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第二章
2-22 少女の頼み
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フランシスは今度は俺の手を掃うことなく布地を受け取ると、大粒の涙をすくいあげた。
そのまま手は鼻下へと降りていき……ちーんと鼻をかむのは避けられない事態だったのだろうか?
だが、それを見てジョカは何かを言うことはなかった。
おそらくは鼻をかんだのが、俺にとって不利益かどうかということが分からないのだろう。
別に洗えば済む話。ジョカが機嫌を損ねなければそれでいい。
ぐい、と突き出すように向けてくる布地を、溜息を漏らしながら受け取る。
「こんな、あんた……屈辱、今まで生まれてきて……味わったことはないわ!」
「あ、ああ……。いや、すまなかったよ。土下座なんかさせたりしてさ」
目を晴らしながらひくひくと鼻をすすっていたが、やがて黙り込み背を向けた。
それと入れ替わるようにリンガルさんが歩み寄ってきて俺に囁き掛けてくる。
「あの、先ほどの……えーと、その、やり取りは従魔……の女性が関係してましたか?」
「あ、はい、そうです。すみません、連れの女の子を泣かしちゃって……。でも、ああしないと多分……」
その先はフランシスの仲間(保護者?)であるリンガルさんを前にして口にすることはできなかった。
軽く目を瞑り一度フランシスに顔を向け、再度俺へと向き直る。
「いえ、あれで良かったです。お灸……になったやもしれませんし。それにディル殿も色々とあるのでしょう」
お灸というとフランシスの性格を元々困ってたということ?
にしても流石にやり過ぎたとは思う。今もダンゴ虫のようになっていたフランシスの姿が思い出され、なんとも切ない気持ちになる。
「はは、そうなんです、色々と大変なんです。では、荷物は申し訳なかったですけどこれで……行ってもいいですか?」
「待ってください。どうせならしっかりとお礼を…………そうか、金も全て無くなってしまったのか」
金、という言葉を聞いて心臓が跳ねる。よくよく考えてみれば茶巾はずっと出しておくことはできない。
ものにより出しておける時間に差異があるが、例外なく制限がある。一度調合台にしまおうと思いながらしまえば初期化されるのだが。
お金がなくて服も買えない、宿も取れない、ご飯も食べれない、それはある意味では俺の責任だ。
罪悪感からついつい同情の言葉が口から飛び出ていた。
「あ~えっと……少しで良かったら分けてあげれますよ」
「いや、命の恩人のディル殿にお金も恵んでいただくわけには…………」
リンガルさんが申し訳なさげにそういった瞬間、シュネムさんに慰められ機嫌を直したらしいフランシスがつかつかと歩み寄ってきた。
目は赤いがもう大丈夫なのか再度柳眉を吊り上げている。何を言われるかと考えるだけで胃が痛む。
別に言われる内容にではない。
またジョカの機嫌を損ね土下座させるような展開になったら可哀そうなのだ。
「そういえば! 私の! 大切なレイピア! どうしてくれるのよっ!? 凄く大切なものだったっていうのに!」
フランシスは腰に確かに高価そうな意匠を施された匠の一品、といった様相の剣を差していて当然全て消え失せた。
とはいえ俺に支払い能力なんてない。リトリアの生活費がどれだけあるか? くらいにしかお金は持っていない。
「あーえーと、それはごめん。…………ちなみにいくらだったの……?」
「値段の問題じゃないわ! けれど、そうね……200万ティルはする代物よ!」
「に、にひゃくまんてぃるぅ!?」
俺の調合台に入っているお金が多分5万ティルくらいなのでその40倍だ。
逆になんでそんな剣を持っていたのか尋ねたいくらいの物。
少女の手は到底剣を振り込んでいるようには見えない。
「絶対に弁償してもらうわ! ううん、慰謝料も貰わないといけないから…………」
言いかけた所でリンガルさんに腕を取られ、何やらぼそぼそと囁き掛けられた。俺をちらちらとみながら二人で内緒話を行う。
なんとなく気分が悪いが、リンガルさんが忠告でもしてくれているのだろうと思えばそれほどでもない。
フランシスは大きくそれに頷いた後、唇を真一文字に引き結ぶ。そして柔らかな口調、先ほどと違う女性らしさを感じる声音が響く。
「あ、えーと、弁償してください。慰謝料はいいの……でも弁償は絶対……して欲しい」
「悪いけどそんなお金なんてないよ。それにそんな高価なものを弁償ってのはおかしいんじゃない?」
俺が即答すると一瞬たじろぎ瞳孔が揺らぐ。
それでも体勢を整えると、真剣な視線が俺の眼窩を貫いた。
「じゃあ、私の仲間になって」
「絶対に嫌です」
俺はフランシスの提案を即断った。一瞬の迷いもない。
当たり前だろう?
まずなぜ仲間にならないといけないのか意味が分からない上に、ジョカがいる現状、仲間なんていたら俺の精神が壊れてしまう。
俺がフランシスの命を何度救ったか……そう、四度も救っているのだ。物の一時間ほどで四回フランシスは命を落としかけている。
それなのに仲間になんてできるわけがない。
当然の結果。だがフランシスにとってはそうではなかったようで、パチクリと目を瞬かせ間の抜けた声が口から漏れる。
「え? へ? えぇ? なんで仲間になってくれないの? そういえばあなた……私の事……」
「フランシスッ! すみません、ディル殿。しかし、これはフランシスの独断ではなく我ら三人の総意。是非お力を貸していただきたいのです」
力を貸していただきたい。
その言葉は現在お金がないから、そういう意味で言っているのではないというのが分かった。
多分だが改めてお礼をしたいと言っていたが、その時に俺に何か頼み事でもするつもりだったのではなかろうか。
別にそれが嫌だという訳ではない。
自分勝手だとか思っているわけでもない。
「リンガルさんが何かに困っていて頼みがあるというのはなんとなく分かります。分かりますが、俺は力を制御できているわけではありません。なので、申し訳ありませんが……」
「仲間にして」
俺がリンガルさんに申し訳ないと思いつつも断ろうとしたところ、フランシスの口から小さな声が聞こえ俺は驚き尋ね返す。
「え……?」
「私達をあなたの仲間にしてください!」
俺とほぼ同じ身長であるが、僅かに膝を折っているためか目線は下から見上げてきている。上目遣いというやつだ。
まだ赤い目。それでもなぜか覚悟の炎が揺らぐような気配。
だが、
「だ・か・ら、絶対に嫌です」
無理なものは無理なのだ。
フランシスの双眸からぶわと涙が溢れ、そしてリンガルに泣きついた。
「リンガルぅ、この人なんなのぉ。こんなこと今までなかったわよぉ。わたし、わたしぃ、うぅぅぅ……」
「はははは。いや、すみません。ディル殿の力を制御できないという言葉、私にはなんとなく分かりました。確かに……」
乾いた笑いを漏らし、フランシスの後頭部をポンポンと叩きながら抉れた地面や干からびた死体に目を向けた。
ゴクリと喉を鳴らす音が聞こえ、俺もつられるように唾を飲み込む。
「そういうことなんです。ま、制御できるようにでもなれば……お力になれるかもしれませんが」
「ほ、本当ですか!? ディル殿! 私たちの事を覚えておいて頂ければそれで十分です」
「勿論、覚えましたよ。代わりに俺の事は秘密に……。じゃあ、とりあえず目的地は同じなのでリンリアまで行きましょうか」
「ええ、勿論です。じゃあ、そうですね。…………フランシス、行きますよ」
リンガルさんに泣きついていたフランシスは、顔をあげると目をごしごしと擦った。
別にフランシスが嫌いという訳ではない。
性格に難があろうと可愛いものは可愛い。
俺は小さく息をつくと、着ていた上着を一枚脱ぎフランシスの背中にかけてやった。
そのまま手は鼻下へと降りていき……ちーんと鼻をかむのは避けられない事態だったのだろうか?
だが、それを見てジョカは何かを言うことはなかった。
おそらくは鼻をかんだのが、俺にとって不利益かどうかということが分からないのだろう。
別に洗えば済む話。ジョカが機嫌を損ねなければそれでいい。
ぐい、と突き出すように向けてくる布地を、溜息を漏らしながら受け取る。
「こんな、あんた……屈辱、今まで生まれてきて……味わったことはないわ!」
「あ、ああ……。いや、すまなかったよ。土下座なんかさせたりしてさ」
目を晴らしながらひくひくと鼻をすすっていたが、やがて黙り込み背を向けた。
それと入れ替わるようにリンガルさんが歩み寄ってきて俺に囁き掛けてくる。
「あの、先ほどの……えーと、その、やり取りは従魔……の女性が関係してましたか?」
「あ、はい、そうです。すみません、連れの女の子を泣かしちゃって……。でも、ああしないと多分……」
その先はフランシスの仲間(保護者?)であるリンガルさんを前にして口にすることはできなかった。
軽く目を瞑り一度フランシスに顔を向け、再度俺へと向き直る。
「いえ、あれで良かったです。お灸……になったやもしれませんし。それにディル殿も色々とあるのでしょう」
お灸というとフランシスの性格を元々困ってたということ?
にしても流石にやり過ぎたとは思う。今もダンゴ虫のようになっていたフランシスの姿が思い出され、なんとも切ない気持ちになる。
「はは、そうなんです、色々と大変なんです。では、荷物は申し訳なかったですけどこれで……行ってもいいですか?」
「待ってください。どうせならしっかりとお礼を…………そうか、金も全て無くなってしまったのか」
金、という言葉を聞いて心臓が跳ねる。よくよく考えてみれば茶巾はずっと出しておくことはできない。
ものにより出しておける時間に差異があるが、例外なく制限がある。一度調合台にしまおうと思いながらしまえば初期化されるのだが。
お金がなくて服も買えない、宿も取れない、ご飯も食べれない、それはある意味では俺の責任だ。
罪悪感からついつい同情の言葉が口から飛び出ていた。
「あ~えっと……少しで良かったら分けてあげれますよ」
「いや、命の恩人のディル殿にお金も恵んでいただくわけには…………」
リンガルさんが申し訳なさげにそういった瞬間、シュネムさんに慰められ機嫌を直したらしいフランシスがつかつかと歩み寄ってきた。
目は赤いがもう大丈夫なのか再度柳眉を吊り上げている。何を言われるかと考えるだけで胃が痛む。
別に言われる内容にではない。
またジョカの機嫌を損ね土下座させるような展開になったら可哀そうなのだ。
「そういえば! 私の! 大切なレイピア! どうしてくれるのよっ!? 凄く大切なものだったっていうのに!」
フランシスは腰に確かに高価そうな意匠を施された匠の一品、といった様相の剣を差していて当然全て消え失せた。
とはいえ俺に支払い能力なんてない。リトリアの生活費がどれだけあるか? くらいにしかお金は持っていない。
「あーえーと、それはごめん。…………ちなみにいくらだったの……?」
「値段の問題じゃないわ! けれど、そうね……200万ティルはする代物よ!」
「に、にひゃくまんてぃるぅ!?」
俺の調合台に入っているお金が多分5万ティルくらいなのでその40倍だ。
逆になんでそんな剣を持っていたのか尋ねたいくらいの物。
少女の手は到底剣を振り込んでいるようには見えない。
「絶対に弁償してもらうわ! ううん、慰謝料も貰わないといけないから…………」
言いかけた所でリンガルさんに腕を取られ、何やらぼそぼそと囁き掛けられた。俺をちらちらとみながら二人で内緒話を行う。
なんとなく気分が悪いが、リンガルさんが忠告でもしてくれているのだろうと思えばそれほどでもない。
フランシスは大きくそれに頷いた後、唇を真一文字に引き結ぶ。そして柔らかな口調、先ほどと違う女性らしさを感じる声音が響く。
「あ、えーと、弁償してください。慰謝料はいいの……でも弁償は絶対……して欲しい」
「悪いけどそんなお金なんてないよ。それにそんな高価なものを弁償ってのはおかしいんじゃない?」
俺が即答すると一瞬たじろぎ瞳孔が揺らぐ。
それでも体勢を整えると、真剣な視線が俺の眼窩を貫いた。
「じゃあ、私の仲間になって」
「絶対に嫌です」
俺はフランシスの提案を即断った。一瞬の迷いもない。
当たり前だろう?
まずなぜ仲間にならないといけないのか意味が分からない上に、ジョカがいる現状、仲間なんていたら俺の精神が壊れてしまう。
俺がフランシスの命を何度救ったか……そう、四度も救っているのだ。物の一時間ほどで四回フランシスは命を落としかけている。
それなのに仲間になんてできるわけがない。
当然の結果。だがフランシスにとってはそうではなかったようで、パチクリと目を瞬かせ間の抜けた声が口から漏れる。
「え? へ? えぇ? なんで仲間になってくれないの? そういえばあなた……私の事……」
「フランシスッ! すみません、ディル殿。しかし、これはフランシスの独断ではなく我ら三人の総意。是非お力を貸していただきたいのです」
力を貸していただきたい。
その言葉は現在お金がないから、そういう意味で言っているのではないというのが分かった。
多分だが改めてお礼をしたいと言っていたが、その時に俺に何か頼み事でもするつもりだったのではなかろうか。
別にそれが嫌だという訳ではない。
自分勝手だとか思っているわけでもない。
「リンガルさんが何かに困っていて頼みがあるというのはなんとなく分かります。分かりますが、俺は力を制御できているわけではありません。なので、申し訳ありませんが……」
「仲間にして」
俺がリンガルさんに申し訳ないと思いつつも断ろうとしたところ、フランシスの口から小さな声が聞こえ俺は驚き尋ね返す。
「え……?」
「私達をあなたの仲間にしてください!」
俺とほぼ同じ身長であるが、僅かに膝を折っているためか目線は下から見上げてきている。上目遣いというやつだ。
まだ赤い目。それでもなぜか覚悟の炎が揺らぐような気配。
だが、
「だ・か・ら、絶対に嫌です」
無理なものは無理なのだ。
フランシスの双眸からぶわと涙が溢れ、そしてリンガルに泣きついた。
「リンガルぅ、この人なんなのぉ。こんなこと今までなかったわよぉ。わたし、わたしぃ、うぅぅぅ……」
「はははは。いや、すみません。ディル殿の力を制御できないという言葉、私にはなんとなく分かりました。確かに……」
乾いた笑いを漏らし、フランシスの後頭部をポンポンと叩きながら抉れた地面や干からびた死体に目を向けた。
ゴクリと喉を鳴らす音が聞こえ、俺もつられるように唾を飲み込む。
「そういうことなんです。ま、制御できるようにでもなれば……お力になれるかもしれませんが」
「ほ、本当ですか!? ディル殿! 私たちの事を覚えておいて頂ければそれで十分です」
「勿論、覚えましたよ。代わりに俺の事は秘密に……。じゃあ、とりあえず目的地は同じなのでリンリアまで行きましょうか」
「ええ、勿論です。じゃあ、そうですね。…………フランシス、行きますよ」
リンガルさんに泣きついていたフランシスは、顔をあげると目をごしごしと擦った。
別にフランシスが嫌いという訳ではない。
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俺は小さく息をつくと、着ていた上着を一枚脱ぎフランシスの背中にかけてやった。
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