のんびりダンジョン経営してたら億万長者になりました。

こたつぬこ

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004.街は綺麗でした。

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「わっ!?」

 入口を開けて出ようとしたところ、外から入ってきた人と透け違った。
 文字通り通り抜けるようにだが、ごつい体に厳つい顔だったのが余計に僕の心臓を跳ねさせた。

「び、びっくりした。これは心臓に悪いや」

「コンソールを使用しても外に出れるのです! 今度はそうしてみると良いのです! 外の転送ポイントはご主人様と指定した存在しか入れないのです!」

(あーそっか。そういえばそうだった)

 と思いながらダンジョンの中を見つめてみると、僕の可愛いスライムたちが入ってきた人にやっつけられ、無残にも水滴となって崩れ落ちていた。

「あーあーあー。スライムちゃんたちが……」

「仕方がないのです! それがダンジョンというものなのです! ご主人様はダンジョンを利用して人を育てるのです!」

 人を育てる。
 それを聞いて僕の心は嬉しいと感じていた。
 何かを育てたり、成し遂げたことのない僕に、やるべきことが出来たんだと感じていた。
 いじめられてるときは凄く辛かったけど、こうして今に繋がったなら我慢した甲斐があったんだということを実感した。

「では、ここを越えたら、ご主人様とピュイは人に見えるようになるのです! 違和感は発生しないようになってるらしいので、安心してなのです!」

「うん、わかった。どんなとこに繋がってるのかドキドキするけど、ちょっと楽しみ」

 ピュイの背中を撫でながらダンジョンの外へ出ると、そこは街のど真ん中だった。
 てっきりダンジョンなので、辺境の地や郊外にでも配置されているのかと思ったけれど、全くそんなことはない。

 今は陽のきらめきも、肌を撫でる優しき風帯も、賑わう街の喧騒も、全てを感じる余裕が僕にはある。
 そう思うだけで嬉しくて、瞳がじわと滲んで、そんな中でも僕は街を見渡し、街を感じてみたいと思った。

 僕の好きな小説では中世ヨーロッパと表現されていたけど、この街はどことなく違うような気がする。

 白やオレンジピンクに赤。色とりどりの素材で建物は作られ、その建築様式は多種多様。
 確かにヨーロッパのような街並みにも思える。
 立ち並ぶ建造物は日本の繁華街を洋風にしたような雰囲気もある。

 目を細めれば、屋敷、といった建物も目にすることが出来る。
 耳に届く吟遊詩人の奏でるクラシックのような音楽も心地が良い。
 道行く人の笑い声が聞こえ、商売をしているのか声を上げて呼び込みをしている人もいた。

「そういえば、今まで考えてなかったけど言葉は普通に理解できるんだね」

「はいなのです! 不便はないようになっているのです! 服装もこの世界に見合ったものに交換してあるのです!」

 言われてみればパジャマだったはずの服装は、道行く人々と同じように少し風変わりな服装に変わっていた。

 歩く人の中には、話でしか聞いたことのない獣人という種族なのか犬の耳や猫の耳、兎の耳なんかを頭から生やしている人がいる。
 耳が尖って少しエッチな身体つきの人もいる。
 小説の知識が正しければ、エルフという種族だろうと推測した。

「ちなみにピュイのことはどう見えてるの?」

「ピュイのことは普通に見えてるのです! でも、この世界はテイマーっていう、動物を使役する人がいるので大丈夫なのです!」

「へーそうなんだ。この世界では動物が喋るの?」

「喋らないのです! ピュイは特別な存在なので喋れるのです! 珍しいのです! 凄いのです!」

(はぁ~やっぱりそういうことなんだ)

 だから、僕の目にはさっきからジッと視線を向けてきている女の子が映るということなのだろう。
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