【完結】聖夜に友人とセックスする話

咲真 ミオ

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第2話「運命の赤い傘」

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「……相楽?」
 
 彼女はビックリしたように、相楽を見つめた。
 
「あんた、こんな所で何してんの?」
「何って、ちょっと買い出し。お前こそ……」

 そこまで言葉にして相楽には、神崎真琴がどう見てもどこからの帰りで、バス待ちの列に並んでいる事は想像出来た。
 
 この大雪の日に、出掛けるようなバカなリア充の一人である事は明白だ。
 
 心の中でざまーみろと呟いた。

「買い出しって……この雪の中? 家近いの?」
「まあね。神崎はこれから帰るのか?」

 相楽は、神崎が並んでいる長蛇の列を見遣った。

「……大変だな」

 次には、ハアーッと神崎は溜め息を吐いた。

「本当、今日は散々よ! 早朝から臨時でバイトに借り出されるわ、お客さん死ぬ程多いし、やっと解放されたと思ったら、雪で電車は止まってるし!」

 神崎は相楽に一気に捲し立てた。相楽はその迫力に、思わず体をのけ反らせる。
 
(……イヴに朝からバイトで、こんな時間まで……マジかよ)

 再び相楽は長蛇の列を眺める。列は全く動く気配がない。

「お前、この列どのくらい並んでるの?」
「二時間くらい……」
「え⁉︎」

 相楽は、その事実に打ちのめされた。今日、自分より不幸で惨めな人間は、この世にはいない気分でいたが、とんでもなかった。神崎の不遇に比べれば、なんと自分は幸せだった事か。

 先程の感情が簡単に掌を返すように、途端に相楽の心中に、神崎への同情の念が溢れてくる。

「笑いたきゃ、笑えばいい……」
「いや、全然笑えないし……大変だったな……」
 
 生気なく、項垂れている神崎の顔が目に入り、相楽の胸は締め付けられた。

「あのさ……」

 相楽は自分でも想像していなった言葉が、口から出た。
 
「うち来る?」
「え?」

 瞬間空気が凍った。相楽はその温度に我に返った。
 
「あ……いや、電車が動くまで、うちで避難していけば?」
「……」
「……いや、良ければだけど……」

 そこまで相楽が言いかけて、神崎はわなわなと肩を震わせ涙ぐんだ。

「……え? いいの⁉︎ あんた、天使じゃん!」

***

 神崎はバス待ちの列を離れて、相楽と近くのコンビニに向かった。
 コンビニに着いた途端、神崎はコンビニ店員と何やら話し、奥に消えていった。

(……寒空の下、二時間だもんな……)

 相楽は、神崎の行動を色々と察した。相楽は神崎を待つ間、自分も夕食を物色する事にした。 

 普通に弁当を手に取ろうとしたが、酒の棚が目に入ると、途端に酒が飲みたくなってきた。何本かビールを取り、そのまま何か、つまみになりそうな物を探す。

 そういえば、シャンプーが残り少なかった事を思い出す。先程、大掃除した時に気が付いたが、ストックもなかったはずだ。

 シャンプーを探しながら、日用品の置かれている棚付近にやって来て、ある物が目に入った。

(……っ)

 普段なら、目に入っても今みたいに動揺なんてしないのに。
 クリスマスイヴにはコンビニの棚から消えると言われている、コンドームの箱が目に入った。一箱だけ残っている。


 いや……違う。そんなつもりはない。

 急に一人暮らしの自宅に、女性を招く事を意識させられ、相楽は何かに必死に言い訳した。神崎はただの友達だ。

 一線を越えるような事は、起こるはずがないと頭を振り、相楽は黙ってその売り場を去った。

 
つづく
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