王子に転生したので悪役令嬢と正統派ヒロインと共に無双する

こたつぬこ

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 俺は世界が変わり始めているということから、二つの組織を作りたいと考えていた。
 それは小説ではおなじみの冒険者ギルドという組織と、冒険者を育成するための学校だ。
 モンスターがいる世界では、ほとんどの場合この組織が存在している。
 兵士や警邏だけで人々を守るのは無理があるし、生活というのは街の中だけで行われているわけではない。

 魔物の目撃例がチラチラ出始め、兵士がそれの対応に追われるという状況。
 無理が来るのは目に見えているし、市民にも力をつけてもらいたいと考えている。

「ふむ。殿下の考えは中々に面白いですな。ギルドと学校ですか」

 いつものメンバーに加え、今日は教育を担当する大臣ベーテを呼びつけて話していた。
 目の下にクマがあり痩せこけてはいるが、お飾りの大臣ではなく本当に頭の良い男。
 歳はアウルよりもさらに上であり信頼している、というのが王子の持つ知識上の彼の評価だ。

「ですが、その人員はどうやって割くのですか? 学校というからには教員が必要になるでしょう。誰が生徒を育てるので?」

 眼鏡の下からの鋭い圧。
 その言葉は確かにと思えるものであった。

「誰が……。俺のイメージでは冒険者というモノは自然の知識や道具の使い方、文字の読み書きなど基本的なことが全てができる人間。
 ならば……専門職の人間を集めてそれぞれ教えていけばいい……ってのはどうだ?」

「専門職というと、剣術であればそこのアウルのような、ということですか?」

「ああ、そういうことになるな。各分野のエキスパートを集めローテーションで指導していく」

「なるほどなるほど。それなら指導面では問題ないでしょう。では資金はどうするのですか? エキスパート達は当然その分野で活躍している人間。
 その穴埋めをしなければならないというと、相当の金額が必要になりますよ?」

「それについては俺の一存で決めることはできないが……王城で使用している金をそこに回したい」

 ベーテは俺の言葉を聞くとガタと音を立てて立ち上がる。

「私たちや王子に使っているお金を教育に注ぎ込むと……?」

「できればだがな。今魔物に対する手を打たないとおそらく大変なことになる。貴族から金を徴収できればしたいとこだが、流石にあの強欲なやつらは金は出さないだろう」

「ちょ、ちょっとエトワイア。私達も貴族なんですのよ、一応は」

 アリゼッタはこの国で設定されている最上の公爵家長女。
 一応なんてレベルではない紛れもない貴族の娘。

「最近はそういった意識は無くなってきた気がしますけどね。でも、確かにお金を出してくれるとは思えません」

 エリーゼも爵位こそ低いものの貴族は貴族。
 だが確かにエリーゼの言うとおり、俺は今では二人に対して貴族という肩書をほとんど感じていない。
 大切な二人の女性というだけだ。

「もっともローラント公爵、もとい私のお父様は説得いたしましたから、お金は存分にだしてくれると言っておりましたわ」

「シャーネル男爵家もアリゼッタの家程は無理ですが、協力してくれると言ってくださいました」

「二人ともありがとう。見返りは必ず用意すると伝えておいてくれ。それは俺自身からのものなので、大したことはできないかもしれないがな」

 そう言葉を交わしたとき、ベーテが俺たちに向けて拍手をしており大粒の涙を一滴落とした。

「素晴らしい。殿下は国王様の言った通り本当に成長されたんですね。
 申し訳ございません。私めは殿下を試してみていたのです。また浅慮から良からぬことでも考えているのかと……疑ってしまっていました」

「そうだったのか……。いや、構わない。俺には慎重さが足りなかったかもしれんからな」

「いえ、そんなことはありません。
 アウルの話していたように魔物というものが人々に牙を向ける可能性がある今、一刻も早く対策を打たねばなりませんから」

「それで俺の考えはどうだ? 実現できそうか?」

「できるできないではありません。この私がやってみせますとも。王子の意気は必ず実現して見せます!」

 ベーテの言葉に嬉しく思い、俺は手を差し出し握手を求めた。
 さらなる具体案を話していき、着々と魔物への対策を進めていく。
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