時の記憶が頭に焼き付いている。
「あ、あ、あ、暴れ馬ぁ。しっつれいね! そんなこと言われたの初めてよ! 普段なら私は…………はぁ。とにかく暴れ馬はやめて」
言い得て妙だったとは思うがフランシスには不満だった様子。
物凄い剣幕で言った後、少し肩を落として呟いた。
だが、確かに女の子相手に暴れ馬はなかったかな?
じゃじゃ馬とかのほうがよかったんだろうか?
しかし今更じゃじゃ馬と言い換えてもさらにヒートアップしそうな気がする。
なので逆に尋ねかけてみることにした。
「分かった分かった。じゃあ何だったら良かったの?」
「そうね……。しろ……じゃなくて…………可愛い子リスとか……?」
「子リスぅ!? どこの、だれが、子リスなの? フランシスが? それ何の冗談……」
キュッと目を一度つぶり、周囲をキョロキョロと見回してから飛び出してきた言葉に、俺は反射的に声をあげていた。
いや、だって子リスは流石にないだろう?
「ばかばかばかばか。ディルくんのばかっ!」
「あ、だめだめ。叩かないで。俺の事叩いたらまた土下座させないといけなくなるから」
「あぅ……」
拳を振り上げていたフランシスの顔の前に手を向けて制止をかける。
プルプルと唇を震わせているのは、あの時の事を思い出しているのだろう。目をウルウルと滲ませると先へと向けて足早に進みだす。
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